全日本ロード:清成龍一失格の要因はブレーキ冷却用の“エアダクト”装着と判明/第4戦もてぎ レース2
10月18日(日)、栃木県のツインリンクもてぎで開催された2020年MFJ全日本ロードレース選手権シリーズ第4戦スーパーバイクレース in もてぎのJSB1000クラス レース2で3位フィニッシュした清成龍一(Keihin Honda Dream SI Racing)に失格の裁定が下された。失格の理由はブレーキ冷却用のエアダクトを装着してレース2に出場したためだ。
ドライコンディションで行われたJSB1000クラスのレース2で、オープニングラップに4番手につけた清成は加賀山就臣(Team KAGAYAMA)を2周目にかわして3番手に浮上。その後は2番手の中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)に追いついて2位争いを演じたが、一歩届かず3位でフィニッシュ。清成は暫定表彰台に上り、その足でトップ3会見に出席した。
この時点では15時55分に発行された暫定結果をもとに3位と確認されていたが、17時35分に発行された暫定結果の改訂版では清成に失格の裁定が下された。そして暫定結果の改訂版リザルトが変わることなく18時05分に正式結果として認められた。
結果表の順位変動のためリザルトが改訂されたわけだが、リザルト下部には清成が失格になった理由について以下のように記されている。
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※ゼッケンNo.17
ゼッケンNo.75からゼッケンNo.17の車両に対して抗議が提出され、車両の検査の結果、
車両違反(国内競技規則 付則8 7-9項違反)が確認された。
そのため、大会審査委員会はゼッケンNo.17に対して失格の裁定を下した。
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抗議による車両の検査で清成が駆るホンダCBR1000RR-Rに車両違反が確認されたことが失格の要因になるが、その車両違反についてMFJ国内競技規則2020を見ると付則8 JSB1000技術仕様の7-9項に定められた、ブレーキにあたることがわかる。
また、リザルトだけではブレーキのどこに違反があったのかがわからないが、20日(火)に株式会社ケーヒンが第4戦もてぎのレースレポートを公開して、ブレーキ冷却用の『エアダクト』装着に問題があったことが明らかになった。
では、11個の条文が記されている付則8 7-9項のブレーキについての規則だが、ここにはエアダクトについての記述はない。しかし、MFJ国内競技規則2020の付則8の技術仕様には「全ての車両は全ての要素において本技術仕様に適合していなくてはならない。本規則に明記されていない、または許可されていないものについては一切改造、変更は許可されない。だし公認された車両が本規則の仕様に合致しない場合は、公認車両の仕様が優先される。」という原則が付則8のはじめに記されている。
そのため、付則8 7-9項に定められている『ブレーキ』において、付則8の原則である改造『オリジナル(車両公認時に装着されたもの)のパーツに対し切削、追加、研磨を行う行為』を行ったことが問題だったことがわかるだろう。
■事前の車検で車両違反が確認されなかったわけとは
次に、事前に行われる車検で車両違反の確認ができたのではないかということについてだが、今回においては不可能だっただろう。
編集部調べとなるが、清成は第1戦SUGOと第3戦オートポリスではエアダクトを装着していない。そして第4戦もてぎでは16日(金)のA.R.T合同走行が午前と午後の2回あったが、午後のセッションで初めてエアダクトを装着した。その後エアダクトを装着したセッションは18日(日)午前のウォームアップ走行、そして失格となったレース2の3回だ。
公式車検は16日(金)に行われた午前と午後のA.R.T合同走行の間、10時〜12時に行われてた。この公式車検は年間出場チームのART(Association of Road racing Teams)会員である場合は、シリーズ第1戦のみ通常車検だが、それ以降はシリーズ途中で車両変更およびTカーの追加登録をする場合を除き車検の簡素化が受けられることになっている。
この簡素化された車検による見落としもあり得たが、清成はまだエアダクトを装着していない9時55分〜10時35分の午前の走行後に車検を受けていることになるため、その段階では見つからず、車検後の午後にはじめてエアダクトを装着して2回目のセッションに挑んだのだろう。
また、翌日はウエットコンディションとなったため、予選とレース1ではエアダクトを装着せず、ブレーキングに負荷がかかるツインリンクもてぎのドライレースとなった18日(日)のウォームアップ走行とレース2で再度投入した。
そして決勝レース後の再車検は、車両保管順位が1〜6位、分解検査対象順位が1〜3位となる。そのため、レース2で一時3位表彰台を獲得した清成もその対象となり、他のエントラントから抗議が提出されこともあって車両の検査が実施されたことで車両違反が確認されたのだろう。
まとめると、16日(金)の車検時や、チャンピオンシップに関係する翌17日(土)の予選とレース1にはブレーキ冷却用のエアダクトを装着していないためリザルトの改訂はなかったが、ドライコンディションとなったレース2で規則に定められていないパーツを装着したことがレース後に発覚して失格の裁定が下されたことになる。
この件についてKeihin Honda Dream SI Racingの伊藤真一監督は株式会社ケーヒンのレースレポート内で「決勝レース2は清成選手が中須賀選手とバトルをしてくれたことで、ハード面やライダーとしての課題など、さまざまなことが見えたレースになりました。今回のレースでヤマハに追いついたとは思っていませんが、追いつくための貴重な課題を得ることができました。しかしチームの認識不足で、付けてはいけないパーツを装着していたと指摘され、失格という判定が出てしまったことを申し訳なく思っています」と謝罪のコメントを残した。
「チームとして、真摯に受け止め改善してまいります。サポートしていただいている皆さんにも大変申し訳なく、残念な報告となりました。このようなことが起きないように気を引き締めます。最終戦鈴鹿では、喜んでいただける結果を届けられるようにチーム一丸となって挑んでまいります」
また、ライダーの清成も「レース2は中須賀選手の後ろにつき、パスするタイミング、場所を探りながら周回を重ねましたが抜くことができないままチェッカーとなりました。まだまだ速さが足りない部分がありますが、ここまで近くに迫れたことは収穫でした。チームと協力してさらにマシンを仕上げて競争力を上げて行きたいです」とコメント。
「3位で表彰台に登ることができましたが、最終的には失格となってしまいました。自分を支えてくれたスタッフ、チームの落胆を見ると残念な気持ちが大きくなりますが、気持ちを切り替えて最終戦に挑み、今年の集大成となるレースをしたいと思います」
そしてKeihin Honda Dream SI Racingはこの判定を受け入れており、ルールをあらためて見直し認識をあらたに参戦することを誓っている。
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