極地研など、従来の約100万倍高速にオーロラの広がりなどの予測を実現
マイナビニュース2024年2月19日(月)17時6分
国立極地研究所(極地研)、情報通信研究機構(NICT)、統計数理研究所(統数研)、データサイエンス共同利用基盤施設(ROIS-DS)の4者は2月16日、オーロラの広がりや発生する電流の強さを瞬時に予測する新手法として、従来の物理シミュレーションの結果を模倣する機械学習を用いたエミュレータ「SMRAI2(サムライ2)」を開発し、従来の物理シミュレーションの約100万倍の高速化を達成したこと(30日必要な計算をわずか数秒で出力可能)を共同で発表した。
同成果は、極地研 宙空圏研究グループの片岡龍峰准教授、NICT 電磁波研究所 電磁波伝搬研究センター 宇宙環境研究室の中溝葵主任研究員、統数研 モデリング研究系の中野慎也教授(ROIS-DS データ同化研究支援センター兼任)、ROIS-DS データ同化研究支援センターの藤田茂特任教授(統計数理研究所 モデリング研究系 特任教授兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、宇宙天気や太陽過程と地球環境とのその他の相互作用などに関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Space Weather」に掲載された。
オーロラは、太陽からのプラズマの風である太陽風が地球磁場の影響を受け、地球大気圏に侵入しやすい極域へと誘導された結果、極域上空で窒素や酸素などと衝突することで発生する。そのため、オーロラは両極域で巨大な環のように発生し、その環は「オーロラオーバル」と呼ばれている。
また太陽風と地球磁場が衝突する際、莫大な電流が流れる。その変動(オーロラの変動としても現れる)は、地上の送電網などのインフラにまで悪影響を及ぼすリスクがあり、実際に過去には大規模停電などの原因となったこともある。また同様に、人工衛星を故障させる危険性もあり、発生した電力の一部は大気を加熱して膨張させることで、低軌道の人工衛星の大気抵抗を増大させ、大気圏へと落下させてしまうこともある。このように、オーロラオーバルの広がりや電流の強さを迅速に予測することは、通信やGPSなど、人工衛星に多くを頼る現代において、宇宙天気予報の一環として極めて重要視されている。
オーロラオーバルの広がりや電流の強さの予測手法は、主に2種類あるものの、それぞれ課題があるという。1つは過去の観測データに基づいて、ある太陽風データに対応するオーロラの広がり・強度のパターンを予測する「経験モデル」だ。同モデルは瞬時に結果を出せるが、経験範囲内での平均的なパターンしか出せないことが最大の課題とされている。
もう1つは、太陽風によって乱される磁気圏と電離圏のプラズマの流れや電流を計算する物理シミュレーションだ。経験のない太陽風の変化に対しても結果を出すことができ、オーロラ爆発のようなダイナミックな変化も再現できが、大量の計算機リソースを必要とすることが課題だ。
そこで研究チームは今回、これまでに得ることが困難だった大量の物理シミュレーション結果に、機械学習モデルを組み合わせるという新たな発想で、両者の欠点を解消する第3の手法を開発することを目指したという。
今回の研究では、NICTが宇宙天気予報の一環として運用しているオーロラ電流系の物理シミュレーション「REPPU改良版」によって計算された、数年分の入出力データが機械学習の学習データとされた。時系列機械学習モデル「Echo State Network」を訓練することで、REPPU改良版のオーロラ電流系の計算結果を高度に再現するエミュレータSMRAI2が開発された。
SMRAI2は、任意の太陽風時系列データを入力として与えることで、南北両半球のオーロラオーバルの広がり、その時間変化、オーロラ電流の強さを表すAE指数などを瞬時に出力することが可能とのこと。REPPU改良版と良く似た計算結果を得るのに約100万分の1の時間で済み、これまでおよそ1か月必要だったところをわずか数秒で出力できるとする。
SMRAI2では、たとえば人為的に作成された太陽風を一定時間与え続けることで、太陽風に対応して規則的に変化するオーロラの電流系パターンがほぼ完全に再現される。このことは、従来の経験モデルの上位互換であることを意味するという。また、実際に観測された複雑に変化する太陽風を与えることで、非常に複雑なオーロラジェット電流の時間変化も再現されるとした。
