86/BRZ第3戦:GT鈴鹿戦に続き谷口信輝の“怪走”炸裂。2017年第7戦以来の勝利掴む
激戦続くGAZOO Racing 86/BRZ Raceは、2シリーズともに3戦終えて3人目のウイナーが誕生。オートポリスでの戦いを制したのは、プロフェッショナルシリーズが谷口信輝(KTMS 86)で、クラブマンシリーズが庄司優磨(OTG DL 86)だった。
金曜日までは好天に恵まれていたシリーズ第3戦の舞台、オートポリスだったが、専有走行が行われた土曜日はあいにくの雨模様。それも季節外れともいえる低温のため、午前のスポーツ走行や専有走行の出走を控えるドライバーも少なくなかった。それでも最後のスポーツ走行1本だけは、ほぼドライコンディションに戻していたため、それぞれ最終チェックはできたようだ。
今回はひさびさのワンデイレース。プロフェッショナルシリーズ、クラブマンシリーズともに日曜日の午前に予選を、午後に決勝を行うことになった。上空には青空が広がり、ふたたび完全なドライコンディションになったものの、それが少々厄介だったようで……。いったん雨に濡らされたせいで同じドライでも、金曜日と日曜日では路面状態が著しく違っていたのだ。
そんな状況に戸惑うドライバーも少なくなかったなか、プロフェッショナルシリーズの予選ラスト5分までトップに立っていたのが菅波冬悟(OTG DL 86)だった。これに織戸学(サミー☆K-one☆MAX86)、佐々木雅弘(小倉クラッチREVO 86 BS)、蒲生尚弥(tomicaネッツ兵庫86 BS)が続いたが、ほぼ全車がピットに戻った完全なクリアラップ状態で、トップに立ったのは谷口で、3番手に青木孝行(ケーエムエス フェニックス86)が割って入ることに。
「昨日まではちょっと出遅れ気味だったんですが、予選に向けてなんとか取りつくろえたというか。雨降る前のセットが決まっていたんだけど、降ってから急に変わってすごいアンダーになって、昨日の最後なんて『こりゃ、まずいな』って感じで。予選は昨日の今日で、走行がないからバクチ気味のセット変更だったんですけど、少し曲がるようになりました。やっぱりここで勝つにはポールポジションが大事なので、獲れて良かったです」と谷口。
一方、2番手に甘んじたとはいえ、菅波は上機嫌。「最初一番で、でも誰か来るんじゃないかという気はしていました。実は1か所だけミスもあったんで。とはいえ、それ以外は会心の走りができたので、まぁ良かったです。僕のDL(ダンロップタイヤ)と、まわりのBS(ブリヂストンタイヤ)とで、ロング(ラン)がどんな感じで違うのか、それ次第ではありますけど、思いっきり戦おうと思います」と語っていた。
クラブマンシリーズでは庄司優磨(OTG DL 86)がポールポジションを獲得。ただ、苦笑い気味だったのは、「昨日まで行き過ぎていたので、今日は抑え過ぎてしまって、タイヤのいいところを出し切れなかったんです。ただ、余力はまだあるので、その分決勝で」という背景によるもの。
予選2番手は岩本佳之(C名古屋メサイヤ86)で、3番手は水谷大介(ネッツ東京レーシング86)。開幕戦ウイナーの神谷裕幸(N中部GRGミッドレスDL 86)は、アタック中のハーフスピンもあり、6番手からのスタートとなった。
プロフェッショナルシリーズの決勝は、上位陣にスタートミスはなく、予選順位そのままでの開始となった。そのなかで気を吐いていたのは、初めてのシングルグリッド、7番手を得ていた平木湧也(茨城トヨペット86レーシング)で、オープニングラップの第1ヘアピンで蒲生を抜いて6番手に浮上する。
オープニングラップは谷口、菅波、青木の順で三つどもえのバトルが繰り広げられていたが、2周目からはまるで1週間前のスーパーGT300クラスのバトルを彷彿させる、『谷口トレイン』が形成されて、平木まで6台が連なるようになる。
「あっち(菅波)が元気良かったので、最初のうちは抑えようと。速く走る気なんて微塵もなくて、抜かれるポイント、勝負どころは決まっているので、そこだけしっかりと。特に後ろ(菅波)だけ違うタイヤメーカーだったから、どこでどんな感じになるかわからなかったので、様子見ながら走って、あっちがタレたら逃げようと。序盤グイグイ来ていたからね」と谷口。
しかし、この状態にしびれを切らしていたのは菅沼ではなく、青木だった。4周目の1コーナーで菅沼に仕掛けるも接触。青木はなんとか踏み留まったものの、菅波は大きく順位を落としてしまう。
このアクシデントにより、谷口がようやくリードを広げることとなった一方で、今度は『青木トレイン』が形成されることになり、背後には織戸、佐々木、そして井口卓人(CG ROBOT BRZ BS)、蒲生、平木が続くことに。2度目のアクシデントは7周目の第1ヘアピンで発生。青木と織戸が接触、これに蒲生が巻き込まれてしまったのだ。
織戸のみ生き残って2番手に浮上するも、「今日の結果は嬉しくない。せっかくいいバトルをしていたのに、申し訳ない」とレース後に猛省することしきり。3番手には佐々木が浮上し、4番手は井口で、5番手は平木。
2度のアクシデントを尻目に、難なく逃げ切った谷口は昨年の第7戦SUGO以来の優勝を飾ることとなった。「(後続を)離せてからの後ろはみんな同じタイヤメーカーだから、似たようなポテンシャルしかない。逃げることに専念できました」と谷口。
ランキングトップをキープした織戸に続いて3位を獲得した佐々木は、これが今季初入賞。4位は予選9番手からジャンプアップを果たした井口で、最後は近藤翼(神奈川トヨタ☆DTEC 86R)の猛追も受けながら逃げ切った平木が5位で、これが2年目の初入賞となった。
クラブマンシリーズの決勝は、3番手から水谷が絶妙のスタートを決め、岩本をかわして2番手に浮上。1周目こそトップの庄司に1秒差をつけられていた水谷だったが、その後は徐々に差を詰め、一騎討ち状態へと持ち込んでいく。だが、庄司のガードは固く、なかなか水谷は逆転を許されず。
そんななか、8周目に現れたバックマーカーは水谷にとって千載一遇のチャンスだったはず。庄司が処理に手間取っていたのに対し、ホームストレートでスリップストリームを使って、アウトから抜きに出たのだが……。
「いつも走っている富士とかと違って、オートポリスの1コーナーはブレーキングポイントが分かり難くて……。庄司くんよりブレーキを遅らせて、前に出ようと思ったんですが、ちょっと遅らせ過ぎました」という水谷がオーバーラン。すぐに復帰はできたものの、7番手に後退してしまう。
これで難なく逃げ切りなった庄司が、昨年の第3戦・富士以来の勝利を獲得。「厳しいレースでした。ずっとタイヤはアンダーでしたから。周回遅れが出てきた時は生きた心地しなかったですね。ウワ〜って感じ、一瞬で両方の(笑)。1年ぶりの優勝だから嬉しいですが、(水谷に)ファステストラップ持って行かれたのだけ悔しいですね」と喜びを語った。
それまでの3番手争いが、そのまま2番手争いにスライドし、オープニングラップの3コーナーで岩本を抜いていた神谷が、最後まで続いたバトルを制して2位でフィニッシュし、ランキングトップにも返り咲き成功。3位の岩本にとっては、これが初めての表彰台となった。
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