欧州で成長を遂げた鈴木武蔵…日本代表のFWとして“絶対的”地位確立へ
サッカーキング2020年11月16日(月)12時59分
代表合宿でトレーニングを行う鈴木武蔵 [写真]=JFA
「海外に来て、個人で戦う場面がすごく増えて、『代表でも必ずレギュラーを勝ち取って“絶対的選手”になりたいという気持ちがさらに高まりました。最初に代表に来た時は“よそ者”っていう感覚の自分がいたけど、今はそうじゃない。FWとして結果を残したいと強く思います」
11月の日本代表2連戦に向けたオーストリア合宿に合流した際、鈴木武蔵は「ゴール」と「定位置獲得」への渇望を口にした。13日の初戦・パナマ戦は出番なしに終わったが、ゼロトップ気味にプレーした南野拓実の一挙手一投足を目に焼き付けていたはず。左右のサイドやトップ下でもプレーできる万能型の南野とは異なり、彼自身は生粋のFWだ。その存在価値を示すためにも、17日の次戦・メキシコ戦は非常に大きな一戦となる。
2018年ロシアワールドカップ初出場国のパナマ相手に前半は主導権を握られ、全体的に低い位置に押し込まれ、南野が孤立する展開を余儀なくされたのだから、ワールドカップ決勝トーナメント常連国の強豪・メキシコ相手ならより劣勢を覚悟しなければならない。
そこで最前線のFWに求められるのは、数人のDFに囲まれても確実にボールを収め、周りが攻め上がる時間を作り、ゴールに襲い掛かること。つまり、絶対的1トップ・大迫勇也がこなしているような仕事がより必要になってくるのだ。
「大迫選手と比較されて、僕の方がポストプレーで劣っているのは分かっているけど、僕は僕なりの特長があるので、そこでもっと勝負していきたいとは思っています。ただ、収める部分に関して、コンサドーレ札幌時代のよきライバルで親友だったジェイのプレーを見ていると、ボールを受ける場所だったり、体の使い方、ファーストタッチの場所は本当に勉強になる。間近で彼を見れてよかったし、アドバイスもしてくれました」
こう語るように、武蔵がかつての同僚から伝授されたコツを意識的に実践することで前向きな方向に進んでいるのは間違いない。
10月のコートジボワール戦でも屈強なアフリカ勢相手に当たり負けせず、上半身を巧みに使いながらボールを収め、タメを作る場面が何度もあった。ことあるごとに大迫と比較され、ターゲットマンとしての課題を突き付けられる自分から脱出しようと、彼自身も必死にもがいているのだろう。その成果をメキシコ戦で出し切れば、そんな比較からも卒業できる。超越した存在にも近づくはずだ。
そのうえで、ベールスホットで見せているようなゴール量産を代表でも体現してくれれば、本人の掲げる「レギュラー」という大目標にも手が届く。新天地で奪ったゴールを見ると、相手スペースに一瞬で侵入してダイレクトで合わせたり、打点の高いヘッドで押し込んだりと瞬間的な反応が早くなっているのがよく分かる。日本代表でもショートカウンターやリスタートのチャンスが巡ってきたら、磨き上げた動き出しの速さや得点感覚を存分に発揮すればいい。
「僕は僕のやり方で地位を確立させたいと思ってます。相手の背後を取るとか、ゴール前の動きだったりはつねに意識してどんどん出していきたいです。コートジボワール戦を振り返ってみても、僕個人のシュート数が少なかったと思っていて、1試合を通して1本でも多くシュートを打つことを意識しないといけないなと。ベルギーでも相手のマークは厳しいですけど、1試合に1回は絶対にスキがある。それを確実にモノにしなければいけない。ここまで5点ですけど、もっともっと点を取れる場面はあった。満足できていない自分がいますね」と彼は数少ない決定機を決め切ることを最重要テーマに掲げ、メキシコ戦に挑むつもりだ。
鈴木武蔵の武器というのは、ご存じの通り、爆発的なスピードだ。それは2016年リオデジャネイロ五輪代表を率いた手倉森誠監督も強調していた点である。
「武蔵や浅野(拓磨)は凄まじいスピードを持っています。技術的には少し下手だったかもしれないけど、世界が嫌がるスピードは練習しても身に着かない。そこを重視して選んだんです。もう1つのポイントはインターナショナルなメンタリティを持っているか。武蔵はそこは全く問題なかった」
かつての指揮官がポテンシャルに太鼓判を押した通り、日本人離れした速さと度胸を兼ね備えたストライカーは欧州へ赴いて一気に成長曲線を引き上げた。かつて岡崎慎司も「技術的に低い」と批判されながら、20代後半に入ってからドイツ、イングランド、スペインで結果を残し、現在に至っている。そう考えると、26歳の鈴木武蔵はここからが全盛期なのかもしれない。
2012年のアルビレックス新潟入りからJリーグ5チームを渡り歩き、試合に出られない時期を何度も経験した雑草魂は岡崎に通じるものがある。日本代表通算50ゴールという偉大な点取屋と同様の系譜を歩むべく、今回のメキシコ戦で代表2ゴール目を叩き出し、FWとして確固たる地位を築くこと。そして2021年3月再開予定の2022年カタールワールドカップアジア予選では絶対的エースに君臨すること。そんな成功ロードを目指して、泥臭くタフに戦ってほしい。
