【リーガ日本人展望】新天地ベティスに挑む乾貴士とヘタフェ2年目、柴崎岳の現状を分析
サッカーキング2018年8月17日(金)19時17分
左:ベティスへと移籍を果たした乾 [写真]=Getty Images 右:ヘタフェで2シーズン目を迎える柴崎 [写真]=ムツ・カワモリ/アフロ
2018 FIFA ワールドカップ ロシア(W杯)が幕を閉じてから1カ月、各国のリーグ戦が続々と開幕を迎えているヨーロッパのフットボール界。日本代表の決勝トーナメント進出の原動力となったベティスのMF乾貴士とヘタフェのMF柴崎岳が、リーガ・エスパニョーラで新たなシーズンをスタートさせる。
エイバルからベティスへと移籍を果たした乾に、ヘタフェで2シーズン目を迎える柴崎。昨シーズンはベティスが6位でヘタフェが8位と、共に周囲の予想を大きく上回る成績を残した。だが、ベティスはリーガだけでなくヨーロッパリーグ(EL)でも上位進出を目論むのに対し、ヘタフェは1部残留が現実的な目標と、それぞれが目指すゴールは異なる。とはいえ、乾にとっても柴崎にとっても勝負の1年になることは変わらない。
■強力なライバルとのレギュラー争いに挑む乾貴士
乾はエイバルで3年目を迎えた昨シーズン、リーグ戦38試合中34試合に出場して5得点と、いずれも過去最高の数字を記録。攻撃の中心としての活躍が認められ、クラブの格でエイバルを遥かに上回るベティスへの移籍を実現させた。これはキャリアにおける大きなステップアップだが、それと同時にかつてないほど厳しい競争に足を踏み入れたことも意味している。
ベティスに攻撃的なフットボールを浸透させたキケ・セティエン監督は、就任初年度の昨シーズンは4-3-3から3-5-2へと前半戦と後半戦でシステムを使い分けた。一方、プレシーズンでは新たに3‐4‐2‐1をメインに戦った。つまり、どのシステムが選ばれるにしても、乾がエイバルでプレーしてきたサイドハーフのポジションは存在しない。また、エイバルと同様に高い位置からのプレッシングを武器とするベティスだが、攻撃はボールポゼッションからのパスゲームが主体であり、これまでショートカウンターに慣れて来た乾には、対応力が試されることとなる。
プレシーズンそのままのシステムが採用されると、2列目でプレーすることになる乾。スタメンの座を掴むためには、主将の元スペイン代表MFホアキン・サンチェスを始め、アルジェリア代表MFリャド・ブデブズ、メキシコ代表MFアンドレス・グアルダード、元U‐21スペイン代表MFセルヒオ・カナレス、元スペイン代表FWクリスティアン・テージョといった強力なライバルとの定位置争いに勝たなければならない。
また、セティエン監督は2列目の選手に幅広い能力が求めているため、得意の左サイドだけでなく中央や右サイドでのプレーも磨く必要がある。さらに、持ち味の突破力だけではなく、ラストパスの精度やシュートの決定力も必要となって来る。すなわち、攻撃的MFとしてプレーの幅をどれだけ広げられるかが、乾がベティスでレギュラーを獲得するためのカギと言えるだろう。
■柴崎は守備面の懸念を打ち消すほどの活躍を攻撃面で見せられるか
一方の柴崎は、2部のテネリフェから1部のヘタフェへと移籍した昨シーズン、トップ下として開幕スタメンの座を掴むと、第4節のバルセロナ戦では敵地カンプ・ノウの観客の度肝を抜くスーパーゴールを決めた。ところが、この一戦で左足を骨折するという不運に見舞われると、戦線離脱中に状況が一変した。
ホセ・ボルダラス監督が行った4‐2‐3‐1から4‐4‐2へのシステム変更が大当たりし、FWホルヘ・モリーナとFWアンヘル・ロドリゲスの不動のツートップが誕生する一方、柴崎はレギュラーからサブへと立場が後退。負傷から3カ月後に復帰したものの、前線へのロングボールを多用するスタイルが一段と強調される中、不慣れなツートップの一角で起用されるなど、トップ下を置かないシステムで持ち味を発揮できない試合が続いた。
