【トロロッソF1山本尚貴】木曜前日に語った周囲の期待と感謝と重圧「限られた時間でどれだけマシンを自分のものにできるか」
いよいよF1初走行が前日に迫ったトロロッソ・ホンダの山本尚貴。幼少の頃からの憧れやこのタイミングでF1マシンで鈴鹿を走ることの意味、そしてサーキットに来てからのチームとの作業などF1ドライバーとしての初日の感想を会見で語った。
水曜日に鈴鹿サーキット入りしたという山本尚貴。木曜日からF1ドライバーとしてチームの仕事をこなす1日となった。まずはチームとミーティングを行い、その後、9時すぎにはサーキット(トラック)ウォークへ。その後、レーシングスーツに着替えてF1公式用の写真撮影に向かい、その後はメディアへの対応と、まさにF1らしい分単位のスケジュールをこなしていくことになった。
「いくら時間があっても、頭の数があっても足りないくらい。鈴鹿の経験はたくさんあるのですけどF1の実走の経験はまったくないので、できる限りの準備を一生懸命しようと頑張っている最中です。楽しんではいるんですけど、本当に時間が過ぎるのがあっという間という感じです」と、初日の感想を語った山本尚貴。
今回のF1初ドライブにあたって、F1への憧れもストレートに表現した。
「僕は初めて鈴鹿でF1を見たのは1992年でした。小さい頃からレースが好きで、アイルトン・セナに憧れて、92年の4歳の時に初めて鈴鹿に来てシケインで見ていたんですけど、残念ながらセナは3周でリタイアしてしまった。目の前を3回しか通らなかったんですけど、そこからこのモータースポーツの頂点であるF1マシンに乗ってみたいとずっと憧れ続けてレースを頑張ってきたので、本当に明日はドキドキする気持ちがあります」
「今はついに夢の舞台に立てるということで、この舞台を用意して下さった関係者のみなさま、トロロッソのチームのみなさま、レッドブルの方々、そして応援してくれるファンのみなさまに、これまでの応援をありがとうございましたと伝えたいですし、明日の90分間、みなさまの前でいい走りができるように頑張りたいと思います」と山本。
鈴鹿は山本にとって得意中の得意とも言えるサーキット。それでも初日、まずはトラックウォークから始めたが、F1仕様のサーキットは山本に新鮮な印象を与えるとともに、二次的な効果が大きかったようだ。
「まずはサーキットが綺麗でしたね(笑)。看板もF1用にリニューアルされていますし、縁石と縁石の外側のランオフエリアも人工芝も綺麗に綠色にペイントされていて、すべてが本当に新しいサーキットみたいな感じで、いつもこの感じで走れたらいいなと思いました(笑)。そういったところもすべて新鮮に見えました」と、まずはF1仕様の鈴鹿の印象を語った山本。
「国内で走っているからトラックウォークをしなくていいわけではないんですけど、コース自体は1年のなかでそこまで大きく変わることもない。今はトラックウォークをしている選手はあまり多くはいないですし、特に僕はこの鈴鹿を良く知っているので、今さらこのコーナーが、このバンクがとかの確認作業よりも、改めて自分と一緒に仕事をするチーフエンジニア、パフォーマンスエンジニア、PUエンジニアとみんなでトラックウォークの一緒の時間を過ごすことができたのが大きいですね」
「1周約6kmの時間をずっと、クルマのことについて話ながら歩くことができたというのは、一番ゆっくりと時間を過ごすことができたなと感覚的に思います。やはりパドックで過ごしていると何かざわざわしている感じがあるので、唯一、レースのことに集中できる瞬間がトラックウォークの時間だったなと思います」と、F1ならではの喧噪と、チームと有意義な時間をできたことを強調した山本尚貴。
■かつてのチームメイト、ガスリーのクルマをシェアすることでポジティブな面を強調する山本尚貴
明日の走行はTEAM MUGEN時代のチームメイト、ピエール・ガスリーに代わっての走行になることも、ポジティブな面が多いようだ。
「まさかTEAM MUGENで一緒に走っていたときに、2年後、鈴鹿でF1のマシンをシェアすることになるなんて、たぶん僕だけじゃなくて誰も思わないでしょうね。でも、考えてみればそこから何か、いろいろと始まっていたのかな」と、まずはガスリーとの縁を懐かしがる山本。
「彼のドライビングスタイルも分かっていますので、FP1の限られたラン数のなかで自分好みにセットアップするというよりは、今チームが持っているベースのセットアップでまずはF1を理解するということが一番だと思います。そこからセットアップをガチャガチャ変えることよりも、そのあとピエールが乗ることも考えないといけない。彼はどちらかというとアンダーステアなステアリングのクルマを好むので、そういうことも分かっているので、今のクルマの状況だと、ピエールはうまく走れそうだとか走れないとか、そういう方向性の確認はまったく知らないドライバーよりはできるかもしれないですね」と山本。
「チームが大切に作ってきたクルマなので、壊すわけにはいかないですけど、レーシングドライバーはリスクを背負いながらギリギリのところを攻めていかないといけない。自分が置かれている状況を考えれば、当然、クルマを壊すわけにはいかないけど、みなさまに求められていることもよく分かっている。僕も本当に思い出作りでF1を運転することだけだったら全然、普通に運転はできるんですけど、そのためにここに来ているわけではない」と、周囲の期待も痛いほど感じている山本。自身の具体的なプランも頭の中に描けている。
「90分という限られた時間でタイヤのセット数も決まっていますし、チームが作ってくれているプログラムもあるんですけど、リクエストさせてもらって、ちょっとでも自分がクルマを習熟できるようなワーク(メニュー)を作ってもらいました。時間がたくさんあって練習すれば速く走れるようになるドライバーはたくさんいると思うんですけど、ただ、そうも言っていられない。この限られた時間のなかでどれだけ習熟度が高くて、どれだけマシンを自分のものにできるのかということがドライバーとしてひとつ求められていると思っているので、それが明日、できるのかできないのかは自分の実力だと思います」
31歳のベテランドライバーとして、やるべきことは百も承知している山本尚貴。
「とは言っても、こんな機会、なかかなもらえるものではないので、みなさんに感謝しつつ思い切って楽しみたいなと思っています。想いはいろいろいっぱいあるんですけど、結果がすべてなので走りで応えたいと思います」
この初日の印象からはプレシャーよりも純粋にF1で走る喜びを感じてる様子が見られた山本尚貴。これまで国内では小細工とは無縁で、考え抜いて正攻法で突き進む姿が山本尚貴の走りだった。明日のF1初走行も、悔いのない山本尚貴らしい走りでF1関係者を唸らしてほしい。
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