“国立男”西村拓真が目指すさらなる高み「全然インパクトはないので、地に足をつけてやり続けたい」
サッカーキング2023年3月25日(土)9時16分
[写真]=金田慎平
前日取材の最後に、何気なく満員の国立競技場でプレーできることに対する気持ちを聞いた。すると西村拓真は、やや被せ気味にこう答えた。
「国立、相性いいので」
確かに言う通りだ。西村は富山第一高校時代に旧国立競技場で全国高校サッカー選手権を制覇。横浜F・マリノスの一員となった昨年7月には、国立競技場で行われた清水エスパルス戦でゴールを挙げた。今年2月にもFUJIFILM SUPER CUP 2023のヴァンフォーレ甲府戦で決勝点を奪ってチームのタイトル獲得に貢献している。国立競技場との「相性」は間違いなくいい。
24日に行われたキリンチャレンジカップ2023の日本代表対ウルグアイ代表も、会場は国立競技場。ウルグアイ代表に1点リードを許した状況で、8カ月ぶりに日本代表入りを果たした西村に出番が回ってきた。そのファーストタッチだった。75分、同じく途中出場の伊東純也が右サイドを抜け出し、低い軌道のクロスを送る。ゴール前では上田綺世が囮となり、やや遅れて走り込んできた西村は完全フリーで左足を合わせ、ゴールネットを揺らした。やはり国立競技場には縁があるようだ。
「前日の練習で同じようなシーンがあって、今日そういう話をして、本当に狙い通りになった感じですね」。西村は「ただ当てれば入るという、(伊東)純也くんのいいパスだった」と謙遜するが、十分にインパクトの大きなゴールだった。日本代表にとってカタールワールドカップ後の最初の試合で、第2次森保ジャパンにとっても船出となる一戦。そこに出場した唯一の国内組の選手として、1ゴールを挙げたという事実は今後に向けて重要な意味を持つだろう。Jリーグでプレーする選手のみで戦った8カ月前のEAFF E-1サッカー選手権と状況はまるで違い、ワールドカップを経験した海外組も招集されているチームで結果を残すことができた。
それでも西村の自己評価は徹頭徹尾厳しい。「周りの人たちはインパクトを強く感じたと思いますけど、僕の中では全然インパクトはないので、地に足をつけてやり続けたい」ときっぱり。こういう時、彼は「自分は弱い」という独特の表現をする。ウルグアイ代表戦で与えられたポジションは、所属クラブと同じ『4-2-3-1』のトップ下だった。ゴールの形にも、どこか見覚えがある。マリノスであれば右サイドの水沼宏太がクロスを上げ、1トップのアンデルソン ロペスがゴール前で潰れ役となり、後ろから走ってきた西村がシュートを決めるといった場面が容易に想像できる。そう考えれば、これまで所属クラブで積み上げてきたものをしっかりと日本代表というステージでも発揮できたと言えるだろう。得点という目に見える数字を残すだけでなく、攻撃から守備への素早い切り替えや、前線での激しいプレッシングでもマリノス仕込みのプレーが随所に見られた。相手のプレーを的確に予測したうえで味方のプレッシングと連動し、サイドの深い位置まで果敢にボールを追っていってクリアボールをカットする場面も。西村はアタッカーながら守備面でも質の高いプレーをする。
それでも「(マリノスと)同じシステムでやっていますし、トップ下で同じような形でやれている中で、チームの勝利に対して自分がどう関われるかというのは、まだまだ示していかないといけないですし、示せていないと思います」と悔しがる。向上心はとどまるところを知らない。「(守備も)まだまだこんなんじゃ足りないですし、(ポジションを)脅かすのは正直、今のままでは厳しいと思いますし、まだまだ弱いですね。インパクトも弱いですし、自分の実力としてもまだまだ足りないなというのは感じているので、本当にもっとレベルアップしたいです」。
西村には「個人で何かをするタイプではない」という自意識がある。ゆえに「味方とつながって」周りのチームメイトを生かし、それによって自分も生かされるという考え方でプレーしてきた。そして、「勝つためにプレーできる選手が一番いい選手だと思う。そこはマリノスで学んだ部分」とも語る。日本代表でプレーする時も、意識することは変わらない。チームプレーヤーとして「勝利のためにどう関われるかという存在感を示していかなければいけない」と西村は言う。それはチーム内でより重要な存在になるためのキーポイントでもある。
「やっぱりワールドカップのメンバーは、(チーム内での)立ち位置的にもみんな出来上がった状態。僕たちのような新しい選手がどうやってそこをこじ開けていくかを本当に意識しているので、まだまだ弱いなと思います」。ウルグアイ代表戦では鎌田大地がトップ下として先発起用された。カタールワールドカップでも鎌田がトップ下として主軸を担い、他にも久保建英や南野拓実をはじめとした実力者たちが虎視眈々とチャンスを狙う。西村が奪い取ろうとしているのは、チーム内で最も人材が充実しているポジションだ。
2026年の北中米ワールドカップに向けた競争は始まったばかり。西村は得点力や攻守両面にわたるハードワークといった鎌田らとは違う特徴をアピールし、海外組の選手たちを脅かすことができるだろうか。ライバルたちに個の総合力で劣っている実感がありながらも、「新しく入っていく人たちが本当にやっていかないといけないと思うので、まず一歩目としてはいいスタートが切れた」という手応えはある。「本当に1日1日を大事にして、次に何ができるのか。自分にプレッシャーをかけてやりたいと思います」。日本代表は28日にコロンビア代表と対戦する。この試合で何を示せるかは西村にとって極めて重要だ。大きなインパクトを残しても「自分は弱い」と語る、侍のようなマインドを持った26歳は、森保ジャパンでの生き残りを懸けてひた走る。
