『パノス・エスペランテGTR-1』GT1の時代に現れた異色のロングノーズ・アメリカンFR【忘れがたき銘車たち】
モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、『パノス・エスペランテGTR-1』です。
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『パノス』。オートスポーツwebの読者のみなさんは、この名をご存知だろうか。少し古いことをご存知のファンの方なら、2000年のル・マン24時間レースに参戦した“カップヌードル”がスポンサーのテレビ朝日チーム・ドラゴンのオープンプロト車両を思い浮かべるかもしれない。
また近年(といっても、10年前の話だが)では、ニッサンも関与したデルタウイングのプロジェクトでその名前を聞いたという方もいらっしゃることだろう。
『パノス』は、1989年にアメリカで創立したスポーツカーブランドで、モータースポーツに参入したのは1997年のことになる。自社製スポーツカーの『パノス・エスペランテ』をレーシングカーへと仕立てた『GTR-1』を開発し、スポーツカーレースに参入した。
1997年のスポーツカーレースシーンは、GTカーとは名ばかりのプロトタイプカーのようなミッドシップレーシングカーが群雄割拠していた“GT1の時代”真っ只中。そんななかロードカーありきの思想を持つ『パノス』は、もとのベース車のスタイルを崩さず、ロングノーズ、ショートデッキのフロントエンジンマシンのまま、GT1レーシングカーである『パノス・エスペランテGTR-1』を開発した。
メルセデス、ポルシェ、ニッサンなどがロードカーが1台だけのスペシャル、もしくは規定を満たすだけの台数をレース参戦よりも後に生産完了していたような時代。『パノス』は、よりGT1の“意義”に沿った活動をしていたと言えるだろう。
『パノス・エスペランテ』のレーシングバージョンである『パノス・エスペランテGTR-1』の開発は、イギリスのレイナードが担当した。そして実作業を行ったのは、マツダ757から787Bまでの設計の任を担ったナイジェル・ストラウドだった。
『エスペランテGTR-1』はフロントエンジンであるデメリットを補うため、エンジンはなるべく後方に搭載。それに伴いドライバーの着座位置が後退。リヤタイヤの直前にマウントされ、重量配分の最適化を図ったレイアウトに仕立てられ、ユニークなフロントエンジン車の理想とされる前後重量配分を実現した。
エンジンはフォード製の6.0リッターV8を搭載。600ps程度を発揮するユニットだったとされる。こうして誕生した『パノス・エスペランテGTR-1』は、1997年のFIA GT選手権、そしてル・マン24時間レースへと参戦。この1997年のル・マンでは3台の『パノス・エスペランテGTR-1』をエントリーさせたものの、全車リタイアに終わってしまう。
しかし翌1998年のル・マンでは、45号車のデイビッド・ブラバム、アンディ・ウォレス、ジェイミー・デイビス組が予選でプロトタイプカーのBMW V12 LMやニッサンR390 GT1の一角を上回るタイムをマークし、決勝でも総合7位にランキングを果たし、意外な好走を見せた。
実はこの1998年、パノスは“普通”のGTR-1のほかにもう一台、GTR-1のフォルムを持つ画期的な車両を持ち込んでいる。それが『Q9ハイブリッド』だ。FIA世界耐久選手権(WEC)でハイブリッドのLMPカーが主流となるはるか前に誕生したハイブリッドのスポーツカーだ。
『Q9ハイブリッド』はガソリンエンジンと電気モーターを併用して、それを駆動輪に伝えるパラレル方式のハイブリッドを採用。電気モーターは助手席後方のバルクヘッドに取り付けられていた。
助手席には大きなニッケル水素バッテリーを搭載するなど、かなり重量も重かったようで速さは見せられず、予備予選落ちという結果に終わった。しかし、この一台は未来を予見する、革新的な車両だったといえるだろう。
パノスは、1998年を持って屋根付きのGT1マシンでのチャレンジを終了する。そして、1999年からはGTR-1を屋根を取り払ったLMPカー『LMP1ロードスター』でル・マン24時間レースへの参戦を続けていくのだった。
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