F1開幕直前キーポイント:メルセデスが警戒するレッドブルの潜在スピード。天候次第で大番狂わせも
2018年シーズンのF1がいよいよ開幕。チャンピオンチームのメルセデスとそれを追うフェラーリとレッドブルの三つ巴戦。今季からホンダPUを搭載するトロロッソなど、F1ジャーナリストの今宮純が今週末に迫った開幕戦オーストラリアGPの見どころを解説。
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『オーストラリアン・オープン』は、いきなりウェットレースで開幕か。今年もまた天候が気になってきている——。最多21戦ある18年シーズン、初戦はF1通算977戦目、来年は記念すべき“1000GP”を迎えるプレ・イヤーだ。
10年もオーストラリアGPはウェットレースだった(この年は第2戦)。イメージとして晴天日和なアルバートパークの印象があるかもしれないが、過去10年に雨がらみセッションは10回も。最近では14年の予選が雨、13年には大雨で予選Q2が日曜に順延された。月曜時点の長期予報によれば土曜は気温28度前後(雷雨あり)、日曜は下がって23度(降雨確率75%)、つまり荒れ模様だ。
なんといってもオーストラリアはルイス・ハミルトンがPPキング、4年連続PPを奪取しているのはこことイタリアGPだけ。だが勝ったのは15年のみでニコ・ロズベルグ、そしてセバスチャン・ベッテルに逆転を許している。
このことからうかがえるのは、高難度コースでアタック力を発揮するが(とくにセクター1)、スタートからぶっちぎるパターンにはもっていけてない(14年はマシントラブルも)。
合同テスト段階からメルセデスはレッドブルとフェラーリの拮抗戦力を意識、“三つ巴戦”にそなえてきた。完全な予選PUモードとハイパーソフトを試みず、合計1040周の50%以上の525周をミディアムで走り込み、セットアップ・バリエーションを精査。防衛戦にさらに慎重になっていた。
ソフト系スペックを履いたボッタスにブリスター傾向があったものの、それは他チームにも発生、新舗装されたバルセロナが原因とも考えられる。
ドライ予選であるなら(順当な予想をするならば)、3列目まではシルバー&レッド&ブルーのトリプルカラーが入り乱れて染まるだろう。あえて言うならハミルトン、ベッテル、マックス・フェルスタッペンが3チームの先陣をきるか。
注視したいキーポイント。メルセデスはショート・コーナーが多いセクター3の攻めだ。フェラーリは昨年約0.3秒もの大差を喫したセクター1のストレートライン・パワー。レッドブルは高速セクションのセクター2でのキャリー・スピードだ。
個人的にマークしたいのはストップ&ゴーセクションでのレッドブルのトラクションと回頭性。これらの挙動がテスト初期段階からすばらしく、さらに開幕戦で空力アップデートをぶち込むだけに3分の1(33.3%)以上の最前列チャンスもあるのではないか。
天候変化のファクターや強い風も追い風になりそう。トータル783周のうち575周(70%!)をメルセデスと同じくミディアムで走破、このテスト方式もいままでと違う。だからメルセデスはレッドブルをより警戒している……。
アルバートパークは舗装タイプが次々に変化、準公道路面にバンプも潜み、覆われた白線などが点在、縁石走行ラインもトリッキー。新人がシミュレーターで学んでもコースをマスターするのに時間がかかり、ストロールやオコン、バンドーンも昨年ミスを繰り返した。フリー走行などでクラッシュすると、スペアパーツなどがまだ少ない開幕戦だけに戦力度がダウン。ここにはルーキーを待ちかまえる“落とし穴”がいっぱい隠されている。
中団チームはご存知の『バトルロイヤル状態』だが、開幕戦はとくにドライバーコンビが変化した3チーム、特にルーキーがいるところに注目。
ウイリアムズはセルゲイ・シロトキン、トロロッソ・ホンダはピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレーのふたり。ザウバーはシャルル・ルクレールを起用。彼らは白紙から線引きすることになる。それをフォローしカバーするのがチーム全体の力。その点で秀でるのがトロロッソ・ホンダ、最近4年間、開幕戦で入賞率100%(ダブル入賞は3回)がその証。
ホンダも彼らのノウハウを受け入れ、新人に扱いやすいPU設定(もしウエットとなるならなおさら)をまず準備すると思われる。予選6列目、決勝トップ10圏内、これが現実目標だろう。となれば『マッサ・ロス症候群』に苦しむ現時点のウイリアムズや、ベテランがいないザウバーはかなりつらい状況だろう……。
中団ではチーム力+ドライバー力のトータルにおいて経験豊かなところが強みを引き出してくるはず。地道なテストに没頭したフォース・インディアは、13年から毎年7位以上の連続入賞。手堅く開幕戦をやりくりする。3年目ワークス体制強化のルノーもふたりとも実力派が揃い、堅実路線できている。
この集団でサプライズをもたらすとしたら、ハースとマクラーレンを挙げよう。3年目ハースはテストでロングランを初めてふたりともしっかり終え、一発タイムもメルセデス同様ハイパーソフトを全く履かずにスーパーソフトでマグヌッセンが総合6位。3年目の進化の証だ。
ホンダからルノーに換装したマクラーレンにはネガティブ・ファクターがつきまとったが、テストを“限界チェック”と割り切った戦略がちらつく。ホンダとの雌伏3年を経た名門の反抗、この新旧両チームが攪乱の目となるか。
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