研究チームは今後、SMRAI2のメリットである高速性を活かすことで、わずかに異なるさまざまな太陽風データの入力によって、結果にどれほどのばらつきがでるのかという評価をリアルタイムで行う「アンサンブル予測」や、リアルタイム観測データとエミュレータの結果をデータ同化手法によって補正を行うことで現実により近い予測を選び出すなど、より高度な宇宙天気予報への発展が期待できるとしている。
同成果は、極地研 宙空圏研究グループの片岡龍峰准教授、NICT 電磁波研究所 電磁波伝搬研究センター 宇宙環境研究室の中溝葵主任研究員、統数研 モデリング研究系の中野慎也教授(ROIS-DS データ同化研究支援センター兼任)、ROIS-DS データ同化研究支援センターの藤田茂特任教授(統計数理研究所 モデリング研究系 特任教授兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、宇宙天気や太陽過程と地球環境とのその他の相互作用などに関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Space Weather」に掲載された。
オーロラは、太陽からのプラズマの風である太陽風が地球磁場の影響を受け、地球大気圏に侵入しやすい極域へと誘導された結果、極域上空で窒素や酸素などと衝突することで発生する。そのため、オーロラは両極域で巨大な環のように発生し、その環は「オーロラオーバル」と呼ばれている。
また太陽風と地球磁場が衝突する際、莫大な電流が流れる。その変動(オーロラの変動としても現れる)は、地上の送電網などのインフラにまで悪影響を及ぼすリスクがあり、実際に過去には大規模停電などの原因となったこともある。また同様に、人工衛星を故障させる危険性もあり、発生した電力の一部は大気を加熱して膨張させることで、低軌道の人工衛星の大気抵抗を増大させ、大気圏へと落下させてしまうこともある。このように、オーロラオーバルの広がりや電流の強さを迅速に予測することは、通信やGPSなど、人工衛星に多くを頼る現代において、宇宙天気予報の一環として極めて重要視されている。
オーロラオーバルの広がりや電流の強さの予測手法は、主に2種類あるものの、それぞれ課題があるという。1つは過去の観測データに基づいて、ある太陽風データに対応するオーロラの広がり・強度のパターンを予測する「経験モデル」だ。同モデルは瞬時に結果を出せるが、経験範囲内での平均的なパターンしか出せないことが最大の課題とされている。
もう1つは、太陽風によって乱される磁気圏と電離圏のプラズマの流れや電流を計算する物理シミュレーションだ。経験のない太陽風の変化に対しても結果を出すことができ、オーロラ爆発のようなダイナミックな変化も再現できが、大量の計算機リソースを必要とすることが課題だ。
そこで研究チームは今回、これまでに得ることが困難だった大量の物理シミュレーション結果に、機械学習モデルを組み合わせるという新たな発想で、両者の欠点を解消する第3の手法を開発することを目指したという。
今回の研究では、NICTが宇宙天気予報の一環として運用しているオーロラ電流系の物理シミュレーション「REPPU改良版」によって計算された、数年分の入出力データが機械学習の学習データとされた。時系列機械学習モデル「Echo State Network」を訓練することで、REPPU改良版のオーロラ電流系の計算結果を高度に再現するエミュレータSMRAI2が開発された。
SMRAI2は、任意の太陽風時系列データを入力として与えることで、南北両半球のオーロラオーバルの広がり、その時間変化、オーロラ電流の強さを表すAE指数などを瞬時に出力することが可能とのこと。REPPU改良版と良く似た計算結果を得るのに約100万分の1の時間で済み、これまでおよそ1か月必要だったところをわずか数秒で出力できるとする。
SMRAI2では、たとえば人為的に作成された太陽風を一定時間与え続けることで、太陽風に対応して規則的に変化するオーロラの電流系パターンがほぼ完全に再現される。このことは、従来の経験モデルの上位互換であることを意味するという。また、実際に観測された複雑に変化する太陽風を与えることで、非常に複雑なオーロラジェット電流の時間変化も再現されるとした。
研究チームは今後、SMRAI2のメリットである高速性を活かすことで、わずかに異なるさまざまな太陽風データの入力によって、結果にどれほどのばらつきがでるのかという評価をリアルタイムで行う「アンサンブル予測」や、リアルタイム観測データとエミュレータの結果をデータ同化手法によって補正を行うことで現実により近い予測を選び出すなど、より高度な宇宙天気予報への発展が期待できるとしている。
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