【コラム】中盤は柴崎&本田のインサイドハーフか…主将・長谷部は期待を背にチームを統率へ
サッカーキング2017年8月30日(水)23時25分
ひざのケガを乗り越えた長谷部が、オーストラリア戦への意気込みを語った [写真]=新井賢一
2018 FIFAワールドカップ ロシア出場権の懸かるアジア最終予選の天王山・オーストラリア代表戦(埼玉)が31日に迫った。29日にサウジアラビア代表が敵地でUAE代表に1-2と敗れたことで、この一戦で仮に日本が負けても、サウジアラビア戦で引き分け以上なら6大会連続W杯出場の切符は手に入る。
しかしながら、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「我々の状況は変わらない。イランで戦ったイラク代表戦(1-1)で収められなかった勝利を明日収めたい」とあくまで勝ちに行く強気の姿勢を口にした。選手たちは前日夕方、決戦の地・埼玉スタジアム2002で行われた最終調整に臨むにあたり、ミーティングでこう言われ、意思統一を図ったという。
その大一番に挑むメンバーだが、守備陣はイラク戦と同じGK川島永嗣(メス)、DF吉田麻也(サウサンプトン)らの出場が濃厚だ。しかし問題は前の方。特に中盤は基本であるダブルボランチのシステムなのか、3月のUAE戦(アルアイン)で採用したインサイドハーフ2枚を置く形か不透明なところだ。
ただ、「今回はホームゲームで(アウェイの時とは)少し形が変わる」という指揮官の会見での発言から読み解くと、逆三角形の攻撃的布陣で行く可能性が高い。実際、オーストラリアが3-4-2-1のシステムで、ボランチ2枚だと考えると、3枚のMFがいた方が支配率は高まる。相手にポゼッションサッカーをさせないためにも、そこの数的優位がポイントになりそうなのだ。
インサイドハーフに関しては、コンディションを重視して柴崎岳(ヘタフェ)を抜擢するという見方も強まっている。「相手の知らない選手もメンバーに入っている」というハリルホジッチ監督の言葉を踏まえると、これはかなり有力ではないか。もう1枚も井手口陽介(ガンバ大阪)の可能性が高いと見る向きもあるが、全く組んだことのない2人を並べるのはリスクが高すぎる。パチューカでこのポジションにトライしている本田圭佑がベターではないだろうか。
誰がインサイドハーフに入るにせよ、アンカーはキャプテン・長谷部誠(フランクフルト)以外にいない。「ハセさんがチームに与える影響力はズバ抜けている。『この人についていけば自然と正しい道に行っているんじゃないか』とと思わせてくれる」と昌子源(鹿島アントラーズ)がしみじみ話した通り、33歳のMFがもたらす精神的な安心感は凄まじいものがある。それに加えて、冷静な判断力と相手を未然につぶす力も際立っている。所属のフランクフルトでニコ・コバチ監督の下、リベロとして磨きをかけている視野の広さ、判断能力の高さをこの大一番で生かさない手はないのだ。
3月のひざ手術の後、代表からは5カ月も遠ざかっていたが、本人はコンディションの問題もないと言い切っている。
「ひざは問題ないですね。日に日に良くなっていますし、プレーする最中も気にすることのないくらいできている。非常に難しいケガだったけど、自分の頭の中には8月31日というのがずっと頭の中にありました。ただ焦ってぶり返してもよくないと思っていた。
リハビリの中でうまくいかない時期がラストスパートにもあった中で、明日に合わせるために無理してやってきた部分もある。だからこそ、この試合に対しての思いは非常に強いものがありますね」と長谷部は復帰までの紆余曲折を改めて振り返っていた。
この苦しみ、そして過去に2度W杯出場権を獲得した経験値があれば、多少急造感のある中盤のコントロールはできるはず。オーストラリアがアンジェ・ポステコグルー監督体制になってからポゼッションサッカーを志向していることを踏まえ、長谷部はさまざまな対策を思い描いている。
「フィジカル重視のサッカーよりはやりやすいかなと。ただ、自分たちはプレスをはめに行ったら、やっぱり蹴ってくるっていうのもありますし、無理して全員が蹴るかもしれない」とキャプテンは臨機応変な対応の重要性を強調する。最初は後ろから柴崎らアジア最終予選経験のない選手を動かし、組織的プレスを仕掛けていくだろう。逆三角形の中盤だと特にアンカーの脇は狙われやすいため、そのスペースをきちんと埋めることも徹底する必要がある。ただ、相手の出方によっては違った指示をしていかなければ、穴が生まれてしまう。そういう危険をいち早く察知し、素早く修正を図っていくことこそ、絶対的リーダーに課せられた責務なのだ。
「この最終予選は初戦のUAE戦で負けてから1試合も落とせない試合が続いた。本当にヒリヒリするような戦い、ホームのイラク戦も最後の最後で勝ったり、アウェイのUAE戦もそこで落としたもう厳しいって状況にもなった。そういう厳しい戦いの中、監督自身はいつもより落ち着いてるかなと。それに明日やりたいサッカーを選手にハッキリと伝えている。そこは非常に明確」と長谷部は話したが、キャプテンはその意図を的確に伝える「ピッチ上の指揮官」にならなければいけない。
