若い労働者がバタバタ倒れる北朝鮮の「モデル都市」
北朝鮮の金正恩総書記が、新たな都市開発のモデルとすべく進めてきた革命の聖地・三池淵(サムジヨン)の大改造プロジェクト。完成した地域のマンションへの入居は昨年行われたが、インフラの拡張など、工事は現在も続けられている。
その担い手となっているのが、社会主義愛国青年同盟(青年同盟)が立ち上げた青年突撃隊だ。メンバーを半ば強制的に徴発して工事に投入するのだが、他の現場同様に、待遇が異常に悪く、倒れる人が続出している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、新義州(シニジュ)市青年同盟の参謀が、10人の若者とともに列車で三池淵に向かったと伝えた。その目的は現地からの患者の搬送と、10人の交代要員を送り届けることだ。
現在、三池淵の現場では新義州から来た200人の若者が働いているが、まともな食事が与えられず、高強度の労働を強いられた結果、毎月10人以上が倒れてしまうという。そのほとんどが栄養失調だが、現地の指揮部は何ら対策を取っておらず、交代する人員を新義州から連れてきて、倒れた人を新義州に送り返すだけだ。
補給の軽視は突撃隊だけではなく、北朝鮮で広範に見られる現象だ。ともかく人を送り込んで働かせさえすればよいと、食糧や住居に関する支援を行わないか、行っても非常に貧弱だ。当然の結果として、労働意欲は低下し、逃げ出す人が続出する。また、栄養失調や労災事故も多発している。
平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋も、平城(ピョンソン)市の青年同盟が200人を突撃隊として三池淵の現場に派遣したが、3カ月以内に人員を総入れ替えすると述べた。上述の通り、環境が劣悪で、長期間の労働には耐えられないということだろう。
平城市青年同盟突撃隊では、12人を列車に乗せて平城に送り返し、空いた穴を新しい人員で埋めている。年末を機に、各地域の青年同盟が、このように人員の入れ替えを行っている。
倒れてしまった人も、そうならなかった人も、地元に戻っていかに三池淵の現場が劣悪かを話す。そのため、若者の間では革命の聖地三池淵に対する悪いイメージが広がってしまう結果となっている。
三池淵に比較的近い地域では、悪評がかなり昔から広がっているようで、金正淑(キムジョンスク)郡では2019年4月、三池淵に連れて行かれそうになった25人が、トラックから飛び降りて逃走する事件が起きている。新義州や平城など、三池淵から遠く離れた地域では、現場の状況があまり伝わっていなかったのか、三池淵に行こうとする人がいたようだが、それも昔の話になってしまうかもしれない。
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