スペイン人ライターのF1便り:レッドブルとホンダのタッグで新たな黄金時代の再現なるか
スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。2019年にタッグを組むことが正式に発表されたレッドブルとホンダ。レッドブル・ホンダが表彰台の常連となり、ひいてはコンストラクターズ上位2チームを脅かす存在となり得るのだろうか。
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過去数週間における最も大きなニュースのひとつは、誰もが予想していたことだったかもしれない。それは、2019年にレッドブルとホンダが組むという発表だ。すなわち、レッドブルの2019年のニューマシンRB15にホンダPUが搭載されるというのだ。良い知らせではないだろうか?
面白いことに、ホンダはF1のためのヨーロッパ拠点を置く際、レッドブルと同じ英国ミルトンキーンズを選んでいたので、協働するのに役立つだろうと以前から思っていたのだ。人生には時に面白い筋書きがあるものだ。
いずれにせよレッドブルとホンダの2019年の目標はタイトルを賭けて戦うことであり、追い上げていくにはハードワークが必要とされるだろう。両チームにとって、かつて直面したことのない最大の挑戦となるかもしれない。
今では、2019年のホンダPUがマクラーレン・ホンダ時代のパワーユニットよりはるかに良いものになることに疑いの余地はない。その点でこれまでとの比較は少々不公平だろう。しかし、もしホンダPUを搭載していた2017年マクラーレンのシャシーがチームが言うほど良いものであったなら、もっと良い結果が出せただろうことは確かだ。
昨シーズンの折り返し地点となるイギリスGP後、マクラーレン・ホンダの獲得ポイントはわずか2ポイントでランキングも最下位だった。このポイントはフェルナンド・アロンソがアゼルバイジャンGPで9位入賞した際に獲得したものであり、そのレースはトップ10以内からスタートしたドライバーのうち4名がリタイアするという、混乱したレースだった。
昨年の状況と比べ今年は第10戦イギリスGPが終わった時点で、トロロッソ・ホンダはトータルで19ポイントを獲得しており、バーレーンGPでは彼らのベストリザルトである4位につけた。ピエール・ガスリーが大混戦となった中団バトルを制し大量のポイントを獲得したのだ。
現在、トロロッソ・ホンダはコンストラクターズランキングで8位につけている。かなり大まかな見方をしても、昨年のマクラーレンのシャシーが今年のトロロッソより優れていたとは言えないだろう。仮に今シーズンの中団グループの戦いが、いかに激しくなっているかということを考慮したとしてもだ。
そして今のトロロッソ・ホンダの競争力を見ると、2019年ホンダPUを搭載するレッドブルの可能性に希望が持てるだろう。ホンダは2015年のF1復帰以来初めて、紛れもなく強力なチームと組むことになるからだ。
マクラーレンと戦った3年間は忘れてしまった方がいいだろう。彼らはメルセデス製パワーユニットを搭載していた2013年型シャシーも良くなかったし、表彰台を獲得できなかった。さらにまずかったのは、2014年型マシンだ。
向かうところ敵なしのメルセデス製パワーユニットを搭載していたウイリアムズは何戦にもわたる表彰台フィニッシュを飾り、コンストラクターズ選手権では3位、さらにオーストリアGPではフロントローを獲得する目覚ましい活躍だった。
一方のマクラーレンは同じメルセデス製PUを使用していたのに、シーズンの大部分においてメルセデスPU勢の中で最弱チームであり、同じメルセデスPUを搭載していたフォース・インディアになんとか勝つ体たらくだった。つまりホンダが復帰した2015年、マクラーレンは競争力のあるシャシーを作ることに関しては、長く技術力が衰えている状態だったのだ。
それでも、チームが非常にうまくやっていたことひとつある。それは、パブリックイメージへの対応だ。慎重に言葉を選んだ上に、公の場でホンダを攻撃したため、責任のほとんどはホンダ側にあるかのように思われたのだ。
マクラーレンには素晴らしく競争力の高いマシンがあるのに、ホンダの質の悪いパワーユニットが妨げになったというのだ。メルセデスのパワーユニットを搭載したら、彼らはレースで優勝していただろう……と。だがそれは間違いだった。しかし、いまだに彼らはそのようなイメージを与えている。
レッドブルはそうではないはずだ。彼らのマシンはある状況下なら、メルセデスやフェラーリに勝るとも劣らない速さを持っている。
レッドブルはエンジンパワーの点でルノーが妨げになっていると言っているが、それはマクラーレンのケースとたしかに似ている。しかしマクラーレンの場合は、ほとんどポイントを獲得できていない一方で、レッドブルは今シーズン優勝を飾っているので説得力がまったく違うのだ。
言い換えれば、レッドブルはより良いエンジンでさらなる躍進が期待できるということだ。彼らはメルセデスやフェラーリと対等に戦うのにまさに欠けているかもしれない、小さな改善をホンダに期待しているのだ。大きな疑問は、2019年にホンダはルノーを超えるか、ということだ。もちろん不可能ではないだろうし、ルノーを制してF1における3番目に優れたエンジンとなることは、十分妥当な目標だろう。
それでは2019年に向けて、レッドブルは何を達成できるだろうか?彼らは何を達成すべきか?F1の現在の状況を考慮すると、答えはシンプルだ。コンストラクターズ選手権で3位の座を維持し、表彰台に頻繁に上がることだ。そうしたことが達成できなかったら、期待外れとなるだろう。
そして物事がうまく運べば、レッドブル・ホンダとしての初勝利を狙うことになるだろう。しかし、結果自体もさることながら、ホンダのパワーユニットがトップ争いに挑むに足るものであるかを、このコンビが証明することが不可欠だ。
誰を非難しようが、このことはこれまで証明されていない。トロロッソとの移行の年を経て、2019年にホンダは全力を出すことになるだろう。だから彼らのゴールは、表彰台争いであるはずだ。
しかし、レッドブル・ホンダが2019年に3番目に優れたパッケージとなることは本当に可能なのだろうか?それを知るにはまだ時期尚早だろう。レッドブルが世界チャンピオンを目指せるマシンを作ることが可能であることは分かっている。彼らは過去にそうしてきた。
ホンダの真のペースはまだ分からないが、彼らがルノーのパフォーマンスレベルを出せないと考えるのは愚かなことだろう。
フランスGPで私はレッドブルの関係者に、「我々はマクラーレンのミスを繰り返すことはない」という話を聞いた。この言葉は本心から出たものだろう。レッドブルはトロロッソの1シーズン全体からだけでなく、マクラーレンの行動からも学ぶはずだ。それに彼らには十分に統合されたマシンを作るための、長くて生産的な時間がある。
フランスのポール・リカールで一番私の目を引いたことはなんだったと思うだろうか?レッドブルの有名な“エナジーステーション”と呼ばれるホスピタリティの中へ入った私は、レッドブルとホンダのスタッフたちがしばしば気さくな様子で話をしているのに気づいた。もちろん、現在のトロロッソの状況を考えればごく普通のことだが、このことはマクラーレンとは違う文化があることを示している。彼らの関係性は、マシンがコース上に登場する前に、すでに構築されているのだ。
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