取材・文=舩木渉
「国立、相性いいので」
確かに言う通りだ。西村は富山第一高校時代に旧国立競技場で全国高校サッカー選手権を制覇。横浜F・マリノスの一員となった昨年7月には、国立競技場で行われた清水エスパルス戦でゴールを挙げた。今年2月にもFUJIFILM SUPER CUP 2023のヴァンフォーレ甲府戦で決勝点を奪ってチームのタイトル獲得に貢献している。国立競技場との「相性」は間違いなくいい。
24日に行われたキリンチャレンジカップ2023の日本代表対ウルグアイ代表も、会場は国立競技場。ウルグアイ代表に1点リードを許した状況で、8カ月ぶりに日本代表入りを果たした西村に出番が回ってきた。そのファーストタッチだった。75分、同じく途中出場の伊東純也が右サイドを抜け出し、低い軌道のクロスを送る。ゴール前では上田綺世が囮となり、やや遅れて走り込んできた西村は完全フリーで左足を合わせ、ゴールネットを揺らした。やはり国立競技場には縁があるようだ。
「前日の練習で同じようなシーンがあって、今日そういう話をして、本当に狙い通りになった感じですね」。西村は「ただ当てれば入るという、(伊東)純也くんのいいパスだった」と謙遜するが、十分にインパクトの大きなゴールだった。日本代表にとってカタールワールドカップ後の最初の試合で、第2次森保ジャパンにとっても船出となる一戦。そこに出場した唯一の国内組の選手として、1ゴールを挙げたという事実は今後に向けて重要な意味を持つだろう。Jリーグでプレーする選手のみで戦った8カ月前のEAFF E-1サッカー選手権と状況はまるで違い、ワールドカップを経験した海外組も招集されているチームで結果を残すことができた。
それでも西村の自己評価は徹頭徹尾厳しい。「周りの人たちはインパクトを強く感じたと思いますけど、僕の中では全然インパクトはないので、地に足をつけてやり続けたい」ときっぱり。こういう時、彼は「自分は弱い」という独特の表現をする。ウルグアイ代表戦で与えられたポジションは、所属クラブと同じ『4-2-3-1』のトップ下だった。ゴールの形にも、どこか見覚えがある。マリノスであれば右サイドの水沼宏太がクロスを上げ、1トップのアンデルソン ロペスがゴール前で潰れ役となり、後ろから走ってきた西村がシュートを決めるといった場面が容易に想像できる。そう考えれば、これまで所属クラブで積み上げてきたものをしっかりと日本代表というステージでも発揮できたと言えるだろう。得点という目に見える数字を残すだけでなく、攻撃から守備への素早い切り替えや、前線での激しいプレッシングでもマリノス仕込みのプレーが随所に見られた。相手のプレーを的確に予測したうえで味方のプレッシングと連動し、サイドの深い位置まで果敢にボールを追っていってクリアボールをカットする場面も。西村はアタッカーながら守備面でも質の高いプレーをする。
それでも「(マリノスと)同じシステムでやっていますし、トップ下で同じような形でやれている中で、チームの勝利に対して自分がどう関われるかというのは、まだまだ示していかないといけないですし、示せていないと思います」と悔しがる。向上心はとどまるところを知らない。「(守備も)まだまだこんなんじゃ足りないですし、(ポジションを)脅かすのは正直、今のままでは厳しいと思いますし、まだまだ弱いですね。インパクトも弱いですし、自分の実力としてもまだまだ足りないなというのは感じているので、本当にもっとレベルアップしたいです」。
西村には「個人で何かをするタイプではない」という自意識がある。ゆえに「味方とつながって」周りのチームメイトを生かし、それによって自分も生かされるという考え方でプレーしてきた。そして、「勝つためにプレーできる選手が一番いい選手だと思う。そこはマリノスで学んだ部分」とも語る。日本代表でプレーする時も、意識することは変わらない。チームプレーヤーとして「勝利のためにどう関われるかという存在感を示していかなければいけない」と西村は言う。それはチーム内でより重要な存在になるためのキーポイントでもある。
「やっぱりワールドカップのメンバーは、(チーム内での)立ち位置的にもみんな出来上がった状態。僕たちのような新しい選手がどうやってそこをこじ開けていくかを本当に意識しているので、まだまだ弱いなと思います」。ウルグアイ代表戦では鎌田大地がトップ下として先発起用された。カタールワールドカップでも鎌田がトップ下として主軸を担い、他にも久保建英や南野拓実をはじめとした実力者たちが虎視眈々とチャンスを狙う。西村が奪い取ろうとしているのは、チーム内で最も人材が充実しているポジションだ。
2026年の北中米ワールドカップに向けた競争は始まったばかり。西村は得点力や攻守両面にわたるハードワークといった鎌田らとは違う特徴をアピールし、海外組の選手たちを脅かすことができるだろうか。ライバルたちに個の総合力で劣っている実感がありながらも、「新しく入っていく人たちが本当にやっていかないといけないと思うので、まず一歩目としてはいいスタートが切れた」という手応えはある。「本当に1日1日を大事にして、次に何ができるのか。自分にプレッシャーをかけてやりたいと思います」。日本代表は28日にコロンビア代表と対戦する。この試合で何を示せるかは西村にとって極めて重要だ。大きなインパクトを残しても「自分は弱い」と語る、侍のようなマインドを持った26歳は、森保ジャパンでの生き残りを懸けてひた走る。
取材・文=舩木渉
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