初日から求められる限界の走り。週末のフォーマット変更で増加したライダーの負担/MotoGP前半戦振り返り
2023年シーズンのMotoGPは、スプリントレースが導入され、週末のフォーマット自体が変更になった。新しいフォーマットによるレースウイークは、これまでとどう変わったのか。シーズン前半戦を振り返る。
2023年の週末のフォーマットによって、ライダーたちの負荷が増している。決勝レースの半分の距離で行われるスプリントレースの展開はとても激しいもので、開幕戦から大きな転倒が発生した。ここで転倒したエネア・バスティアニーニ(ドゥカティ・レノボ・チーム)は、数戦の欠場を余儀なくされている。ただ、スプリントレース自体は、8戦の間に濃厚な激しさを残しながらも、開幕戦のような混沌とした展開から落ち着いてきたように見える。
むしろ気になるのは、2023年の週末のフォーマットによる、金曜日の転倒の多さだ。昨年まで、レースウイーク初日である金曜日のセッションは、午前中のフリープラクティス1、午後のフリープラクティス2、各45分で行われていた。それが2023年のフォーマットでは、午前中のプラクティス1が45分、午後のプラクティス2が60分に変更されている。
最も重要な変更は、予選Q1、Q2の振り分けが決まる対象セッションである。2022年までは、土曜日午前中のフリープラクティス3までを含めた3回のフリープラクティスの総合順位によって、Q1(総合11番手以下)、Q2(総合10番手まで)が決定されていた。ところが、2023年は金曜日のプラクティス1、2という2回のプラクティスのタイム結果によってこの振り分けが決まることになった。
昨年までは初日にセッティングを詰めてプラクティス3に最速タイムを出し、Q2進出を狙うのが2022年までの常だったが、2023年からはQ2にダイレクトで進出するために初日最初のセッション、プラクティス1から攻めなければならなくなった。MotoGPクラスのタイム差は恐ろしく拮抗しており、プラクティスではトップから15番手のライダーまで1秒以内にひしめくのは当たり前という現状のなかで、トップ10以内のタイムを目指さなければならない。
今季、スプリントレースばかりではなく週末を通して転倒が多いのは、こうしたフォーマットに理由があるのではないか、と考えられる。
■2022年を上回る金曜日の転倒回数
では、2023年の金曜日はどれほどライダーに限界の走りを強いているのか。ここで転倒回数のデータを参照したい。MotoGPクラスにおける、2022年シーズン前半戦(第1戦カタールGP〜第11戦オランダGP)の初日の転倒回数は合計51回。一方、2023年シーズン前半戦(第1戦ポルトガルGP〜第8戦オランダGP)は60回。2022年と2023年ではシーズン前半戦の開催数が異なり、2023年のほうが3戦少ないにもかかわらず、すでに金曜日の転倒回数は昨年を上回っているのである。気候やコンディションの違いがあるとはいえ、ライダーが初日からアグレッシブに走っているひとつの証左ではあるだろう。
5人のライダーが負傷し、そのうちポル・エスパルガロ(GASGASファクトリー・レーシング・テック3)とバスティアニーニが入院を余儀なくされた開幕戦のポルトガルGPで、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)はこう語っていた。
「1回のレースウイークで(最大)37ポイントを獲得できるから、みんな、できるだけポイントを獲得したいと思うわけだ。僕たちは限界までやる必要があるし、限界で走ることでミスをしやすくなる。誰かに当たったり、より速く走ったりしてね。ここは2日間のテストがあってすぐのレースということもあって、プラクティス1からみんな、限界で走っていたんだ」
また、スペインGPにワイルドカード参戦したKTMのテストライダー、ダニ・ペドロサも、初めて体験した新しいフォーマットのレースウイークについて同じような内容のコメントをしていて、さらにライダーたちの負担についても懸念を示していた。
「間違いなく、以前よりもクレイジーだよ。スプリントだけじゃなく、この週末のフォーマットがプラクティス1からハードに攻めさせるからね。それにレースが増えていることで、もっとアグレッシブになる」
「シーズンの終わりに、ライダーがどうなっているのかわからない。もちろんシーズンごとに、次第に若さをキープすることが難しくなっていくわけだけども。僕の見解としてはね。僕はすでに年齢を重ねたライダーだし、フレッシュなエネルギーを持った20歳の若者ではないけど……。少なくともレースでは、うまい折衷案を見つけてほしいと願っているよ。これまで、かなり怪我が多いからね」
こうした状況のなか、7月17日、グランプリ・コミッションにより週末のフォーマットの変更が発表された。これまでは金曜日の2回のプラクティスの総合タイムがQ1、Q2を分ける対象だったが、サマーブレイク開け最初のグランプリであるイギリスGP以降は、金曜日午後の「プラクティス」のタイムのみが対象になると変更されたのである。
これまでは攻めなければならなかった金曜日最初のセッションがQ1、Q2振り分けの対象から外れたことで、少なくともタイムを出さなければならない、というプレッシャーはなくなるわけだ。シーズン後半戦はライダーの増えすぎた負担が軽減され、過剰に濃縮された週末のなかで転倒によって負傷するライダーが減ることを願う。
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