中嶋一貴がテスト&リザーブドライバーに。トヨタ、ル・マン6連覇に向けGR010ハイブリッドを改良
TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は2月24日、来月17日にアメリカ・セブリングで開幕するWEC世界耐久選手権に向けて改良された、2023年型『トヨタGR010ハイブリッド』を発表した。
小林可夢偉がドライバー兼チーム代表としてトップに立つTGR WECチームは、2018年以降、過去5年間のル・マン24時間レースすべてで勝利を収め、同じく直近4シーズンすべてでWECのシリーズチャンピオンを獲得している。2021年に現行ハイパーカー規定の導入に合わせてシリーズに投入されたトヨタGR010ハイブリッドはこのうち2回、トヨタの栄冠に寄与した。
そんなトヨタのハイパーカーが、今年新たにフェラーリ、ポルシェ、キャデラック、ヴァンウォールが参戦する“新時代”のWECハイパーカークラスへの挑戦を前に改良を受け、2023年仕様となった。今年で3年目となる同マシンの心臓部は、トヨタがル・マン/WECで培ってきたハイブリッド技術が注がれた3.5リットルV6ツインターボエンジン+高性能レーシングハイブリッドシステムによって構成されている。2023年仕様もこの形式に変わりはないものの、TGRの知見により軽量化と信頼性のさらなる強化が図れた。
一方、見た目上の変化はより分かりやすく、フロントの左右両端部にカナードが追加されている点や、リヤウイングのエンドプレートなど小型化しているなど、細かな変更を確認することができる。また、ブレーキの冷却とレース中の迅速な冷却設定の変更を目的として、車両前後にベンチレーションが新設された。さらに、夜間走行時の視認性向上のため、ヘッドライトのレイアウトも変更されている。
この他、TGRはレギュレーションで定められている1040kgの最低重量を達成するべく、クルマを軽量化する作業を進めてきた。そのなかには昨年に引き続き採用される100%再生可能燃料への対応や、タイヤウォーマーが使用禁止となる今季に向けて開発された新しいミシュランタイヤへの対応も含まれている。
「我々は絶え間ない改善を目指す長期計画の一環として、ドライバビリティ、信頼性と整備性の更なる向上など、GR010ハイブリッドの改良を進めた」と語るのは、TGRのテクニカルディレクターを務めるパスカル・バセロン。
「2022年にはホイールサイズ変更という非常に大きな変更を行ったが、それは我々が抱えていたいくつかの問題に対処するためであり、期待どおりの効果が得られた。今回の2023年シーズンへ向けた改良点はこれらの改良における次のステップであり、プレシーズンテストでは心強い結果が得られている」
「今年、新たなハイパーカークラスのライバルと戦うことは、とくにファンの皆さまにとってはエキサイティングだと思うが、我々のアプローチは変わらない。やるべきことはいつも同じで、我々の目的は勝利であり、そのためにミスなく車両パッケージ性能を最大限引き出すこと、それこそが我々のレースへの取り組み方だ」
■テストで走らせたドライバーたちの印象はとても好感触
既報のとおり、TGRは2023年も6名のドライバーラインアップを変更せずに新しいシーズンを迎える。ディフェンディングチャンピオンである8号車のセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮、7号車のマイク・コンウェイ、可夢偉、ホセ-マリア・ロペスはいずれもル・マンウイナーでありWECチャンピオン経験者だ。
一方、昨シーズンまでテスト兼リザーブドライバーを務めていたニック・デ・フリースが、アルファタウリF1で活躍する角田裕毅のチームメイトとしてF1にフル参戦することになったことから、このポストに中嶋一貴が就くことになった。
3度のル・マンウイナーにして同数回のWECチャンピオンである一貴は、2021年の勇退後TGRヨーロッパの副会長を務めているが、今季は副会長職とテスト兼リザーブドライバーを兼任することになる。
そんなTGR WECチームを率いる可夢偉チーム代表は、新たなライバルの登場に気持ちが高まっていることを認め、2023年を記憶に残るシーズンにしたいと抱負を述べた。
「待ちに待ったシーズンを迎えます。これだけ多くのマニュファクチャラーがハイパーカークラスに参戦するというのはファンの皆さまにとっても素晴らしいことですし、チームとしても新たなライバルの登場に気持ちが高まっています」
「とくにル・マン100周年という記念すべき年でもありますし、強力なライバルと優勝を争い、ファンの皆さまに楽しんでいただける、記憶に残るシーズンにしたいと思っています」
「我々は立ち止まることなく、つねに『もっといいクルマづくり』を推し進めていきます。そのために、昨年に続きGR010ハイブリッドには幾つかの改良を施して2023年に挑みます。これらのアップデートは東富士とドイツ・ケルンのチームメンバー、パートナーやサプライヤーの皆さまとの強い協力関係により生み出されたもので、関係者全員の尽力に感謝したいと思います」
「この改良型車両をロールアウトとプレシーズンテストで走らせたドライバーたちの印象はとても好感触で、ル・マン制覇とWECタイトル防衛に向けた自信を与えてくれるものでした」
ル・マン6連覇とシリーズ5連覇を目指すTGR WECチームの戦いは、3月17日にアメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで行われる開幕戦セブリング1000マイルを皮切りに、ポルティマオ6時間、スパ・フランコルシャン6時間、ル・マン24時間へと続いていく。後半戦は7月のモンツァ6時間に始まり、母国ラウンドの富士6時間、そして最終戦バーレーン8時間でフィナーレ迎える予定だ。
なお、開幕戦の1週間前となる3月11〜12日は、セブリングで恒例の公式テスト“プロローグ”が行われる。
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