文=元川悦子
11月の日本代表2連戦に向けたオーストリア合宿に合流した際、鈴木武蔵は「ゴール」と「定位置獲得」への渇望を口にした。13日の初戦・パナマ戦は出番なしに終わったが、ゼロトップ気味にプレーした南野拓実の一挙手一投足を目に焼き付けていたはず。左右のサイドやトップ下でもプレーできる万能型の南野とは異なり、彼自身は生粋のFWだ。その存在価値を示すためにも、17日の次戦・メキシコ戦は非常に大きな一戦となる。
2018年ロシアワールドカップ初出場国のパナマ相手に前半は主導権を握られ、全体的に低い位置に押し込まれ、南野が孤立する展開を余儀なくされたのだから、ワールドカップ決勝トーナメント常連国の強豪・メキシコ相手ならより劣勢を覚悟しなければならない。
そこで最前線のFWに求められるのは、数人のDFに囲まれても確実にボールを収め、周りが攻め上がる時間を作り、ゴールに襲い掛かること。つまり、絶対的1トップ・大迫勇也がこなしているような仕事がより必要になってくるのだ。
「大迫選手と比較されて、僕の方がポストプレーで劣っているのは分かっているけど、僕は僕なりの特長があるので、そこでもっと勝負していきたいとは思っています。ただ、収める部分に関して、コンサドーレ札幌時代のよきライバルで親友だったジェイのプレーを見ていると、ボールを受ける場所だったり、体の使い方、ファーストタッチの場所は本当に勉強になる。間近で彼を見れてよかったし、アドバイスもしてくれました」
こう語るように、武蔵がかつての同僚から伝授されたコツを意識的に実践することで前向きな方向に進んでいるのは間違いない。
10月のコートジボワール戦でも屈強なアフリカ勢相手に当たり負けせず、上半身を巧みに使いながらボールを収め、タメを作る場面が何度もあった。ことあるごとに大迫と比較され、ターゲットマンとしての課題を突き付けられる自分から脱出しようと、彼自身も必死にもがいているのだろう。その成果をメキシコ戦で出し切れば、そんな比較からも卒業できる。超越した存在にも近づくはずだ。
そのうえで、ベールスホットで見せているようなゴール量産を代表でも体現してくれれば、本人の掲げる「レギュラー」という大目標にも手が届く。新天地で奪ったゴールを見ると、相手スペースに一瞬で侵入してダイレクトで合わせたり、打点の高いヘッドで押し込んだりと瞬間的な反応が早くなっているのがよく分かる。日本代表でもショートカウンターやリスタートのチャンスが巡ってきたら、磨き上げた動き出しの速さや得点感覚を存分に発揮すればいい。
「僕は僕のやり方で地位を確立させたいと思ってます。相手の背後を取るとか、ゴール前の動きだったりはつねに意識してどんどん出していきたいです。コートジボワール戦を振り返ってみても、僕個人のシュート数が少なかったと思っていて、1試合を通して1本でも多くシュートを打つことを意識しないといけないなと。ベルギーでも相手のマークは厳しいですけど、1試合に1回は絶対にスキがある。それを確実にモノにしなければいけない。ここまで5点ですけど、もっともっと点を取れる場面はあった。満足できていない自分がいますね」と彼は数少ない決定機を決め切ることを最重要テーマに掲げ、メキシコ戦に挑むつもりだ。
鈴木武蔵の武器というのは、ご存じの通り、爆発的なスピードだ。それは2016年リオデジャネイロ五輪代表を率いた手倉森誠監督も強調していた点である。
「武蔵や浅野(拓磨)は凄まじいスピードを持っています。技術的には少し下手だったかもしれないけど、世界が嫌がるスピードは練習しても身に着かない。そこを重視して選んだんです。もう1つのポイントはインターナショナルなメンタリティを持っているか。武蔵はそこは全く問題なかった」
かつての指揮官がポテンシャルに太鼓判を押した通り、日本人離れした速さと度胸を兼ね備えたストライカーは欧州へ赴いて一気に成長曲線を引き上げた。かつて岡崎慎司も「技術的に低い」と批判されながら、20代後半に入ってからドイツ、イングランド、スペインで結果を残し、現在に至っている。そう考えると、26歳の鈴木武蔵はここからが全盛期なのかもしれない。
2012年のアルビレックス新潟入りからJリーグ5チームを渡り歩き、試合に出られない時期を何度も経験した雑草魂は岡崎に通じるものがある。日本代表通算50ゴールという偉大な点取屋と同様の系譜を歩むべく、今回のメキシコ戦で代表2ゴール目を叩き出し、FWとして確固たる地位を築くこと。そして2021年3月再開予定の2022年カタールワールドカップアジア予選では絶対的エースに君臨すること。そんな成功ロードを目指して、泥臭くタフに戦ってほしい。
文=元川悦子
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