「ピンチをチャンスに」水素カローラ欠場でスーパー耐久第1戦鈴鹿に登場したGRヤリスの狙い
3月18〜19日、三重県の鈴鹿サーキットで行われたENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Powered by Hankook第1戦『SUZUKA S耐』。メーカーの開発車両が参加できるST-Qクラスでは、ORC ROOKIE Racingが走らせる水素エンジン搭載のORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptが直前の不具合の影響で参戦しなかったが、代わって登場したORC ROOKIE GR Yarisが好走をみせた。この車両だが、ST-Qクラスから参加したとおり、“ただの代役”というわけではなかった。
『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』をテーマに掲げ、TOYOTA GAZOO Racingとともに参戦しているORC ROOKIE Racingは、今季ST-QクラスにORC ROOKIE GR86 CNF Concept、そして液体水素で走るORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptの2台での参戦を予定していた。
ただ、ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは3月8日に富士スピードウェイで実施した社内専有テストの際に、エンジンルームの気体水素配管からの水素漏れによる車両火災が発生したため復旧が間に合わず、第1戦鈴鹿を欠場することになってしまった。
代わって登場したORC ROOKIE GR Yarisだが、もともとこの車両は2021年第2戦まで、ST-2クラスに参戦していた。カラーリングもほぼ当時のままだったが、今回はST-Qクラスからの参戦。当然ながら“ただの代役”というわけではなかった。
「なぜGRヤリスをもってきたのかというと、我々はカーボンニュートラルの選択肢を広げるという活動とともに、根底にある『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』を進めたいというところがあります」と説明したのは、GRカンパニーの横田義則車両開発部先行開発室室長。
「GRヤリスは、今の水素カローラやGR86にも使っているG16Eエンジンを使っており、それを鍛え続けることが我々の使命です。また、外装でも空力パーツなども現在も開発を進めております」
2020年にデビューしたGRヤリスはスーパー耐久以外にもラリーなどさまざまなカテゴリーで活躍している車両であり、さらに市販車でも、2023年1月の東京オートサロンでGRヤリスRZのセバスチャン・オジエ・エディション、カッレ・ロバンペッラ・エディションといった限定モデルも登場している。
さらに、KINTOで扱われているGRヤリス特別仕様車 RZ“High performance・モリゾウセレクション”にも見られるように、モータースポーツの現場で鍛えられた技術を、ユーザーの手に渡ってからもアップデートしていくような、アジャイルな開発が現在も行われているのがGRヤリスだ。今回水素カローラが欠場してしまったことを好機と捉え、開発陣がさまざまなトライをORC ROOKIE GR Yarisに盛り込んだ。
「“ピンチをチャンスに”ではありませんが、このレースの機会をいただけたので、『もっといいクルマづくり』のために、開発現場で試そうと思っていたパーツを持ってきて、このレースの現場でGRヤリスをもう一度鍛え直そうと思っています」と横田室長。
こうして戦ったORC ROOKIE GR Yarisは、第1戦鈴鹿で快調な走りをみせた。近年GRカローラでプロも驚く速さをみせてきたMORIZOはもちろん、このGRヤリスをサーキットレースで初めて走らせた小倉康宏、さらにひさびさにドライブした佐々木雅弘、石浦宏明というプロからも異口同音に「楽しい」という声が聞かれた。
またレースでも、次世代のGR86/BRZを見据えた開発を行っている28号車ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptと同じエンジンということもあり、接近したチーム内バトルも勃発。「全員がきちんと乗って、しっかり走れることが目的(佐々木)」ということから戦略を突き詰めたわけではないが、92周とST-2クラスとほぼ同等のパフォーマンスでフィニッシュ。「クルマの良いところ、MORIZO選手のスピード、小倉選手の上達など多くの収穫があったレースでした」と佐々木は満足そうに振り返った。
石浦も「GRヤリスならではの、ひさびさに緊張感のあるレース」だったと振り返る。水素カローラではこれまでさまざまな開発を通じて航続距離や速さを増す大きな挑戦を続けていたが、今回は「違ったレースの面白さ」があったという。
「『もっといいクルマづくり』のために、休んでいるヒマはない」と佐々木が言うとおり、ORC ROOKIE GR Yarisは今回の参戦を通じて、また別の収穫を得たようだった。
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