【SFチャンピオン候補インタビュー】3冠目を目指す石浦「キャシディと山本だけとの戦いではない」
自力でのタイトル決定権をもつ3人が中心となって迎える全日本スーパーフォーミュラ選手権 最終戦『第17回JAF鈴鹿グランプリ』。現在ランキング2位にして、ディフェンディングチャンピオンでもある石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)は、連覇に向けてどのように最終決戦を迎えるのか。
石浦は、ポイント首位のニック・キャシディ(KONDO RACING)と4点差で最終戦へ挑む。ランク3位の山本尚貴(TEAM MUGEN)は、首位と5点差だが、石浦との1点差には微妙な意味合いの違いが宿る。
山本の場合、もしキャシディが最終戦でポールポジションを獲得すると、その時点で自力王座の権利が消滅。しかし石浦の場合は仮にキャシディにポールをもっていかれても、自分が優勝しさえすれば王座に就ける。つまり最終戦前の4点差は完全自力圏内になるのだ。
しかし、石浦本人は、最終戦を前にしたポイント状況について、冷静で現実的な見方をする。
「本当は逆転して(首位で)鈴鹿に行きたかったんですよね。優勝すれば自力でチャンピオンという状況ではありますが、優勝しないとチャンピオン獲得は難しい状況でもありますから」
石浦は、第5戦もてぎで今季初優勝。自身が「タイトル争い生き残りの正念場」と位置付けた一戦で勝ち、そのまま得意中の得意である岡山での第6戦で一気にポイントリーダーの座を奪取することを目論んでいた。
だが、岡山戦は雨中のハーフポイントレースとなり、トリッキーな面もあった戦い模様のなかで決勝7位と本領を発揮しきれなかった。
石浦は、最終戦に自力逆転戴冠の権利を残したとはいえ、仮にランク上位3人の戦いが優勝争いとは別のところで推移することになればキャシディとの現状の4点差も決して小さくはなくなってくる。
開幕戦鈴鹿を勝っている山本についても、石浦はそのコース適性を警戒している。
「開幕戦と最終戦は、季節的な条件も近いですし、普通に行ったら今回もTEAM MUGENの2台は速いでしょう。僕たちとはクルマのキャラクター(セットアップのベース)がかなり違うと思いますので、もし向こうがすごく合うような(気象や路面の)状況になると、こっちは厳しくなりますね」
敵は手強い、しかし「違うキャラクターのクルマで、こっちが上回れる流れにしていきたいですね」と石浦は意気込む。トヨタとホンダという搭載エンジンの違いを含め、マシン傾向が異なることで戦況を自陣優位に大きく傾けられる可能性だってある。
なにしろ、石浦が所属するJMS P.MU/CERUMO・INGINGは、SF14シャシー時代のスーパーフォーミュラでもっとも大きな成功を収めてきたチームといえるからだ。コースやコンディションによるパフォーマンス変動が大きくはない陣営ともいえる。
「雨が絡むことも多いですよね」という鈴鹿最終決戦でセルモの安定感は、鈴鹿巧者の山本に対しても、ポイント的に先行するキャシディに対しても強い武器になる。
石浦は、最終戦がひさびさに1レース制で行なわれることについても意欲的だ。
「僕は1レース制の方が好きですね。今年は全戦でドライ用タイヤが2スペックあるので、1レースの方が戦略面でも面白くなるでしょうし、それにもし予選で遅れをとった場合でも決勝で逆転できる可能性が残る。開幕戦の時にも関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が大きく順位を上げたりしていましたからね」
石浦らしい冷静な分析のなかに、戦略が大きなウエイトを占める戦いで、安定して強さを発揮できる自信が滲む。
「(誰かの)調子が良ければポール・トゥ・ウインの可能性も高いですし、ふたり(キャシディと山本)だけとの戦いではないとも考えています。関口たちも含めて、王座の権利がある人はみんな平等くらいのパフォーマンスがあると思って最終戦に臨みます」
どうなるか分からない戦いから最後に抜け出して王座を獲る、これが近年のスーパーフォーミュラのタイトル争いの基本軸だ。それを今、もっとも熟知する男が連覇、そして4年で3冠の石浦時代構築に向け、冷静に燃えている。
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