英国人ジャーナリストによる2021年F1ルーキー紹介(1)角田裕毅:自分に厳しく、ミスから学び成長していくドライバー
2021年F1には3人のルーキードライバーがデビューする。角田裕毅、ミック・シューマッハー、ニキータ・マゼピンはどのようなドライバーでありどのような若者なのか、F1に加えてF2選手権の取材実績があり、彼らの走りをつぶさに見てきた英国人ジャーナリスト、クリス・メッドランド氏が紹介する。第1回は7年ぶりの日本人F1ドライバーとなる角田裕毅だ。
2000年5月11日生まれ、現在20歳の角田は、日本でカートレース活動を行った後、2016年に4輪レースにデビュー、スーパーFJ、FIA-F4選手権に参戦し、FIA-F4シリーズチャンピオンを獲得。2019年にはFIA-F3選手権とユーロフォーミュラオープンに参戦、2020年にFIA-F2選手権に昇格した。レッドブルとホンダのジュニアドライバーとして戦った角田は、F2で3勝を挙げてランキング3位を獲得、2021年に向けてスクーデリア・アルファタウリ・ホンダと契約、小林可夢偉以来の日本人F1ドライバーとなることが決定した。
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ヨーロッパを拠点とする私が角田の才能に気付いたのは、彼がF3に登場した2年前のことだった。そのため、翌年の2020年、F2に昇格した彼に注目していた。新しいシリーズで輝いてみせるのか失速するのか、予想できないまま見てきたが、彼はすぐさま力を見せつけ、強い印象を残した。
カーリンで走れたのは角田にとってとてもいいことだったと思う。チームボスのトレバー・カーリンは、ドライバーが持ち込む資金を優先するタイプではない。ドライバーといい関係を築き、彼らを活躍させたいと考えており、自分と同じ情熱を示すドライバーなら誰とでも気持ちを通じ合わせることができる人物だ。
そういうボスがいるカーリンは角田にとって完璧な場所であり、必要な環境だった。角田は自分自身に非常に厳しい人間だ。F2のルーキーシーズンを通して彼はたくさんのミスを犯したが、自分の間違いに真剣に向き合った。彼はミスを素直に認め、受け入れ、そこから学ぶ。そのため同じミスを繰り返すことがめったにないのだ。それはとても大事なことだ。
とはいえ、F1という新しい環境に足を踏み入れた当初は、似たようなミスが出るかもしれない。角田はミスをすることを恐れていないからだ。ミスを犯すまいとしているが、犯してしまったときにはその部分で改善し、素早い成長を遂げる。F1カーで初めて走った後、彼は身体的なトレーニングの面で改善の余地があると認めた。シーズンへの準備を整えるなかでも、その後のレースウイークエンドのなかでも、彼はドライビングに関してさまざまな課題を見つけていくことになるだろう。
カーリンは、2020年にイギリスがロックダウンから解放されつつある時期に、シルバーストンでテストを行い、現在F1で走るカルロス・サインツJr、ランド・ノリス、アレクサンダー・アルボン、ニコラス・ラティフィら多数のドライバーを、旧型F3カーで走行させた。
角田も先輩ドライバーたちと走る機会を得て、慣れるまでに多少は時間はかかったが、すぐに積極的に彼らとバトルをした。トレバー・カーリンによると、ドライバーたちは高速のターン1に3ワイド、あるいは4ワイドで入っていったことが何度もあったが、クラッシュは一切起きなかったという。走行を終えたドライバーたちの笑顔から、彼らがどれだけ楽しんだかが分かったとして、カーリンは、コロナ禍において走行の場を設けてよかったと語った。なかでも角田にこのチャンスを与えることができたことを喜んでいた。
今年F1にデビューする角田は、F1について学習を重ねていきながら、コース上で他のドライバーたちとホイール・トゥ・ホイールの戦いにも挑んでいかなければならない。F2シーズンの彼を見てきて、彼が怯まずにバトルに挑み、なおかつ常にクリーンな戦いを心掛けているドライバーであることが分かった。2021年シーズンのF1ルーキー3人のなかで、今年バトルの機会が最も多くなるのは角田だろう。ハースのミック・シューマッハーとニキータ・マゼピンよりも、競争力の高いアルファタウリのマシンに乗るからだ。
角田に速さがあることは間違いないし、1周の速さに関してはルーキー3人のなかではトップだが、彼は今年、他のふたりよりもタフな環境で戦うことになる。強い精神力を持つ角田だが、今年はそれが厳しく試される。ピエール・ガスリーと組むことで、最強のチームメイトと比べられることになり、楽なシーズンにはならないだろう。
F2シーズンで角田がノーポイントで終えたレースウイークエンドが3回(6レース)あった。F1デビューシーズンにおいても一貫性を保てない時期は当然ながら出てくる。だがそういう時期を経てどれだけ成長できるかが、角田がF1でどれだけ大きく飛躍できるかを決めることになるだろう。
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