【角田裕毅F1第3戦密着】全力を尽くすも「まったくペースがなかった」序盤からグリップ不足の一方、タイヤの理解も進む
F1第3戦ポルトガルGPのスタート前のセレモニーに参加した後、ダミーグリッドに戻ってきた角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)は、しばらくエンジニアと話し込んでいた。グリッドに着く前に、すでにチームのエンジニアリングルームでミーティングをしているため、ここでの話し合いはその再確認か、その後アップデートされた情報の共有、あるいはスタートの手順の確認、または天気や風向きのチェックなどである。
だが、このとき角田はエンジニアとそれ以外のテーマについて話し合っていた可能性がある。それは、土曜日の予選でタイヤがグリップしなかったことだ。
「(ステアリング上のスイッチを押して)タイヤの温度を確認したら、ちゃんと温度は出ていたので、(なぜグリップがなかったのか)わからないまま終わってしまいました。アタックラップ自体はそんなに悪くなかったので、何が悪かったのか(データを)比較して、明日日曜日のレースに備えたいと思います」と語っていた角田。
しかし、データは確認できても、現在のF1は予選開始後からレーススタート時までは一部を除いて、セッティングの変更はできない。そのため、日曜日になっても、角田のマシンがグリップ面で大きく改善していなかったことは、容易に想像がつく。午後2時20分にピット出口が開放され、ダミーグリッドに着くためのレコノサンスラップでマシンの挙動を確認した角田は、そのことをエンジニアに伝えていたのではないだろうか。
そして、午後3時すぎにスタートが切られたレースで、角田はそれを現実のものとして受け入れるしかなかった。
「スタート自体は、うまく行ったんです。でも、その後、グリップがなくて……」と言う角田は、1周目にふたつポジションを落とし、16番手で1周目のコントロールラインを通過。直後に前方で発生したアルファロメオ同士の接触事故に巻き込まれることもなく、直後に出されたセーフティーカー中はランス・ストロール(アストンマーティン)の前、15番手を走行していた。
ところが、セーフティーカーが退きレースが再開されると、角田はストロールにかわされていた。そのことを尋ねると、「覚えていないです」と答えた。それは、このとき角田はライバルとではなく、自分のマシンとコクピットのなかで格闘していたからだった。
その後ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)を抜き、ピットストップで最下位に落ちた後、ニキータ・マゼピン(ハース)をオーバーテイクしたが、それ以降は角田はコース上でだれも抜くことはなく、ポイント圏外でチェッカーフラッグを受けた。
「特に何かがあったわけでもなく、何が起こったのか本当にわからないんですけど、(今日も)まったくペースがなくて、すごくバランスの悪いクルマでした。僕は(コクピットのなかで)できることはやったんですけど、まだ何が悪かったのかわからない。これからデータを比較して、次に向かいたいと思います」(角田)
15位完走は、角田が望んでいたレースではなかったことは明らかだ。ポルトガルGPで角田はポイントを獲得できなかったが、何も得ることができなかったわけではない。
「イモラの経験を活かして、予選まではいい流れで来ていたのですが、その後はペース不足でそもそもそこ(評価するレベル)までいっていないので、バルセロナに向けてしっかり対策したいと思います」
前戦エミリア・ロマーニャGPで犯したミスを反省し、それをポルトガルGPで活かしていた。
そして、もうひとつタイヤについても、またひとつ学習できた。
「C1(ハード)タイヤでのペースアップですかね。タイヤが温まってくるときほどグリップしたので、それは予想外でした」(角田)
今回、ピレリが持ち込んだ3種類のコンパウンドはC1、C2、C3。そのうち、C1は今シーズン、グランプリで初めて投入された。そして、この3種類は2週連続開催となる次戦スペインGPも同じ。ポルトガルGPの経験は、次のスペインGPに必ず生きるはずだ。
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