プロト未経験者を抱えるフェラーリ499P陣営「文句を言っていたのに、いまや完全に逆の立場」とカラド
フェラーリがWEC世界耐久選手権のハイパーカークラスにデビューを飾るときが近づいてきている。ル・マン・ハイパーカー(LMH)規定に基づく新型車両『フェラーリ499P』の開発テストを続けている彼らは、2台/6名のドライバーラインアップをすでに発表しているが、うち4名はGTクラスから最高峰のプロトタイプへと一気にステップアップを果たすこともあり、その“経験不足”を心配する声も聞かれる。
だが、ファクトリードライバーのジェームス・カラドは、最高峰クラスでの総合優勝を目指すにあたっては、GTEプロクラスでの豊富なレース経験が有益であると考えているようだ。
カラドは、3月17日決勝の開幕戦セブリング1000マイルレースで、長年のコ・ドライバーであるアレッサンドロ・ピエール・グイディ、そして元F1レーサーのアントニオ・ジョビナッツィとともに51号車フェラーリ499Pをドライブし、最高峰クラスへのデビューを飾る予定だ。
カラドとピエール・グイディ、そして50号車のアントニオ・フォコとミゲル・モリーナは、AFコルセのファクトリーGTEプロのプログラムから、直接ハイパーカークラスへと移行する。
彼らと同様、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのポルシェ963でも、カラドの長年のライバルであるケビン・エストーレやミカエル・クリステンセンらGTレース出身のドライバーたちがエントリーする。
カラドは2014年にシングルシーターからフェラーリのGTEプロチームの一員となり、この10年の大半をほぼフェラーリのGTマシンで戦ってきた。重量のあるGTマシンから、軽量でダウンフォースの大きいLMHマシンへの移行にもかかわらず、この乗り換えは比較的容易であるとカラドは主張している。
「クルマをドライビングするという観点では、僕らはたくさんの周回を重ねてきたと思う」とカラド。
「僕たちは皆、このクルマでたくさんの周回をこなしてきた。WECのレーストリムで、おそらくシーズン全体とほぼ同じ距離を走ったと思う。だから、クルマの運転という点では全員がまったく問題ないんだ」
カラドはしかし、トラフィックのマネジメントという重要なポイントについて指摘する。33歳の彼は、ハイパーカーへとステップアップしたことで、WECのレースにおいてポイントとなる複数クラスが入り混じって走行する際に、自分の役割が変わることに自覚的なのだ。
「GTと一緒にコースを走ることは(これまでのテストでは)ほとんどなかった」とカラド。
「GTEではいつもプロトタイプに対して文句を言っていたのに、いまや完全に逆の立場になってしまった」
「そこに慣れるまでは大変かもしれないけれど、クルマを走らせるという部分は自然にできているし、いい感じだよ」
そういった観点からすると、GTEでの経験や、速いプロトタイプに対する遅いクラスの車両のコース上での挙動を理解していることが、これからのレースでプラスになるとカラドは考えているようだ。
「もちろん、僕はこれまで多くのWECのレースを戦ってきた」とカラド。「だから彼ら(GTカー)の走り方や何が起こるかについては、経験から理解できている」。
「当時はLMP1で、今はLMHだが、彼らがどのように僕らとコース上で交わるかは知っているので、そのアプローチをとって同じようにやってみるつもりだ」
「もちろん、簡単なことではないし、スピード差も大きい。でも(慣れるのに)そう長い時間はかからないと思う」
「特に最初のレースとなるセブリングでは、できる限り速いスピードで学んでいければと思っているよ」
■信頼性重視のセブリングテストは「期待どおり」
フェラーリは1月末と2月上旬に、アメリカ・フロリダ州のセブリングで2回のテストを実施した。
WEC開幕戦の舞台ともなるセブリング・インターナショナル・レースウェイでのこの2回目のテストでは、アジアン・ル・マン・シリーズに出場するニクラス・ニールセンとモリーナを欠いたが、カラド、ピエール・グイディ、ジョビナッツィ、フォコが交代でステアリングを握った。
路面がバンピーなセブリングはマシンに対して負荷が高いことで有名だ。カラドはこのテスト目的が、499Pのさらなる信頼性確保に置かれていたと説明する。
「セブリングテストは、マシンのパーツを改良して、より信頼性を高めるためのものだった。それが優先事項だった。このクルマは、信頼性がまだ高くないということは分かっている」
「だからできるだけ多くの周回を重ね、自分たちがどの位置にいるのか、マシンはどこで間違った方向へいくのか、あるいはいかないのかを確認することが最優先だった」
「それがメインだったし、加えてこのテストは僕らすべてのドライバーにとっても、周回を重ねるチャンスだった。それらは明らかに、第1戦のレースに向け助けとなる」
「いいテストだった。セットアップの面では多くのことを発見したし、すべての小さなこともね。このテストは重要で、今後につながる良いデータを得ることができた」
「セブリングに限らず、このマシンで周回を重ねることは、ドライバーだけでなく、チームやエンジニアにとっても非常に重要なことだと思う」
「セブリングに関しては、期待どおりのテストができた。僕らが何をすべきか、どうすればレースの準備を整えられるか、パフォーマンスについてもどの位置にいるかという点で、すべてエンジニアが指定した走行プログラムをこなしたんだ」
フェラーリ陣営はこの2月上旬のテストの後、いったんヨーロッパに戻り開発テストを継続。3月には再びアメリカへと渡り、11〜12日に予定されているシリーズの公式テスト“プロローグ”に登場する予定だ。
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