卓越した統率力とリーダーシップを背番号17がいかんなく発揮し、連動した中盤を形成できた時、日本はワールドカップ切符を手にしているに違いない。
文=元川悦子
しかしながら、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「我々の状況は変わらない。イランで戦ったイラク代表戦(1-1)で収められなかった勝利を明日収めたい」とあくまで勝ちに行く強気の姿勢を口にした。選手たちは前日夕方、決戦の地・埼玉スタジアム2002で行われた最終調整に臨むにあたり、ミーティングでこう言われ、意思統一を図ったという。
その大一番に挑むメンバーだが、守備陣はイラク戦と同じGK川島永嗣(メス)、DF吉田麻也(サウサンプトン)らの出場が濃厚だ。しかし問題は前の方。特に中盤は基本であるダブルボランチのシステムなのか、3月のUAE戦(アルアイン)で採用したインサイドハーフ2枚を置く形か不透明なところだ。
ただ、「今回はホームゲームで(アウェイの時とは)少し形が変わる」という指揮官の会見での発言から読み解くと、逆三角形の攻撃的布陣で行く可能性が高い。実際、オーストラリアが3-4-2-1のシステムで、ボランチ2枚だと考えると、3枚のMFがいた方が支配率は高まる。相手にポゼッションサッカーをさせないためにも、そこの数的優位がポイントになりそうなのだ。
インサイドハーフに関しては、コンディションを重視して柴崎岳(ヘタフェ)を抜擢するという見方も強まっている。「相手の知らない選手もメンバーに入っている」というハリルホジッチ監督の言葉を踏まえると、これはかなり有力ではないか。もう1枚も井手口陽介(ガンバ大阪)の可能性が高いと見る向きもあるが、全く組んだことのない2人を並べるのはリスクが高すぎる。パチューカでこのポジションにトライしている本田圭佑がベターではないだろうか。
誰がインサイドハーフに入るにせよ、アンカーはキャプテン・長谷部誠(フランクフルト)以外にいない。「ハセさんがチームに与える影響力はズバ抜けている。『この人についていけば自然と正しい道に行っているんじゃないか』とと思わせてくれる」と昌子源(鹿島アントラーズ)がしみじみ話した通り、33歳のMFがもたらす精神的な安心感は凄まじいものがある。それに加えて、冷静な判断力と相手を未然につぶす力も際立っている。所属のフランクフルトでニコ・コバチ監督の下、リベロとして磨きをかけている視野の広さ、判断能力の高さをこの大一番で生かさない手はないのだ。
3月のひざ手術の後、代表からは5カ月も遠ざかっていたが、本人はコンディションの問題もないと言い切っている。
「ひざは問題ないですね。日に日に良くなっていますし、プレーする最中も気にすることのないくらいできている。非常に難しいケガだったけど、自分の頭の中には8月31日というのがずっと頭の中にありました。ただ焦ってぶり返してもよくないと思っていた。
リハビリの中でうまくいかない時期がラストスパートにもあった中で、明日に合わせるために無理してやってきた部分もある。だからこそ、この試合に対しての思いは非常に強いものがありますね」と長谷部は復帰までの紆余曲折を改めて振り返っていた。
この苦しみ、そして過去に2度W杯出場権を獲得した経験値があれば、多少急造感のある中盤のコントロールはできるはず。オーストラリアがアンジェ・ポステコグルー監督体制になってからポゼッションサッカーを志向していることを踏まえ、長谷部はさまざまな対策を思い描いている。
「フィジカル重視のサッカーよりはやりやすいかなと。ただ、自分たちはプレスをはめに行ったら、やっぱり蹴ってくるっていうのもありますし、無理して全員が蹴るかもしれない」とキャプテンは臨機応変な対応の重要性を強調する。最初は後ろから柴崎らアジア最終予選経験のない選手を動かし、組織的プレスを仕掛けていくだろう。逆三角形の中盤だと特にアンカーの脇は狙われやすいため、そのスペースをきちんと埋めることも徹底する必要がある。ただ、相手の出方によっては違った指示をしていかなければ、穴が生まれてしまう。そういう危険をいち早く察知し、素早く修正を図っていくことこそ、絶対的リーダーに課せられた責務なのだ。
「この最終予選は初戦のUAE戦で負けてから1試合も落とせない試合が続いた。本当にヒリヒリするような戦い、ホームのイラク戦も最後の最後で勝ったり、アウェイのUAE戦もそこで落としたもう厳しいって状況にもなった。そういう厳しい戦いの中、監督自身はいつもより落ち着いてるかなと。それに明日やりたいサッカーを選手にハッキリと伝えている。そこは非常に明確」と長谷部は話したが、キャプテンはその意図を的確に伝える「ピッチ上の指揮官」にならなければいけない。
卓越した統率力とリーダーシップを背番号17がいかんなく発揮し、連動した中盤を形成できた時、日本はワールドカップ切符を手にしているに違いない。
文=元川悦子
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