FIA F2イタリア:絶体絶命の状況から起死回生の2位。ランキング6位に浮上した松下信治
起死回生。スパのオールージュで大クラッシュを演じてから僅か5日後のFIA F2イタリアラウンドでポールポジションを獲得した松下信治は、喜びを爆発させてそう言った。レース1のスタートストールでまさかのノーポイントに終わってしまった絶体絶命の状況から、見事に生き返ったのだ。
「まさに起死回生のポールですね。とにかくずっとポールポジションが欲しかったんです。ここまで長かった。レース2で勝ったときよりも嬉しいです、だって一番速いっていうことですからね。今回はフリー走行からすごくクルマの調子が良くて走り始めの(プッシュの)余地が残っている段階から上のポジションにいたし、セットアップをどんどん詰めていって良くなったんで、今年はすごく乗りやすかったですね」
マシンのペース不足に苦戦し続けてきた今年のARTだが、松下とエンジニアがデータ分析と話し合いを重ね持ち込みセットアップを大きく見直したことでモンツァでは一変した。メカニックたちも大破したマシンの脚回りを全て交換する作業とモンツァへの移動を徹夜に近い状況でこなしたという。それだけに、パルクフェルメに戻って来た松下を出迎えるクルー全員の顔は晴れやかだった。
「アタックの1周目からプッシュしているけどしすぎてなくて『もうちょっと行けるかな?』くらいのちょうど良いくらいの走りができました。メカニックたちが徹夜でマシンを修復してくれたので、本当に感謝したいです」
土曜日の夕方に行なわれるレース1は、F1の予選が雨で2時間半も中断した影響で開催も危ぶまれたが、予定されていたサポートレースのうちF2のみが18時20分という日没ギリギリの時間に開催されることになった。
待っている間に精神状態を保つのは楽ではなかったという松下だが、問題はそれだけではなかった。今季から導入されたウエット時のスタンディングスタートが適用され、まずはセーフティカー先導でフォーメーションラップを行なってから各車がグリッドにつき、SC先導で走行した7周を減算して23週で行なわれることになった。
松下はポールポジションからスタートで出遅れてニック・デ・フリースにかわされ、なんとかアルテム・マルケロフは抑えて2位で第1シケインに入っていった。
「雨のスタートは初めてで、クラッチをそっとつながなきゃいけないのでいつもとは違ってシングルクラッチ(パドル1枚)でやったんですけど、それでもホイールスピンしてしまいました。もう少し練習しないといけないなと思いました。2位でターン1に入っていったんですけど、イン側にいた(アルテム・)マルケロフがニック(・デ・フリース)とぶつかって、バン!って飛んできたんで僕もそれを避けようとして外に逃げました」
その後もペースが伸びず、シャルル・ルクレール、オリバー・ローランド、ルカ・ギオットら選手権上位のドライバーたちに抜かれていってしまった。ウエットコンディションでマシンに自信を持って攻めることができなかったのが原因だった。
「ウエットコンディションに対しての自分自身のパフォーマンスがまだまだだと思いました。セッティングでもやりようはあったでしょうけど、それよりも僕自身のドライビングだと思います。正直、悔しいですけどね」
ピレリのF2用ウエットタイヤとヨーロッパの舗装路面の組み合わせでは、ウエットコンディションのグリップレベルはかなり低い。日本ではウエットでも速さを見せた松下だったが、これには苦戦させられた。
「違いはコーナリングスピードです。ブレーキを踏んでリリースしてからの(コーナリング中に)クルマを転がすスピードが彼らはかなり速かったように感じました。僕はすごくオーバーステアで、走り方のせいもあったんでしょうけど、攻めきれないというか。日本でレースをしていたときはウエットは速かったし自信もあったけど、こっち(FIA F2)ではウエットでは全然グリップしなくて滑りやすくて、それがしんどかった」
16周目にピットインしてウエットタイヤを履き替えると、チームによる内圧の調整が上手くいったのかフィーリングは向上しペースも上がった。そして5位を走行していた19周目、ピットアウト直後のローランドの左リアタイヤが外れてコース上にストップ。これでセーフティカー導入となり、全車の差が縮まった上でレースは残り2周で再開されることとなった。
まず再開直後の22周目の第1シケインで首位デフリースに2位ルクレールが猛攻を仕掛ける。ルクレールは止まりきれずにオーバーシュートし、デフリースも挙動が乱れたところを3位のギオットが抜いてトップへ。パラボリカ出口でギオットのインに並びかけたデフリースがそのまま並走して第1シケインにアプローチすると、今度はギオットがオーバーシュート。
その立ち上がりでルクレールがデフリースのアウトに並びかけると、両者が接触してコースオフし2台ともにパンクを喫してリタイアという大荒れの展開に。さらにレース後、ギオットにもコースカットに対する5秒加算ペナルティが科され、最後まで生き残った松下は2位でレースを終えることとなった。これは松下の狙い通りだった。
「途中からは生き残るべきレースだなと思っていたんです。スピンとかクラッシュをしないで走り切れば、絶対に誰かがミスをすると思っていたんで、最後まで諦めずに走りました。それが良かったですね。最後の2周は本当にクレイジーだったし。ドライコンディションならポールトゥウインを争うレースができたかもしれませんけど、それは次のチャンスに頑張ります」
7番グリッドからの日曜レース2でも、スタートで10番手に出遅れた。
「いつも通りスタートしたんですけど、クラッチのバイトが全然合っていなくてパドルを離してもクラッチが本来のポイントで繋がらなくてクルマが全然進んでいきませんでした」
2周目にはジョーダン・キングとのバトルでパラボリカと第1シケインをオフして12位に下がる。手を挙げて怒りを表わしたが、失ったポジションは帰ってこない。
「サイドバイサイドでずっと外に追いやられて、パラボリカのアウト側に縁石が追加されたんですけど、そこにバンって乗って外側の緑色のところまで押し出されたんです」
しかしやはりドライコンディションではマシンのペースは悪くなかった。リアタイヤのデグラデーションに備えてアンダーステア寄りのセットアップにしていたため、レース中盤以降はルクレールやマルケロフとバトルを演じ、彼らよりも前の7位まで挽回してフィニッシュしてみせた。
「今日のルクレールはそんなに速くなかったし、僕の方が速かったですね。今日は前のグリッドが遅いドライバーばかりだったんで、普通にスタートできていればもっと楽に抜いていって結構(上位に)行けたと思います。もっと獲れたポイントがあったし、もったいなかった」
これで計24点を追加しランキング6位。3位のマルケロフとは37点差になった。残すはヘレスでの単独開催と最終戦アブダビのみ。可能性は大きくないが、自分の最大限の走りをしたいと松下は意気込みを語る。
「普通に行けば(ランキング3位獲得は)厳しいですね。僕がまたポールポジションを獲ってレース1で良い走りをしてレース2もポイントを獲れれば可能性はありますけど、なおかつ相手が自滅してくれないといけないから。でも今回のポールで自信もついたし、残りの2レースはポールを獲ることを意識して戦いたいと思います。ポールからスタートすれば(レース展開の)全てを変えてくれますから」
好走すればこそ流れが自分に向いてくる。モンツァの週末が教えてくれたのはそういうことだ。残り2ラウンドでも松下のスーパーライセンスをかけた戦いは続く。
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