カレー沢薫の時流漂流 第290回 お客様は神様です。頭ポンポンしてあげます。世はまさにハラスメント時代である
マイナビニュース2024年3月11日(月)16時12分
現在、某県某町の町長が「99のセクハラ行為」があったと認定されて話題になっている。
まずセクハラ行為にここまでバリエーションがあったことに驚きだ。
逆に映画のタイトルのようなエモさが出てきてしまっているので、この際「近くに存在された」など、言いがかりで良いからキリよく100にした方が良かったのではないか。
この99のセクハラの中には、もはや喜んでいる女を探すのが困難と言われている「頭ポンポン」系の行為が多数エントリーしており、「令和6年にもなってその名を聞くとは」とネットも騒然、Xのトレンドにも一両日「頭ポンポン」が挙がってしまっていた。
これに対し当人は「よくやったという労いの意味でやった」と釈明しているが、だとしたら中年男性職員などにも等しく頭をポンポンしていなければおかしく、若い女性の頭だけをポンポンしている時点で明らかにセクハラ、むしろ女性の体に触りたいという性欲を激励だと言い訳するのがさらに嫌らしいと、さらなる非難が相次いでいる。
だがそれにも関わらず、Xでは「頭ポンポン程度でセクハラと言われたら何もできないなどと抜かして擁護する爺がいる」という怒りのポストが散見された。
しかし、私はこれら頭ポンポン擁護に怒っている人は何人も見かけたが、実際に頭ポンポンを擁護している人は見かけていないのである。
「誰も被災地に千羽鶴を送ろうとしていないのに千羽鶴に激怒している人は何人も見かける」など、未確認物体に怒っている人が何人もいるため、あたかもそれが大量に存在しているかのように見える怪現象がXには起こりがちであり、今頭ポンポンを擁護している人間がいるかがわからないが、その被害にあった人がいるというのは事実だ。
○ハラスメント警察だ! という案件もあるにはあるが……
しかし「それをハラスメントと言われたら本当に何もできない」というハラスメントが存在するのも確かである。。
「近くに存在された」というのも冗談ではなく「イグジスティングハラスメント」として実在するし、「呼吸されたくないのに呼吸されるハラスメント」などもある。
もはや生きていることがハラスメント扱いなのだが、だからと言って自決しても「目の前で自害されるハラスメント」になるだけだろう。
最近「それをハラスメントと言われたらどうしようもない」として話題になったのが、LINEなどのメッセージを「。」で終わるのが威圧になるという「マルハラ」だ。
しかし「上司からの度重なる句点により心身の健康を害したのは明らかであり損害賠償を求める」など、出る所に出てマルハラがハラスメントとして認められるかは不明である。
○三波春夫からウン十年、ようやく希望が見えた「カスハラ」問題
世の中にはセクハラやパワハラなどもっと重大なハラスメントがあるし、近年深刻化し、ついに東京都が条例まで設けて禁止されつつあるものがある。
それが「カスハラ」である。
最初聞いた時は「カスのくせに平気で生きているハラスメント」かと思い、こっちだって好きでカスなわけではないと憤ったが、正しくは「カスタマーハラスメント」のことである。
「お客様」という立場を利用して、口答えができないカスタマーセンターの職員に対し、長時間にわたる言いがかりや暴言、セクハラなどを行う行為のことを指す。
以前から「迷惑電話1万2206回」など、もはや呼ぶべきなのは警察ではなく医者案件が業務妨害として事件化することもあったが、条例になりそうなのは今回の東京のものが初だそうだ。
ついに自殺者が出るなど、カスハラの被害が年々深刻化していることがうかがえる。
何故日本でカスハラが横行してしまうかというと、日本には「おもてなし」の精神があり、「客はとにかく偉い」という思い込みが蔓延しているため、と言われている。
