【ライターコラムfrom仙台】アジア大会の経験を糧に…板倉滉が挑む、新たな競争
サッカーキング2018年9月9日(日)9時6分
アジア大会ではキャプテンマークも巻いた板倉 [写真]=Getty Images
「びっくりしました。入れ違いになってしまったけれど、同い年の仲間がこうして大きな舞台に行くと聞いて、うれしいし、自分も頑張りたい」
板倉滉が約3週間ぶりにベガルタ仙台に戻ると、チームメイトの一人だった西村拓真がロシアの強豪、CSKAモスクワに移籍していた。板倉は仙台を離れている間もチームの状況はよくチェックしていたし、仲間との連絡も取っていた。しかし久しぶりに戻ったチームには、多くの変化があったと感じたという。
その板倉自身も、インドネシアの地にいる間に貴重な経験を積み、成長を遂げていた。8月12日から9月3日まで、彼はU-21日本代表の一員として、第18回アジア競技大会の男子サッカー競技に参加していた。森保一監督が指揮するこの代表チームにおいて、彼は主力選手として活躍。準優勝という結果を得た。
8月3日にこの代表チームに選出されたとき、板倉は悩みもあったという。当時は仙台がJ1リーグで躓いていた時期。だが「仙台でも(試合に)出たい思いは強い。でも選ばれたら代表でいいプレーをしたいし、その間の仙台は仲間を信じて、自分は自分で結果を出します」と決意した。
1997年1月27日生まれの板倉は、早生まれの“東京五輪世代”。2020年の主力選手として周囲の期待も集まるし、自身もその場に立つことを目指している。しかし彼は、そこだけを意識しているわけではない。ロシア・ワールドカップが開催されていた頃、板倉は「今回のW杯でA代表に入れなかった悔しさもあるんです。“東京経由、カタール行き”というより、A代表にも、東京五輪代表にも選ばれるようになりたい。実際にW杯では、自分と同じか、年下の選手も活躍しているわけですから」と話していた。森保監督がA代表とU-21日本代表監督を兼任していることも「大きなチャンス」ととらえている。
その一方、年代別日本代表で経験を積んでいる彼も、自分をその世代の“常連”とは考えていない。「常に危機感しかないですよ。それぞれの場で結果を出さないと、次はないと思っています」。その心構えとともに試合を重ね、経験を糧にし、成長を続けてきた。
今回のアジア大会でもまた、板倉は得がたい経験をした。中一日という厳しいスケジュールでの戦いが続き、相手が上の年代ということも多かった。最も印象に残った試合は「やはり決勝戦の韓国戦です。本当に、悔しかったので」とのこと。力強い守備を見せる彼も耐える時間が続き、延長戦までもつれ込んだ末に敗戦。「苦しかったし、プレミアリーグでやっているような個人能力の高い選手もいる相手でした。でも、勝てる試合だったと思います。この悔しい気持ちを忘れてはいけない」。今回の経験もまた糧にして、板倉はその先を見据える。
そして、未来への道を切り開くには、現在の場所でベストを尽くす必要があることを、板倉は強く意識している。帰ってきた仙台は、西村の移籍のほかにも変わっていたことが多々あった。板倉が不在だったリーグ戦と天皇杯の公式戦計5試合で、仙台は4勝1敗という成績を出した。リーグ戦の順位も暫定6位に上がっていた。今季から仙台に加わった板倉が仙台のチーム力を大きく上げる力となっているのは事実だが、その彼でも簡単にはチーム内競争を勝ち抜けないくらい、今の仙台はチームの総合力が少しずつ積み重なっている。
9月5日、復帰初日の練習を終えて「またみんなとやれて楽しかった」と笑顔を見せた板倉だが、今後の仙台での戦いについて聞かれると、再び表情を引き締めた。「ここからまた、勝負だと考えています。良い結果を出すことができるように、アピールしたい。やはり、選手は試合に出てなんぼですから」。新たな競争に身を投じ、板倉はこれからも成長を続ける。
取材・文=板垣晴朗
板倉滉が約3週間ぶりにベガルタ仙台に戻ると、チームメイトの一人だった西村拓真がロシアの強豪、CSKAモスクワに移籍していた。板倉は仙台を離れている間もチームの状況はよくチェックしていたし、仲間との連絡も取っていた。しかし久しぶりに戻ったチームには、多くの変化があったと感じたという。
その板倉自身も、インドネシアの地にいる間に貴重な経験を積み、成長を遂げていた。8月12日から9月3日まで、彼はU-21日本代表の一員として、第18回アジア競技大会の男子サッカー競技に参加していた。森保一監督が指揮するこの代表チームにおいて、彼は主力選手として活躍。準優勝という結果を得た。
8月3日にこの代表チームに選出されたとき、板倉は悩みもあったという。当時は仙台がJ1リーグで躓いていた時期。だが「仙台でも(試合に)出たい思いは強い。でも選ばれたら代表でいいプレーをしたいし、その間の仙台は仲間を信じて、自分は自分で結果を出します」と決意した。
1997年1月27日生まれの板倉は、早生まれの“東京五輪世代”。2020年の主力選手として周囲の期待も集まるし、自身もその場に立つことを目指している。しかし彼は、そこだけを意識しているわけではない。ロシア・ワールドカップが開催されていた頃、板倉は「今回のW杯でA代表に入れなかった悔しさもあるんです。“東京経由、カタール行き”というより、A代表にも、東京五輪代表にも選ばれるようになりたい。実際にW杯では、自分と同じか、年下の選手も活躍しているわけですから」と話していた。森保監督がA代表とU-21日本代表監督を兼任していることも「大きなチャンス」ととらえている。
その一方、年代別日本代表で経験を積んでいる彼も、自分をその世代の“常連”とは考えていない。「常に危機感しかないですよ。それぞれの場で結果を出さないと、次はないと思っています」。その心構えとともに試合を重ね、経験を糧にし、成長を続けてきた。
今回のアジア大会でもまた、板倉は得がたい経験をした。中一日という厳しいスケジュールでの戦いが続き、相手が上の年代ということも多かった。最も印象に残った試合は「やはり決勝戦の韓国戦です。本当に、悔しかったので」とのこと。力強い守備を見せる彼も耐える時間が続き、延長戦までもつれ込んだ末に敗戦。「苦しかったし、プレミアリーグでやっているような個人能力の高い選手もいる相手でした。でも、勝てる試合だったと思います。この悔しい気持ちを忘れてはいけない」。今回の経験もまた糧にして、板倉はその先を見据える。
そして、未来への道を切り開くには、現在の場所でベストを尽くす必要があることを、板倉は強く意識している。帰ってきた仙台は、西村の移籍のほかにも変わっていたことが多々あった。板倉が不在だったリーグ戦と天皇杯の公式戦計5試合で、仙台は4勝1敗という成績を出した。リーグ戦の順位も暫定6位に上がっていた。今季から仙台に加わった板倉が仙台のチーム力を大きく上げる力となっているのは事実だが、その彼でも簡単にはチーム内競争を勝ち抜けないくらい、今の仙台はチームの総合力が少しずつ積み重なっている。
9月5日、復帰初日の練習を終えて「またみんなとやれて楽しかった」と笑顔を見せた板倉だが、今後の仙台での戦いについて聞かれると、再び表情を引き締めた。「ここからまた、勝負だと考えています。良い結果を出すことができるように、アピールしたい。やはり、選手は試合に出てなんぼですから」。新たな競争に身を投じ、板倉はこれからも成長を続ける。
取材・文=板垣晴朗
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