レッドブル・ホンダ分析:DRSトレイン、PUトラブル、接触&ペナルティ。苦難続きで優勝争いに絡めず
1周5.793kmのコースのじつに84%もの距離をアクセル全開で駆け抜けるモンツァは、一見オーバーテイクしやすいサーキットのように思えるが、意外とオーバーテイクが難しいサーキットでもある。
それはイタリアGPでは1ストップになることが多く、そうなるとタイヤの状態が同じになって、なかなかラップタイムに違いが出ず、オーバーテイクが仕掛けられないからだ。
こうなると、レースでは1列の隊列ができ、たとえDRS圏内に入っても、前を走るマシンもDRSを使用するため、抜きどころでDRSを使ったアドバンテージを得にくくなる。これを、レース関係者は『DRSトレイン』と呼んでいる。
第8戦イタリアGPのレースで、レッドブル・ホンダの2台を苦しめたのが、まさにこのDRSトレインだった。
予選5番手となったマックス・フェルスタッペンと予選9番手となったアレクサンダー・アルボンは、スタートでできるだけポジションを上げたいところだった。
しかし、2人とも逆にポジションを下げてしまう。フェルスタッペンはブラックアウトの瞬間のリアクションは悪くなかったが、クラッチをつないだ瞬間にホイールスピンを喫して7番手に後退。アルボンは1コーナーでピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)に押し出される形となり、1周目に15番手まで大きくダウンした。さらにアルボンはその後、1コーナーのブレーキングエリアででロマン・グロージャン(ハース)に幅寄せしてしまい、5秒のタイムペナルティを科せられてしまう。
レースはその後、セーフティーカーが2回出て、赤旗となるなど荒れた展開となったが、そのチャンスをレッドブル・ホンダが掴むことはなかった。
赤旗後の再スタートで、エンジンに問題が発生したフェルスタッペンは、「どうにか解決しようと試みたけど解消されず」(フェルスタッペン)にピットインしてリタイア。一方「スタート直後の1コーナーでの接触でフロアにダメージを負ってダウンフォースを失った」というアルボンはグリップ不足に悩まされた。これはクリスチャン・ホーナー代表によれば、「レース中、ラップあたり1秒ほどのタイムを失う」という甚大なもので、15位でフィニッシュするのが精一杯だった。
しかし、優勝したガスリーのピットストップ前のポジションはフェルスタッペンの4つ後方の10番手だった。フェルスタッペンのパワーユニットにトラブルが起きていなければ、ピットレーン閉鎖中にピットインし、10秒のストップ・アンド・ゴーペナルティが科せられて最後尾に下がったルイス・ハミルトン(メルセデス)に代わって、優勝するチャンスはあったのだろうか。
結論はノーだ。2回セーフティーカーが導入され、その直後に赤旗が出されたこの日のレースをフェルスタッペンが制するためには、1回目のセーフティーカーが導入される前にピットインしてタイヤを交換するか、赤旗が出るまでステイアウトするかのどちらかだった。この前者に該当するのが優勝したガスリーで、後者が3位のランス・ストロール(レーシングポイント)だった。
つまり、この日のレッドブル・ホンダは負けるべくしてレースに負けたのだった。だから、レース後、フェルスタッペンはこう言うしかなかった。
「このレースのことは忘れて、次の週末に切り替えよう」
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