ポルシェのLMDh車両『963』の名称にファン歓喜。スポーツカー史上に残る名車『962/962C』とは
6月24日、ポルシェは2023年のWEC世界耐久選手権/IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に投入する予定のLMDh車両について、そのカラーリングと体制、そして車名を発表した。その名も『963』と名付けられた車名には、世界中のスポーツカーファンから歓喜の声がSNS上にあふれている。伝説的モデルの「レガシーを引き継ぐ存在」として名付けられた車名だが、1980年代から90年代まで世界中のスポーツカーレースを牽引した『962/962C』を引き継ぐ番号だからに他ならない。登場から40年が経ち、いまや962/962Cの活躍をご存じないファンも多いはず。簡単ではあるが、おさらいしておこう。
今もスポーツカーレースの歴史を語る上で、欠かすことができない名車のひとつがポルシェ956/962/962Cだ。1982年、当時の国際自動車スポーツ連盟(FISA)が世界的な競技車両の規定を再編するなかで生まれたグループCカテゴリー向けに、ポルシェが作り上げたのが956だ。
このグループC登場以前のスポーツカーレースは下火だったが、ポルシェもレギュレーション策定に密接に関わったと言われるこの規定は、使用燃料総量が定められていた以外はエンジン形式は排気量等含め自由で、車両のサイズ以外も自由度が高かったことから、多くの参入者を呼び、後に盛り上がりをみせることになる。その黎明期、ポルシェ956は圧倒的な強さをみせシリーズをリードた。
2650cc水平対向6気筒ターボエンジン、アルミモノコックの956はスピード、高い信頼性とともに1982年のル・マン24時間で表彰台を独占。カーナンバーどおりの順番での1-2-3フィニッシュで、しばらくワークスカラーとして彩られたロスマンズカラーとともに、その圧倒的な強さは衝撃を残した。
その後、956はヨーストなどカスタマーチームにも販売されるようになり、当時のWEC世界耐久選手権を席巻。さらに日本にも全日本耐久選手権のために導入され、ニッサンやトヨタ、マツダといった日本メーカーの大きな目標となっていく。
文字どおり世界のレースを席巻した956だが、あまりの強さにFISAはさらに北米IMSAとの交流を目指した。そこでIMSAでの安全規定を満たすためにホイールベースを延長した改良版のモデルが962。IMSAに投入された後、WECでもIMSAに安全規定が合わせられ、グループC向けに投入されたのが962Cだった。
ル・マンでは1982年から6連覇(936/81で優勝した1981年を含めると7連覇)を果たすなど、956/962Cは1980年代のスポーツカーレースをリードした。日本でも1983年から89年まで6回のチャンピオンを得ている。また、合計で962/962Cは合計で150台以上が生産され、近代のレーシングカーとしては爆発的なヒットとなった。
1980年代後半からは、次第に強さ、速さを増すライバルを前に劣勢に立たされ、1988年にはジャガーXJR-9 LMにル・マンでの連勝を止められたほか、日本でも1990年にニッサンにタイトルを奪われることになった。しかし、日本でもJSPCの通算勝利数は956/962Cが最多。WEC/WSPCスポーツプロトタイプカー世界選手権ではその後もプライベーターに愛用され続けた。
コクピットにはイグニッションキーを備え、改造すればナンバー取得すら可能(日本にもナンバー取得車がある)であり、操作・整備マニュアルも存在する956/962Cは、ロードゴーイングバージョンへ改造されるケースもあったが、グループCがル・マンに出場できた最後の年である1994年には、当時台数が増え始めていたGT1クラスでの参戦を狙い、ポルシェのバックアップのもとダウアーがロードモデルとレースモデルの962 LMを製作し優勝。また、スーパーGTの前身であるJGTC全日本GT選手権の初年度にもタイサンから1台の962Cが出場し1勝を飾るなど、1990年代に至るまでサーキットの主役の一台であり続けた。
そんな名車だからこそ、今回の『963』というLMDh車両の名は、多くの反響を呼んでいる。「ポルシェ963は917、935、956、962、そして919ハイブリッドといった伝説的なモデルのレガシー(遺産)を引き継ぐべき存在だ」とポルシェのモータースポーツ副社長のトーマス・ローデンバッハは語っているが、963は販売も視野に入れるLMDh車両でもある。『962/962C』の名を引き継ぐ車両として相応しいものになるのか、2023年以降の活躍が気になるところだろう。
ポルシェ956/962Cについては、Racing on Archives Vol.10『ポルシェ956/962C』に網羅されている。ぜひご一読を。
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