ホンダ、F1最終シーズンに向け、PU開発を前倒し「すべてのノウハウ活用を目指した。テストの数値に好感触」と田辺TD
ホンダF1テクニカルディレクターを務める田辺豊治氏が、2021年のパワーユニット(PU/エンジン)について説明し、いったんは2022年に延期した開発を前倒しにして今季投入することを決めたと語った。パワーユニット自体についてもパッケージングについても改善を図ったという。
2020年、新型コロナウイルス感染症大流行の影響で、F1規則は変更され、昨シーズン中にはパワーユニットをアップデートすることが許されなかった。また、次世代マシンの導入は2022年に延期された。
ホンダは、当初アップデートを2022年に延期したが、その後、2021年末でF1活動を終了するという決定が下されたことで、パワーユニット開発プランを再度変更することを決めたと、田辺テクニカルディレクターは明かした。
「COVID-19のパンデミックの前に立てていた計画では、今年新しいPUを導入するつもりでした。しかし、F1で長いシャットダウンが行われ、ヨーロッパではロックダウンがなされ、パーツ供給が遅れたこともあり、さまざまな困難と制限が生じました。そのため、2022年へと延期することを決めました」と田辺テクニカルディレクターは、スクーデリア・アルファタウリの2021年型マシン『AT02』の発表会に際してコメントした。
「ですが、2020年10月に、ホンダが2021年末でこのスポーツから去るという決定が発表されたことを考慮し、我々は状況を再評価し、このPUを2021年に導入することに、計画を再度変更しました。変更を行うタイミングは非常にタイトでしたが、開発および準備のプログラムを前倒しすることができました。ホンダとしては、このスポーツから去る前に、技術的なノウハウをすべて活用したいと考えたのです」
2021年に向けて、ダイナモテストで満足できる結果を得ていると、田辺テクニカルディレクターは語った。
「ダイナモ上で出た数値は期待していたものと一致しています。実際のレースでどれぐらいの競争力を発揮できるのかを見てみましょう」
パワーと信頼性両方を向上させるための変更を行うとともに、パッケージングについても改善を行ったという。
「どの部分に一番力を注いだのかを具体的に言及するのは難しいですが、パワーと信頼性を向上させるため、ICE、タービン、ERSに変更を加えました。スクーデリア・アルファタウリとは今年が3年目です。全体的な改善を図るため、PU全体のインスタレーションとパッケージングの改善も行いました」
ホンダは2020年にはパワーユニット関係のペナルティを受けることなくシーズンを乗り切った。今年、パワーを追及した改善を行ったものの、それにより信頼性の面でリスクが生じるとは考えていないと、田辺テクニカルディレクターは示唆した。
「2015年にホンダがF1に復帰した後、しばらく非常に厳しい時期を過ごしました。ですが同時に多くのことを学びました。昨年の優れた信頼性は、これまで学んだことによって実現できたのです」
「今年のPUにおいて多数の変更を行いました。しかし信頼性に関する経験も、それに適用されています。パフォーマンスと信頼性のバランスをとることは、非常に微妙な作業ですが、そのバランスを今年も維持できることを願っています」
「コース上でマシンを走らせれば、さらに多くのことを知ることができ、その後にPUの動かし方についてオペレーション上の変更を加えることができるものと期待しています」
田辺テクニカルディレクターは、F1最後の年に、パートナーであるアルファタウリとともに、2020年以上の結果を出したいと考えている。
「去年はここ数年のなかで、中団争いが最も激しい年でした。ほんのわずかなパフォーマンス差によって、結果に大きな違いが生じることになったのです。そのなかでピエール・ガスリーがモンツァで勝つことができたのは素晴らしいことでした。全体的にスクーデリア・アルファタウリととてもいい1年を過ごすことができました」
「ライバルたちも開発を進めており、今年も熾烈な競争に直面することになるでしょう。ですがホンダとスクーデリア・アルファタウリは、この3年、ともに進歩してきました。いまや我々は、強力であり団結したひとつのチームです。スクーデリア・アルファタウリのサポートと協力が、ホンダがこのハイブリッド時代に競争力を発揮できるようになるうえで重要な役割を果たしました。そのことに心から感謝しています。最後の年に、より一層よい結果を出すことができれば素晴らしいですね」
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