【津川哲夫のF1新車私的解説】メルセデス新車に漂う不穏な気配。全貌見えぬもレーキ角採用でコンセプト変更か
今シーズンもチャンピオン争いの本命となるメルセデスの新車W12が登場した。これまで発表してきたチームの中では、もっとも実戦車に近い形で登場しているようだが……もちろん、開幕戦までにはさらなる変化は当然だ。発表時のW12の大きな変化はフロアだ。新フロア規則に対処したものだが、フロアエッジ処理が面白い。
今年の新フロア規制ではエッジのスリット等が禁止され、後方へテーパーにすぼまったフロア後部エッジでは渦流処理が難しく、フロア下面でのベンチュリー効率を失う。
そこでW12のフロアエッジにはかなりの厚みを全域に持たせている。おそらく、規則の50mm厚一杯だろう。しかしこのエッジ部、現実には単なる発表用のカバーである可能性も隠せない。事実トークンの使用箇所を明言せず、まだ全貌は見せないとチームが言っているのだから。
それを無視して考えれば、サイドポッドのアンダーカット下部、つまり車体中心に向かって臼(うす)の曲面状に落ち込んでゆくこの曲面が興味深い。
また、アンダーカット下部のコークパネルに向かう曲面はスムースなコークボトルラインを形成。そしてフロアフロント部、バージボード、ボーダウイング、スリット、フィン、すべてを使って後方へ向かうフロア上面流をフロアエッジから逃すまいという努力が見えるが、この処理も基本的には昨年と大きくは変わらない。
リヤタイヤ前方のスリットやガジェットの規制から、リヤタイヤに当たる空気流によるフロア空気流への干渉を最小限に抑え、フロアエンドの空気流の絶対量と速度を確保するのは必然だ。
まだ現車を確認できていないが、このエッジの厚みの内部がダクト化していたら面白い。フロアエッジ前端辺りにエアインテークを設け、このエッジダクトの内部を通して必要部分での排出を行えばプレッシャーコントロールは可能だ。トリックデバイスの得意なメルセデスならやりかねない。
また、少なくとも見た目では昨年以上にレーキ角(フロアの前傾姿勢)があるように思える。もちろん写真からの判断で、実際はサーキット走行を見なければわからないが、フロアエッジとリヤブレーキダクトフィン、ディフューザースピリッター等が規制されて、これまでメルセデスが維持してきた低レーキのベンチュリー型を諦めざるを得なかったのかもしれない。
もともと大ダウンフォースを大きめのドラッグとともに得ていたチーム、その大ダウンフォース部分を失いかけたゆえのレーキ角採用ならば、ドラッグ処理はさらに苦しいはず。となると、W12がこれまで通りのアドバンテージを維持するには彼らのメルセデス製パワーユニット(PU)に昨年以上のパワーアップが要求される。
直近のホンダ、さらにルノーやフェラーリも今シーズンのPUのパワーアップを明言している。もちろんメルセデスが積み上げてきたアドバンテージはそう簡単に崩れはしないだろうが、もしかしたら彼らへの緊急事態宣言は既に発令されているのかもしれない。
《プロフィール》
津川哲夫(つがわてつお)
1949年生まれ。F1メカニックを志して1977年に単身渡英。トールマン、ハース、ベネトンなどのチームでメカニックを勤め、1990年シーズンでメカニックを引退。その後、F1中継でピットレポートやセッション解説、そして雑誌やwebメディアでメカニック経験を活かしたメカニカルな視点でF1の魅力を伝え続けている。
「メルセデス」をもっと詳しく
「メルセデス」のニュース
-
独メルセデス、米アラバマ州工場の労働者が労組結成を否決5月20日7時57分
-
2024年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP予選トップ10ドライバーコメント(1)5月19日17時41分
-
「こういう時こそ」今季極上の安定感も0勝…初回炎上の助っ人左腕へロッテ打線が最多16安打で奮起5月19日5時55分
-
【F1第7戦予選の要点】メルセデス復活の日はまだ遠いのか。想定外だった中団勢の大幅な進化5月19日1時24分
-
ハミルトン4番手「アップデートの効果を感じる。今までより上位との差が縮まった」メルセデス/F1第7戦金曜5月18日15時17分
-
【ロッテ】今季6戦4失点のメルセデスが初回10分で4失点5月18日14時41分
-
ロッテ・メルセデス—日本ハム・加藤貴之…スタメン発表5月18日13時21分
-
【18日の予告先発】広島・九里亜蓮—巨人・赤星優志、ロッテ・メルセデス—日本ハム・加藤貴之ほか5月17日22時47分
-
【タイム結果】2024年F1第7戦エミリア・ロマーニャGPフリー走行1回目5月17日21時34分
-
ハミルトン、メルセデスにアントネッリの起用を促す。「僕なら、おそらくキミを迎え入れるだろう」5月17日16時54分
スポーツニュースランキング
-
1【阪神】岡田彰布監督、村上—坂本のバッテリーに苦言「対策してないやろ」…一問一答 スポーツ報知
-
2【楽天】球団創設初年度の26失点に次ぐワースト2位の21失点で大敗 今江監督「恥ずかしいよりも悔しい」 スポーツ報知
-
3衝撃の爆音!大谷翔平、弾丸ライナーの打球速度がヤバすぎると話題に よくこんなの捕れたな… ファン騒然「守備は絶対イヤだろ」「化け物だな」 ABEMA TIMES
-
4息できてるか…? 大谷翔平、まさかのセーフティバントで“異変”が起きた…! 相手投手のリアクションがヤバすぎると話題に「ショックだろうな」「さすがに可哀想」 ABEMA TIMES
-
5これは反則レベル! 大谷翔平に球場全員がダマされた… “まさかのバント”直後に見せた一瞬の“表情”にファン騒然 「やってやったぜ?」「爽やかすぎる」 ABEMA TIMES