WEC:トヨタ、悲願のル・マン初制覇へ準備は万端。「これまでの“借りを返す”」
TOYOTA GAZOO Racingが2012年から参戦しているWEC世界耐久選手権。そのシリーズのハイライトして知られる伝統の耐久レースイベント、ル・マン24時間レースが今年も夏至間近の6月16〜17日、フランスのサルト・サーキットで開催される。初優勝を目指すトヨタは2台のトヨタTS050ハイブリッドで2018年のル・マンに挑む。
2012年からシリーズの最高峰であるLMP1クラスにハイブリッドマシンを投入しているトヨタにとって今季のル・マンは例年以上に優勝へのプレッシャーが掛かるものになっている。というのも2016年のアウディに続き、昨シーズン限りで最大のライバルであったポルシェがLMP1から撤退したことで自動車メーカーのワークスチームはトヨタ1社のみとなったためだ。
しかし、だからといってトヨタが簡単にル・マンの総合優勝を勝ち取れるかと言えば、これまで幾度となく苦しめられてきた24時間レース中のトラブルやアクシデント、さらに今季新たにLMP1に参入してきた複数のプライベーターチームがそれを許してはくれないだろう。
今季はLMP1クラスの車両レギュレーションが大幅改正されたことでプライベーターのマシンのスピードが格段に上がっており、3日に行われたル・マンの事前テストでは総合トップタイムをマークした8号車トヨタに対して、レベリオン・レーシングの3号車レベリオンR13・ギブソンが0.6秒差の総合2番手に迫ったほどだ。
それでもトヨタは昨年見せた圧倒的な“速さ”に加えて2018年は“強さ”を増す開発を重ねることで、TS050ハイブリッドを24時間に渡って戦い続けられるマシンに強化。シーズン前のテストでは不慮のアクシデントへの対応や3輪状態での走行といった万が一に備える避難訓練のようなシミュレーションも行ってきたという。
さらにシーズン参戦に際してドライバーラインアップも強化され、7号車は小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペス、マイク・コンウェイという結成2年目の布陣をそのままに8号車トヨタには2度のF1ワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソを中嶋一貴、セバスチャン・ブエミのふたりに加えた。そのデビューレースとなったWEC開幕戦スパでは新生8号車トリオが勝利を飾っている。
「いよいよル・マン24時間レースを迎え、身が引き締まる思いです。ここ数年間のレースを思い返し、『これまでの借りを返す』と言う強い思いで臨みます」と語るのはTOYOTA GAZOO Racingの村田久武代表。
「一昨年、昨年と最後まで志を果たせずレースを終えることになってしまいましたが、今年こそ24時間をしっかり走りきるために、あらゆる緊急事態に備えて徹底的に訓練を重ねて参りました」
「過去に何度も経験したように、このレースはさまざまな突発のアクシデントに襲われます。不測の事態が発生した時こそチームの総合力で克服しなければなりません」
いよいよ本戦を迎えるル・マンのレースウイークに対して「準備は整ったと信じています。何があっても決して諦めず、表彰台の真ん中に立つために全力を尽くします。ファンのみなさまの記憶に残るレースをご覧いただけるよう頑張ります」と意気込みを語った。
村田代表の指揮の下、チーム一丸となって勝利を目指すTOYOTA GAZOO Racingのドライバーのコメントは以下のとおりだ。
小林可夢偉(7号車トヨタTS050ハイブリッド)
「素晴らしいル・マンのコースでレースができるのは、最高の気分です。長い歴史を持つこの偉大なイベントの雰囲気は、他のどのレースとも比べることができない格別なものがあります」
「昨年、僕はル・マンの予選でそれまでの最速ラップの記録を塗り替えましたが、それは何の意味も持ちません。もちろん、最速ラップという結果は誇りですが、決勝レースでこそ結果を出したいと思っています」
「未勝利のル・マンで、今回こそその大目標を達成したいと思っています。全力を尽くして24時間後のゴールを目指します」
マイク・コンウェイ(7号車トヨタTS050ハイブリッド)
「待ちに待ったル・マンがもうすぐ始まる。不本意に終わった昨年のル・マンからこのレースウイークを迎えるために準備し、待ち続けてきたんだ。ル・マンではあらゆる事態に備えて的確な対応をする必要があり、僕たちはできうる限りの努力をしてきたと信じている」
「我々は、昨年よりも強くなって戻って来たと確信しているので、レースウイークを迎えるのが待ちきれないよ! ル・マンが持つ独特な雰囲気のなかでドライブするのは本当に最高なんだ。年に一度しか体験できないからね。ファンのみんなもいつも熱狂的で、間違いなく忘れられない一週間になるだろう」
ホセ・マリア・ロペス(7号車トヨタTS050ハイブリッド)
「ここまでの12カ月にわたる頑張りは、すべてル・マンレースウィークのためと言える。冬季のテストで重ねた努力、払ってきた犠牲は、このレースで目標どおりの最高のパフォーマンスを発揮するためのものだ。今年最大のレースを迎えるにあたって、全精力を集中するつもりだよ」
「初参戦の昨年のル・マンは実に感動的だった。あの雰囲気をふたたび味わえるのが待ちきれないね。多くのプロトタイプカーと実力あるトップドライバーが参戦してくることもあり、素晴らしいレースになることを期待している。僕にとって忘れられないレースのひとつになるだろう」
中嶋一貴(8号車トヨタTS050ハイブリッド)
「多忙な一週間になりますし、レースは毎年過酷です。予測が難しいなかで、ひとつだけ明らかなのは、テストデーでの結果を見る限り、僅差での激戦になるだろうということです」
「我々がすべきことは分かっています。万全の準備を整え、決勝レースではいかなるミスも、故障やトラブルも無いように戦うということです」
「目標はいつものレースと同じです。常に冷静を保ち、ゴールを目指し戦い続けるだけです。目標達成のチャンスは絶対あると信じており、何としても実現する覚悟です」
セバスチャン・ブエミ(8号車トヨタTS050ハイブリッド)
「ル・マンは本当に壮大で、大観衆と熱狂に包まれるこの一大イベントに参戦できることに心から幸せを感じるんだ。偉大な伝統的をもつこのレースのすべての瞬間を楽しむつもりだ」
「開幕戦スパとテストデーの内容と結果は、決勝レースへ向けて大いに勇気づけられるものだったが、戦前の期待と裏腹にこれまで目標を達成することは残念ながらできていない」
「それだけに、今回は気負い過ぎることなく決勝レースに臨むつもりなんだ。さまざまな突発事態が発生し、決して思い通りのレースにならないことはよく分かっているけれど、その過酷さを乗り越えるためのできる限りの努力をし続けてきた。あとはレースを待つだけだ」
フェルナンド・アロンソ(8号車トヨタTS050ハイブリッド)
「待ち望んできたレースを迎える万全の準備ができている。このレースのためにチームとともに全力を尽くしてきたんだ。僕にとって初のル・マン24時間レースへ向けて、ここまでのスタッフの頑張りに感銘を受けているよ。この強い団結力を持つチームに加われたことをうれしく思う」
「長く憧れていたサーキットで行われるこの大イベントで、レースを戦えることが実現し感無量だ。24時間の決勝レースへ向けた一週間は、自分の胸に深く刻まれるものになるだろうね」
「僕にとって初めてのル・マンは単にレースを戦うことだけではなく、レース前のイベントや、現地での盛り上がり、ファンのみんなとのふれあいなども含めて素晴らしい経験になるはずだ。それこそがル・マンの魅力だと思うよ」
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