つまり「お客様は神様」ということだが、実はこれもかなり曲解されており、発言の主となる三波春夫は、コンサートに来てくれた観客を「神様」と称しただけであり、飲食店の客やクライアントまで神様と言ったわけではなく、まして「金を払っていれば何をしてもいい」という意味で言ったわけではないという。
確かに三波春夫も「今客席にいる人間が全員ステージに上がってきて俺をボコってくれても構わない」という意味で言ったとは思えない。
チケットを購入し、わざわざ会場まで足労して行儀よくコンサートを楽しんでくれている客を見て、「これは神と言わざるをえない」と思っただけだろう。
故人も自分の発言がクレーマーの常套句にされ、ハラスメントにまで発展してしまったというのは遺憾なはずであろう。
○やはり任天堂には八百万の神がおらっしゃる
ちなみに、条例化が提案される前に、独自にカスハラには毅然と対処すると発表していたのが、我らが任天堂である。
任天堂と言えば、お客様センターの対応が「神」であることでも有名だが、客だけでなく「従業員」も、「わが社で働いてくれている神」と思っているようで、そんな従業員に理不尽な攻撃を加える客は、神様どころか「神に仇なす敵」として対処すると宣言している。
そもそも客に対して丁寧に対応できるのも、カスタマーセンターの人間の心に余裕があるからだ。
毎日罵詈雑言を浴びせられている人間が他人に優しくできるとは思えない。任天堂がカスハラを野放ししていたら、カスタマーセンターの人間の対応も「充電ゼロになってない?」「充電器のコンセント入ってる?」など、ぞんざいになり、さらに雑に扱われるのはクレーマーではなく普通の客という悪循環が発生してしまう。
ちなみに、私の友人もカスタマーセンターの仕事をしているが、「五条先生が出ないんですけど」的なクレームを受けることがあるという。
もちろん理不尽なクレームなのだが、客もランダム商法という理不尽によりこうなってしまったとも言える。
今、税務署にクレームが殺到しているのもその原因となった議員の行いがあり、クレームを受けているのは罪のない職員やバイトである。
クレーマーを取り締まるのも大事だが、まずクレームが発生しないように、会社や上の者がしっかりしなければいけない。
まずセクハラ行為にここまでバリエーションがあったことに驚きだ。
逆に映画のタイトルのようなエモさが出てきてしまっているので、この際「近くに存在された」など、言いがかりで良いからキリよく100にした方が良かったのではないか。
この99のセクハラの中には、もはや喜んでいる女を探すのが困難と言われている「頭ポンポン」系の行為が多数エントリーしており、「令和6年にもなってその名を聞くとは」とネットも騒然、Xのトレンドにも一両日「頭ポンポン」が挙がってしまっていた。
これに対し当人は「よくやったという労いの意味でやった」と釈明しているが、だとしたら中年男性職員などにも等しく頭をポンポンしていなければおかしく、若い女性の頭だけをポンポンしている時点で明らかにセクハラ、むしろ女性の体に触りたいという性欲を激励だと言い訳するのがさらに嫌らしいと、さらなる非難が相次いでいる。
だがそれにも関わらず、Xでは「頭ポンポン程度でセクハラと言われたら何もできないなどと抜かして擁護する爺がいる」という怒りのポストが散見された。
しかし、私はこれら頭ポンポン擁護に怒っている人は何人も見かけたが、実際に頭ポンポンを擁護している人は見かけていないのである。
「誰も被災地に千羽鶴を送ろうとしていないのに千羽鶴に激怒している人は何人も見かける」など、未確認物体に怒っている人が何人もいるため、あたかもそれが大量に存在しているかのように見える怪現象がXには起こりがちであり、今頭ポンポンを擁護している人間がいるかがわからないが、その被害にあった人がいるというのは事実だ。
○ハラスメント警察だ! という案件もあるにはあるが……
しかし「それをハラスメントと言われたら本当に何もできない」というハラスメントが存在するのも確かである。。
「近くに存在された」というのも冗談ではなく「イグジスティングハラスメント」として実在するし、「呼吸されたくないのに呼吸されるハラスメント」などもある。
