WTCR:ヒュンダイが2020年体制発表。ファルファスに代わりエングストラー加入
WTCR世界ツーリングカー・カップに参戦するヒュンダイ・モータースポーツ陣営は、3月16日に2020年のチーム体制とドライバーラインアップを発表した。新王者ノルベルト・ミケリスと初代WTCR王者ガブリエル・タルキーニのペアを継続し、こちらも残留のニッキー・キャツバーグに加え、新たにルカ・エングストラーの起用をアナウンスした。またチーム王者Lynk&Co Cyan Racingも4台体制でのエントリーを決めている。
WTCRではマニュファクチャラーによる直接のチーム運営が禁止され、1メーカーにつき最大4台までとするグリッド上限規定が設けられているが、各陣営は「カスタマーレーシング部門による顧客チームへのサポート」という名目で、実質上のワークス体制を構築している。
Lynk&Coと並び、その筆頭株であるヒュンダイ・モータースポーツも2020年シーズンに向け引き続き『BRC Hyundai N LUKOIL Squadra Corse』と、新たに『Engstler Hyundai N Liqui Moly Racing』の計2チームを擁してシリーズへのエントリーを表明した。
「BRCとエングストラーは世界でもっとも成功しているTCRチームに数えられ、我々の顧客として非常に優れた実績を積み重ねてきた」と語るのは、ヒュンダイ・モータースポーツのカスタマーレーシング・オペレーションズ主任を務めるアンドリュー・ジョンズ。
「しかし(WTCRが発表した)今年のコスト削減策がなければ、このように強力なふたつのチームをシリーズで走らせることはできなかっただろう。とくにエングストラーのチームとルカにとっては、国内や地域選手権で数々のタイトルを獲得した上でのWTCR昇格であり、TCRでのチーム、マシン、ドライバーの強力な組み合わせを完璧に証明してくれるはずだ」
2019年はかつての所属マニュファクチャラーだったホンダ陣営のライバルを打ち破り、自身初の世界チャンピオンを獲得したミケリスは、王者にのみ許された連覇への挑戦に「燃えている」と抱負を語った。
「初タイトルを獲得した後で、慣れ親しんだマシンとチームで新しいシーズンを戦えるのは非常にうれしい。僕にとっては本当に快適な環境だからね」と、体制維持を喜んだミケリス。
「BRCやチームメイトのガブリエレとは本当に上手くいっている。それは過去2シーズンの実績が証明しているよね。でも2020年は新たな挑戦になるだろうし、カレンダーに含まれるいくつかの新トラックに、グリッド上では全員に新しいタイヤ(グッドイヤー製)が装着される」
「すべてのドライバーたちが新シーズンへの準備を進めていると思うが、僕らも懸命に働いて態勢を整えている。今はこの自分がタイトルを持っていることは知っているけど、2020年はさらに速いドライバーになれると信じている」
一方、アウグスト・ファルファスに代わってWTCRでのレギュラーシートを射止めたルカ・エングストラーは、2019年マカオのワイルドカード枠参戦で14位に終わった経験から「さらに上を目指したい」と意気込む。
「WTCRのグリッドに並ぶことは、僕にとって長年の夢だった。このTCRでのレースが大好きだし、疑いようもなくヒュンダイi30 N TCRはカテゴリーで最高のマシンの1台だ」と続けたエングストラー。
元WTCC世界ツーリングカー選手権にも参戦した父フランツのチームで修行を積み、ここまでTCRミドル・イースト初代王者を筆頭に、TCRアジア、TCRマレーシアをともに連覇するなど、若干20歳ながら複数のシリーズタイトルを手にしてきた。
「ヒュンダイ・モータースポーツのカスタマーレーシング部門にも感謝しなくちゃならない。2019年はジュニアプログラムの一環として、僕は彼らの知識やノウハウを活用し、ノルビーやガブリエレ、ニッキーらの速い先輩たちから学ぶことができた」
「それに昨年はマカオGPでドライブできたのも最高の経験だった。僕を信じて機会をくれた彼らに恩返しがしたいし、あの素晴らしい体験がシーズンでの助けになってくれると信じているよ」
一方、2019年からWTCRへの本格的なブランド参入を開始したLynk&Coは、吉利汽車傘下のボルボでレース活動を担当したCyan Racingのオペレーションにより、イバン・ミューラー、テッド・ビョーク、ヤン・エルラシェール、そしてアンディ・プリオールという豪華布陣を敷き通算8勝、21の表彰台を獲得した。
陣営は引き続き4台のLynk&Co 03 TCRをシリーズへ投入することを表明したが、プログラムのドライバーラインアップはまだ未確定のまま。しかしミューラーによるドライバーズランキング3位からの挽回と、チームチャンピオンシップの防衛を狙うことが確実視される。
「我々の目標は明確で、昨年の成績を上回るリザルトを狙って上位を走りたい。トップへの挑戦はより厳しくなると思うし、競合他社も進化するだろう。しかし我々も、2019年にはスウェーデンから中国まで全員の努力の結果を目の当たりにしたし、Lynk&Co 03 TCRの速さにも自信を持っている」と、Cyan RacingのCEO兼創設者であるクリスチャン・ダール。
このLynk&Co Cyan Racingのアナウンスにより、2020年シーズンへのエントリーを公式表明したのは、ヒュンダイ陣営の4台、ALL-INKL.COMミュニッヒ・モータースポーツのFK8ホンダ・シビック・タイプR TCRが4台、そしてComtoyou Racingに残留したトム・コロネルのアウディRS3 LMSの計9台となっている。
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