新体制初陣はシュートゼロ 三笘薫が直面した「代表スタメンで輝く難しさ」
サッカーキング2023年3月25日(土)12時18分
ウルグアイ戦で先発出場した三笘薫 [写真]=金田慎平
時折、激しい雨が降る国立競技場に6万1855人の大観衆を集めて行われた24日の『キリンチャレンジカップ2023』ウルグアイ代表戦。FIFAワールドカップ2026に向けた新生・日本代表の第一歩ということで内容ある勝利が期待された。
とりわけ、注目されたのは今シーズンのイングランドで公式戦9ゴール5アシストと光り輝いている三笘薫(ブライトン)。21日の合流初日の練習から、トレーニング見学に集まった子どもたちから「三笘選手~」とひっきりなしに声援が飛び、この日の選手紹介時にもひと際、大きな歓声が沸き起こった。
「あれだけ期待してくれて、大きな声援をくれるのはなかなかない。すごく光栄なこと。それを結果で応えるのが一流だと思う」と本人も神妙な面持ちで語っていた。
左FWで先発起用されたこの一戦では「日本を勝利へ導く結果を出す」と改めて誓い、ピッチに立ったことだろう。
その意気込みを三笘はスタートから体現しようとする。開始早々の3分には鎌田大地から縦パス受け、ドリブルで一気に5、60m持ち上がり、攻撃のスイッチを入れていく。19分にはGKシュミット・ダニエルのスローインを受け、またも敵陣深い位置までボールを運んで推進力を見せつける。背番号9がドリブルするたびにスタンドが沸く状況が続き、彼自身も「新エースの自覚」を抱きつつ、プレーしたに違いない。
しかし、ブライトンで見せているような強烈なインパクトは残せなかった。この日は左の伊藤洋輝、右の菅原由勢の両SBが中に絞ってビルドアップする新たなトライをしていたこともあり、三笘を生かす形を作り切れなかったのだ。
背番号9がペナルティエリア内に侵入する回数は少なく、89分間の出場でまさかのシュートゼロ。しかも、38分にフェデリコ・バルベルデに先制されたシーンでは、FWマキシミリアーノ・ゴメスへの寄せが中途半端になった結果、軽い守備になり、最終的にゴールにつながるクロスを上げさせる格好になった。
「ジョーカーではなく、スタメンで何ができるか」を問われた彼にしてみれば、不完全燃焼感の強いゲームになったのは確か。1-1のドローという結果を含めて、ホロ苦い新体制の船出になったと言うしかないだろう。
「監督からの信頼上がっているからこそのスタメンだと思いますけど、結果を出せなかった。これが最終予選だと本当に結果が重要になってくる。そういう中で今日、結果を出せなかったのは悔しいですね。多くの人の期待に応えられる『器』ではなかったということ。それを次に取り戻す作業になると思います。ブライトンでやっていることを出せないと『代表ではできない』と言われるので、それを言われないようにしないといけない」と本人も焦燥感を露わにした。
日本代表エース級の人間が、クラブと両方で活躍するというのは想像以上に難しい。中田英寿、中村俊輔、香川真司といった過去の中心選手たちもその壁にぶつかってきた。
三笘は2021年11月のオマーン戦でデビューして、まだ国際Aマッチは14試合目。2022年3月のアジア最終予選のオーストラリア戦やワールドカップでのスペイン戦など、大舞台で結果を出してきたのは事実だが、スタメンは5戦目という“ニューカマー”だ。ヨーロッパとアジアを行き来しながらの過密日程で代表戦に挑む経験も少ないだけに、ここから高いハードルを越え、真のエースに飛躍していく必要があるのだ。
そのためにも、チームとして三笘のストロングを引き出せる形を突き詰めていくことが大切になる。ウルグアイ戦の背番号9は明らかに孤立するシーンが目立ち、突破も単発で終わるケースが少なくなかった。伊東純也や上田綺世が出てきた後半途中からは、右サイドに起点ができたことで三笘に広いスペースが生まれたものの、フィニッシュの凄みを示せるようなラストパスも来なかった。日本代表としての連携・連動含めて課題はまだまだ多い。そのあたりは本人も口にしていた点だ。
「いろいろなやり方を試しながらやりましたけど、結局、一番いい形がどうなのかが分からないまま終わってしまったところがありましたね。特に前半はカウンターだけになっていた。それを強みにして得点を決められれば問題なかったですけど、失点して難しくなってしまった。チームとしてもう少し押し込む形を増やしていくことが大事ですね。右も左もうまく時間を作って中盤を押し上げて、相手のブロックを下げられればそれができますし、失っても二次攻撃につなげられるので。それと同時に選手の質や周りとの連携も深めていければいいと思います」
サッカーIQの高い三笘は改善策が明確に捉えている様子。それを28日のコロンビア戦で示す必要がある。おそらく次戦は途中出場になりそうだが、ジョーカーで流れを変える仕事の鋭さはカタールでも実証済み。自信を持って臨めるはずだ。
いずれにせよ、彼はゴールかアシストといった目に見える数字を着実に残し、日本を勝たせられる選手に進化していくしかない。