結局、リーグ戦38試合のうち出場は22試合、先発はわずか12試合と、ヘタフェでの初年度は不本意な結果に終わった柴崎。2年目の今シーズンも厳しい状況に置かれていることに変わりはないが、光明がない訳でもない。ボルダラス監督が昨シーズンの戦い方を継続することを受け、クラブは夏の移籍市場でセンターフォワードを増強。この結果、柴崎がツートップに入る可能性は無くなり、実際にプレシーズンではセンターハーフとして起用されている。
センターハーフの2つの椅子を巡っては、新加入のMFニコラ・マクシモビッチがファーストチョイス、これにMFマルケル・ベルガラおよびMFマウロ・アランバリが続き、柴崎は4番手に甘んじている。この評価の低さは、ボルダラス監督が柴崎のフィジカルの弱さを不安視しているからだと見られている。だが、柴崎はテクニックでは3人のライバルを上回っており、守備面の懸念を打ち消すほどの活躍を攻撃面で見せられれば、序列が逆転する可能性もある。出場機会が巡って来た際に、ゴールやアシストという目に見える形の結果が残せるかどうかが、レギュラー奪取の行方を占うことになりそうだ。
ともに高い壁を乗り越えなければならない乾と柴崎だが、それを可能とするだけの実力は備えている。事実、乾の新たなボスとなったセティエン監督は、「イヌイはもちろんだが、それ以外にも非常に気に入っている日本人選手がいる。その一人がシバサキだ」と両選手を絶賛している。乾には目の覚めるような鋭いゴール、柴崎には針の目を通すような正確なパスと、W杯で披露したような秀逸なパフォーマンスで目の肥えたファンを唸らせて欲しい。
なお乾と柴崎には、これまで未遂に終わって来たピッチでの競演にも期待が掛かる。昨シーズンもエイバルとヘタフェの一戦で、そのチャンスがあった両選手。しかし、ヘタフェのホームで行われた第15節では、先発出場した乾は63分で交代し、ベンチスタートとなった柴崎は74分からの出場と、惜しくも入れ違いになってしまった。また、エイバルのホームで行われた第34節では、二人ともベンチスタートから出場機会が無かった。今シーズンは第10節(10月27日もしくは28日)にヘタフェのホーム、第26節(来年3月2日もしくは3日)にベティスのホームでそれぞれ対戦があるが、是非とも二人揃ってスタメンに名を連ね、史上初となる1部での日本人対決を実現させて貰いたい。
文=北村敦
エイバルからベティスへと移籍を果たした乾に、ヘタフェで2シーズン目を迎える柴崎。昨シーズンはベティスが6位でヘタフェが8位と、共に周囲の予想を大きく上回る成績を残した。だが、ベティスはリーガだけでなくヨーロッパリーグ(EL)でも上位進出を目論むのに対し、ヘタフェは1部残留が現実的な目標と、それぞれが目指すゴールは異なる。とはいえ、乾にとっても柴崎にとっても勝負の1年になることは変わらない。
■強力なライバルとのレギュラー争いに挑む乾貴士
乾はエイバルで3年目を迎えた昨シーズン、リーグ戦38試合中34試合に出場して5得点と、いずれも過去最高の数字を記録。攻撃の中心としての活躍が認められ、クラブの格でエイバルを遥かに上回るベティスへの移籍を実現させた。これはキャリアにおける大きなステップアップだが、それと同時にかつてないほど厳しい競争に足を踏み入れたことも意味している。
ベティスに攻撃的なフットボールを浸透させたキケ・セティエン監督は、就任初年度の昨シーズンは4-3-3から3-5-2へと前半戦と後半戦でシステムを使い分けた。一方、プレシーズンでは新たに3‐4‐2‐1をメインに戦った。つまり、どのシステムが選ばれるにしても、乾がエイバルでプレーしてきたサイドハーフのポジションは存在しない。また、エイバルと同様に高い位置からのプレッシングを武器とするベティスだが、攻撃はボールポゼッションからのパスゲームが主体であり、これまでショートカウンターに慣れて来た乾には、対応力が試されることとなる。
