【津川哲夫F1新車私的解説】ポテンシャルも本家ゆずりのハース『VF-22』。独自性も加わり上昇傾向
ハースは2月4日に新車『VF-22』のカラーリングを公開していたが、実車の登場は2月23日のバルセロナテストとなった。大方の予想どおり、『VF-22』のコンセプトはフェラーリの新車『F1-75』に類似している。
ほぼすべてのメカニカルパーツをフェラーリと共有し、モノコックやボディワーク等エアロを独自開発する、という建前ゆえの“OEM製品(編集注:発注元のブランド名で委託製造された製品)”なのだからコンセプトが同じでなければ意味がない。
これまでのハースの車両とは異なり、『VF-22』の開発はフェラーリの本拠地マラネロの社内に設置された『ハース・デザイン・オフィス』が手がけた。それゆえにフェラーリ寄りのマシンとなるのは当然のことだ。
したがって、基本的なスタイリングは『F1-75』を追従。ただし、フロントウイング、サイドポッド、エントリーダクトの形状、そしてサイドポッドの上面や、シャークフィンエンドの排熱処理などにハース独自のデザインが施されている。
しかし、エアロコンセプトはやはりフェラーリ型で、本家の『F1-75』や、アストンマーティン『AMR22』同様、サイドポッド上面をデッキ化する方式を取っている。アルファロメオも含め、フェラーリ・パワーユニットユーザーがこの手法で統一されているのは、新型パワーユニットの補機類を含めた取り回しによるものかもしれない。
ただ、エアロコンセプトを同じくしてもハースのデザインはフェラーリと異なり、全体の曲面がシンプルなのが好ましい。昨年までと同じく、ボディワークを徹底的に絞り込むような過激さがなく、まだ絞り込みに余裕がある。メカニカル面の信頼性が確立できれば、昨年以上の走りは十分以上に可能だろう。
マラネロへのデザインオフィス設置など、ハースとフェラーリはこれまで以上に関係強化を図っている。昨年放棄されたシーズン中のマシン開発も、2022年シーズンは準ワークスベースで行われていくのではないだろうか。そうなればこの『VF-22』が化けないとも限らない。
現実に、バルセロナテストでは『F1-75』が速さを見せているではないか(フェラーリはいつもテストでは速いのだが……)。そのポテンシャルのかなりの割合を『VF-22』も共有しているはずなのだから、ハースの新車『VF-22』は間違いなく昨年よりも上向きのマシンであるはずだ。
《プロフィール》
津川哲夫(つがわてつお)
1949年生まれ。F1メカニックを志して1977年に単身渡英。トールマン、ハース、ベネトンなどのチームでメカニックを勤め、1990年シーズンでメカニックを引退。その後、F1中継でピットレポートやセッション解説、そして雑誌やwebメディアでメカニック経験を活かしたメカニカルな視点でF1の魅力を伝え続けている。
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