F1第17戦木曜会見:フェラーリを引っ張るルクレールは「難しい時期を経ていっそう強くなった」とハミルトンが評価
2021年F1第17戦アメリカGPの木曜会見の第2組は、シャルル・ルクレール(フェラーリ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)の組み合わせだった。ところが壇上に座っていたのは、ルクレールだけ。司会者は特にハミルトン不在の理由を説明せず、「ルイスはまもなく来るはずです」とだけ前置きして、ルクレールひとりの会見が始まった。
ルクレールは10月16日に、24歳の誕生日を迎えたばかりだった。
──誕生日おめでとう。どんなふうに祝ったのですか。
ルクレール:家族や友人に、レストランで祝ってもらった。普段なかなか会えないし、シーズン終盤の今は、特に留守が長くなる。だからよけいにうれしかったね。
そしてすぐにアメリカに向かったが、出発の際にハプニングに見舞われてしまう。
ルクレール:ニース空港で直行便に乗ろうとしたら、NIEビザが拒否されてしまってね。それでその便に乗りそびれてしまった。
NIEビザというのは、新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、厳しい入国規制が敷かれているアメリカで、優先的に入国できる例外ビザのことだ。F1アメリカGPの参加者たちは、事前にそのビザを用意していた。
ルクレール:でも何故か僕は拒否されてしまい、ニューヨークからアメリカに入るはめになったんだ。でも初めて訪れたニューヨークは、素晴らしかったよ。そこから今度はミルウォーキーに飛んで、NBAの開幕戦を観戦した。結果的には、たくさんの楽しい経験ができた。実際には僕のNIEビザには何も問題がなくて、でもニース空港で僕を担当した係官が、「これは無効だ」と言ってね。その後自分の過ちに気付いたけど、その時にはもう予定した飛行機が飛んだ後だった。
そこからは今週末の抱負、0.5ポイント差しかないカルロス・サインツとのチームメイトバトルの話などをしているところに、ようやくハミルトンが登場した。ドレッドヘアを真上に束ね上げた、いつも以上にぶっ飛んだヘアスタイル。司会者が、「このサーキットでは、他の誰よりも成功してますね」と切り出すと、「遅くなって申し訳ない」と、まずは遅刻のお詫びから始まった。
ハミルトン:実は部屋のドアがロックされて、開かなくなってしまったんだ。しばらく出られなくてね。
そう言って、笑い出すハミルトン。隣のルクレールは、「そりゃ、すごいね」と半分呆れた感じだった。
■ハミルトン、アメリカでの複数開催にも前向き「1回だけというのは少なすぎる」
ハミルトンはこれまでアメリカGPを6度制しているだけでなく、インディアナポリスとCOTA(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)の両方で勝っている唯一のドライバーでもある。そして彼の強いアメリカ愛は誰もが知るところであり、一方でハミルトンはこの国だけでなくメキシコでも大人気だ。
ハミルトン:とにかくオースティンは町も美しいし、サーキット自体もファンの応援も最高だ。何もかもが素晴らしいよ。2年ぶりの、しかも観客を入れての開催が、本当に待ち遠しかったよ。
そんな大好きな国なのだから、部屋に閉じ込められるぐらいなんでもないというところか。アメリカでは来年フロリダでふたつ目のグランプリが予定され、さらに2023年にはラスベガスGP復活の噂もある。もちろんハミルトンは、これにも肯定的だった。
ハミルトン:これだけ大きな国なんだから、レースが1回だけというのは明らかに少なすぎるからね。
ここでイギリス人ジャーナリストから、ちょっと微妙な質問がハミルトンに飛んだ。
──フェラーリ移籍後のこの3年間のルクレールを、あなたはどう評価していますか。フェラーリが彼を獲得したことは、本当に正解だったのだろうか。
字面だけ見ると、すごく辛辣な質問に思えるかもしれない。しかしルクレールがここまで挙げてきた実績からすれば、ハミルトンが厳しい評価をするはずもない。笑顔をルクレールに向けて、「どんなふうに答えたらいい?」と尋ねるハミルトン。「正直に言ってよ」と、ルクレールも笑いながら返した。
ハミルトン:シャルルのこの3年間の進化は、本当に見応えがあったよ。フェラーリという偉大なチームで、リーダーを任されてね。もちろん難しい時期もあったけど、そのことでシャルルはいっそう強くなった。何より彼はまだ若い。さらに進化を重ねていくだろうね。
フェラーリで着々とF1キャリアを築いているルクレール。一方のハミルトンは最近のインタビューで、「フェラーリで走ることは、全ドライバーの夢だ。でも僕には、そんな話はなかった。なぜかわからないけどね」と語っている。
一方で元チーム代表だったステファノ・ドメニカリは、「ルイス獲得を議論したことはある」と答えている。それはどこまで具体的なものだったのか。もしハミルトンがメルセデスの代わりにフェラーリに移籍していたら、今のような栄光は手にしていなかった可能性は高い。しかしそれでも彼は、ドライバーとして十分に幸せだっただろうか。
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