新体制初陣でぶつかった壁をどう乗り越えていくのか。三笘の真価が問われるのはここからだ。
取材・文=元川悦子
とりわけ、注目されたのは今シーズンのイングランドで公式戦9ゴール5アシストと光り輝いている三笘薫(ブライトン)。21日の合流初日の練習から、トレーニング見学に集まった子どもたちから「三笘選手~」とひっきりなしに声援が飛び、この日の選手紹介時にもひと際、大きな歓声が沸き起こった。
「あれだけ期待してくれて、大きな声援をくれるのはなかなかない。すごく光栄なこと。それを結果で応えるのが一流だと思う」と本人も神妙な面持ちで語っていた。
左FWで先発起用されたこの一戦では「日本を勝利へ導く結果を出す」と改めて誓い、ピッチに立ったことだろう。
その意気込みを三笘はスタートから体現しようとする。開始早々の3分には鎌田大地から縦パス受け、ドリブルで一気に5、60m持ち上がり、攻撃のスイッチを入れていく。19分にはGKシュミット・ダニエルのスローインを受け、またも敵陣深い位置までボールを運んで推進力を見せつける。背番号9がドリブルするたびにスタンドが沸く状況が続き、彼自身も「新エースの自覚」を抱きつつ、プレーしたに違いない。
しかし、ブライトンで見せているような強烈なインパクトは残せなかった。この日は左の伊藤洋輝、右の菅原由勢の両SBが中に絞ってビルドアップする新たなトライをしていたこともあり、三笘を生かす形を作り切れなかったのだ。
背番号9がペナルティエリア内に侵入する回数は少なく、89分間の出場でまさかのシュートゼロ。しかも、38分にフェデリコ・バルベルデに先制されたシーンでは、FWマキシミリアーノ・ゴメスへの寄せが中途半端になった結果、軽い守備になり、最終的にゴールにつながるクロスを上げさせる格好になった。
「ジョーカーではなく、スタメンで何ができるか」を問われた彼にしてみれば、不完全燃焼感の強いゲームになったのは確か。1-1のドローという結果を含めて、ホロ苦い新体制の船出になったと言うしかないだろう。
「監督からの信頼上がっているからこそのスタメンだと思いますけど、結果を出せなかった。これが最終予選だと本当に結果が重要になってくる。そういう中で今日、結果を出せなかったのは悔しいですね。多くの人の期待に応えられる『器』ではなかったということ。それを次に取り戻す作業になると思います。ブライトンでやっていることを出せないと『代表ではできない』と言われるので、それを言われないようにしないといけない」と本人も焦燥感を露わにした。
日本代表エース級の人間が、クラブと両方で活躍するというのは想像以上に難しい。中田英寿、中村俊輔、香川真司といった過去の中心選手たちもその壁にぶつかってきた。
三笘は2021年11月のオマーン戦でデビューして、まだ国際Aマッチは14試合目。2022年3月のアジア最終予選のオーストラリア戦やワールドカップでのスペイン戦など、大舞台で結果を出してきたのは事実だが、スタメンは5戦目という“ニューカマー”だ。ヨーロッパとアジアを行き来しながらの過密日程で代表戦に挑む経験も少ないだけに、ここから高いハードルを越え、真のエースに飛躍していく必要があるのだ。
そのためにも、チームとして三笘のストロングを引き出せる形を突き詰めていくことが大切になる。ウルグアイ戦の背番号9は明らかに孤立するシーンが目立ち、突破も単発で終わるケースが少なくなかった。伊東純也や上田綺世が出てきた後半途中からは、右サイドに起点ができたことで三笘に広いスペースが生まれたものの、フィニッシュの凄みを示せるようなラストパスも来なかった。日本代表としての連携・連動含めて課題はまだまだ多い。そのあたりは本人も口にしていた点だ。
「いろいろなやり方を試しながらやりましたけど、結局、一番いい形がどうなのかが分からないまま終わってしまったところがありましたね。特に前半はカウンターだけになっていた。それを強みにして得点を決められれば問題なかったですけど、失点して難しくなってしまった。チームとしてもう少し押し込む形を増やしていくことが大事ですね。右も左もうまく時間を作って中盤を押し上げて、相手のブロックを下げられればそれができますし、失っても二次攻撃につなげられるので。それと同時に選手の質や周りとの連携も深めていければいいと思います」
サッカーIQの高い三笘は改善策が明確に捉えている様子。それを28日のコロンビア戦で示す必要がある。おそらく次戦は途中出場になりそうだが、ジョーカーで流れを変える仕事の鋭さはカタールでも実証済み。自信を持って臨めるはずだ。
いずれにせよ、彼はゴールかアシストといった目に見える数字を着実に残し、日本を勝たせられる選手に進化していくしかない。
新体制初陣でぶつかった壁をどう乗り越えていくのか。三笘の真価が問われるのはここからだ。
取材・文=元川悦子
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