もはや生きていることがハラスメント扱いなのだが、だからと言って自決しても「目の前で自害されるハラスメント」になるだけだろう。
最近「それをハラスメントと言われたらどうしようもない」として話題になったのが、LINEなどのメッセージを「。」で終わるのが威圧になるという「マルハラ」だ。
しかし「上司からの度重なる句点により心身の健康を害したのは明らかであり損害賠償を求める」など、出る所に出てマルハラがハラスメントとして認められるかは不明である。
○三波春夫からウン十年、ようやく希望が見えた「カスハラ」問題
世の中にはセクハラやパワハラなどもっと重大なハラスメントがあるし、近年深刻化し、ついに東京都が条例まで設けて禁止されつつあるものがある。
それが「カスハラ」である。
最初聞いた時は「カスのくせに平気で生きているハラスメント」かと思い、こっちだって好きでカスなわけではないと憤ったが、正しくは「カスタマーハラスメント」のことである。
「お客様」という立場を利用して、口答えができないカスタマーセンターの職員に対し、長時間にわたる言いがかりや暴言、セクハラなどを行う行為のことを指す。
以前から「迷惑電話1万2206回」など、もはや呼ぶべきなのは警察ではなく医者案件が業務妨害として事件化することもあったが、条例になりそうなのは今回の東京のものが初だそうだ。
ついに自殺者が出るなど、カスハラの被害が年々深刻化していることがうかがえる。
何故日本でカスハラが横行してしまうかというと、日本には「おもてなし」の精神があり、「客はとにかく偉い」という思い込みが蔓延しているため、と言われている。
つまり「お客様は神様」ということだが、実はこれもかなり曲解されており、発言の主となる三波春夫は、コンサートに来てくれた観客を「神様」と称しただけであり、飲食店の客やクライアントまで神様と言ったわけではなく、まして「金を払っていれば何をしてもいい」という意味で言ったわけではないという。
確かに三波春夫も「今客席にいる人間が全員ステージに上がってきて俺をボコってくれても構わない」という意味で言ったとは思えない。
チケットを購入し、わざわざ会場まで足労して行儀よくコンサートを楽しんでくれている客を見て、「これは神と言わざるをえない」と思っただけだろう。
故人も自分の発言がクレーマーの常套句にされ、ハラスメントにまで発展してしまったというのは遺憾なはずであろう。
○やはり任天堂には八百万の神がおらっしゃる
ちなみに、条例化が提案される前に、独自にカスハラには毅然と対処すると発表していたのが、我らが任天堂である。
任天堂と言えば、お客様センターの対応が「神」であることでも有名だが、客だけでなく「従業員」も、「わが社で働いてくれている神」と思っているようで、そんな従業員に理不尽な攻撃を加える客は、神様どころか「神に仇なす敵」として対処すると宣言している。
そもそも客に対して丁寧に対応できるのも、カスタマーセンターの人間の心に余裕があるからだ。
毎日罵詈雑言を浴びせられている人間が他人に優しくできるとは思えない。任天堂がカスハラを野放ししていたら、カスタマーセンターの人間の対応も「充電ゼロになってない?」「充電器のコンセント入ってる?」など、ぞんざいになり、さらに雑に扱われるのはクレーマーではなく普通の客という悪循環が発生してしまう。
ちなみに、私の友人もカスタマーセンターの仕事をしているが、「五条先生が出ないんですけど」的なクレームを受けることがあるという。
もちろん理不尽なクレームなのだが、客もランダム商法という理不尽によりこうなってしまったとも言える。
今、税務署にクレームが殺到しているのもその原因となった議員の行いがあり、クレームを受けているのは罪のない職員やバイトである。
クレーマーを取り締まるのも大事だが、まずクレームが発生しないように、会社や上の者がしっかりしなければいけない。
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