プレシーズンそのままのシステムが採用されると、2列目でプレーすることになる乾。スタメンの座を掴むためには、主将の元スペイン代表MFホアキン・サンチェスを始め、アルジェリア代表MFリャド・ブデブズ、メキシコ代表MFアンドレス・グアルダード、元U‐21スペイン代表MFセルヒオ・カナレス、元スペイン代表FWクリスティアン・テージョといった強力なライバルとの定位置争いに勝たなければならない。
また、セティエン監督は2列目の選手に幅広い能力が求めているため、得意の左サイドだけでなく中央や右サイドでのプレーも磨く必要がある。さらに、持ち味の突破力だけではなく、ラストパスの精度やシュートの決定力も必要となって来る。すなわち、攻撃的MFとしてプレーの幅をどれだけ広げられるかが、乾がベティスでレギュラーを獲得するためのカギと言えるだろう。
■柴崎は守備面の懸念を打ち消すほどの活躍を攻撃面で見せられるか
一方の柴崎は、2部のテネリフェから1部のヘタフェへと移籍した昨シーズン、トップ下として開幕スタメンの座を掴むと、第4節のバルセロナ戦では敵地カンプ・ノウの観客の度肝を抜くスーパーゴールを決めた。ところが、この一戦で左足を骨折するという不運に見舞われると、戦線離脱中に状況が一変した。
ホセ・ボルダラス監督が行った4‐2‐3‐1から4‐4‐2へのシステム変更が大当たりし、FWホルヘ・モリーナとFWアンヘル・ロドリゲスの不動のツートップが誕生する一方、柴崎はレギュラーからサブへと立場が後退。負傷から3カ月後に復帰したものの、前線へのロングボールを多用するスタイルが一段と強調される中、不慣れなツートップの一角で起用されるなど、トップ下を置かないシステムで持ち味を発揮できない試合が続いた。
結局、リーグ戦38試合のうち出場は22試合、先発はわずか12試合と、ヘタフェでの初年度は不本意な結果に終わった柴崎。2年目の今シーズンも厳しい状況に置かれていることに変わりはないが、光明がない訳でもない。ボルダラス監督が昨シーズンの戦い方を継続することを受け、クラブは夏の移籍市場でセンターフォワードを増強。この結果、柴崎がツートップに入る可能性は無くなり、実際にプレシーズンではセンターハーフとして起用されている。
センターハーフの2つの椅子を巡っては、新加入のMFニコラ・マクシモビッチがファーストチョイス、これにMFマルケル・ベルガラおよびMFマウロ・アランバリが続き、柴崎は4番手に甘んじている。この評価の低さは、ボルダラス監督が柴崎のフィジカルの弱さを不安視しているからだと見られている。だが、柴崎はテクニックでは3人のライバルを上回っており、守備面の懸念を打ち消すほどの活躍を攻撃面で見せられれば、序列が逆転する可能性もある。出場機会が巡って来た際に、ゴールやアシストという目に見える形の結果が残せるかどうかが、レギュラー奪取の行方を占うことになりそうだ。
ともに高い壁を乗り越えなければならない乾と柴崎だが、それを可能とするだけの実力は備えている。事実、乾の新たなボスとなったセティエン監督は、「イヌイはもちろんだが、それ以外にも非常に気に入っている日本人選手がいる。その一人がシバサキだ」と両選手を絶賛している。乾には目の覚めるような鋭いゴール、柴崎には針の目を通すような正確なパスと、W杯で披露したような秀逸なパフォーマンスで目の肥えたファンを唸らせて欲しい。
なお乾と柴崎には、これまで未遂に終わって来たピッチでの競演にも期待が掛かる。昨シーズンもエイバルとヘタフェの一戦で、そのチャンスがあった両選手。しかし、ヘタフェのホームで行われた第15節では、先発出場した乾は63分で交代し、ベンチスタートとなった柴崎は74分からの出場と、惜しくも入れ違いになってしまった。また、エイバルのホームで行われた第34節では、二人ともベンチスタートから出場機会が無かった。今シーズンは第10節(10月27日もしくは28日)にヘタフェのホーム、第26節(来年3月2日もしくは3日)にベティスのホームでそれぞれ対戦があるが、是非とも二人揃ってスタメンに名を連ね、史上初となる1部での日本人対決を実現させて貰いたい。
文=北村敦
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