[神戸弘陵]「しょぼいリーダー」が決めた覚悟…チームの目標は“日本一”【高校サッカー選手権】
サッカーキング2019年12月25日(水)20時0分
神戸弘陵の主将MF沖吉大夢 [写真]=森田将義
「これだけ勝たせてやれない年はこれまでなかった」と谷純一監督が振り返る通り、神戸弘陵の2019年は、黒星が先行する苦しい年だった。2016年から2年間、プレミアリーグに在籍した関西の屈指の強豪で、戦力的には今年も兵庫県でNo.1の存在だが、新チームが発足してすぐの新人戦はベスト8でまさかの敗退。プリンスリーグ関西も開幕から黒星が先行し、最下位を争った。
夏のインターハイも予選のベスト8で敗退。主将のMF沖吉大夢(3年)は、当時の心境についてこう語る。「負けが続いていたのは僕のリーダーシップやチームを引っ張っていく力がなかったから。無力さ不甲斐なさを感じ、自分が嫌いだった。選手権予選が始まるまでずっと負けていたので、ずっと苦しかった」。
夏休みにチーム状態が改善し、浮上を誓った9月からのプリンスリーグでも結果は伴わない。連敗が続く中でも、谷監督は「これだけ負けていれば、周りから色々言われるけど俺は気にしていない。絶対にお前らなら選手権で優勝できる。今、成績が残せていないのは俺がお前らの力を発揮させてあげられていないからだ」と言い続けてきたという。
そうした指揮官の言葉に感化されたのが沖吉だ。
「どんな時でも、谷先生の“負けたら自分のせい、勝ったら選手のおかげ”という考えはずっと変わらなかった。僕はキャプテンで、谷先生は監督という立場。同じチームを引っ張る立場なのに、僕は負けたら人のせいにするし、失点したら下を向く。僕はホンマにしょぼいリーダーなのに、『選手権で優勝する』と前だけを見続けている谷先生は男としてめちゃくちゃかっこよかった」
「俺も谷先生みたいにかっこよくなりたい」と誓った沖吉は、選手権予選の直前から考えを改め、うまくいかない責任の矛先を自らに向けるようになった。責任を背負うことで、プレーに挑む意気込みも変わっていく。大きな変化はPKに対する向き合い方だ。9月に行われたプリンスリーグの試合で1年生のMF田中祉同が倒され、PKを得たが、「祉同が倒されて得たPKだからアイツに任せた」。無事にキックは成功したが、直後のミーティングで「もし3年生に覚悟があったなら、あのPKは1年生に蹴らしていない。もし、選手権予選の決勝で1年生がPKを蹴って、負けても後悔しないのか?」と指摘されたという。
今年の沖吉は、PKを外し続けてきたため、成功させる自信が持てずキッカーから逃げていた。谷監督の言葉に背中を押された沖吉は、「下級生がPKを獲得したら絶対に自分が蹴ろう。それで外して負けたら俺のせい。1人で責任をとれば良いって思えた」。
直後の試合で早速、PKの機会が訪れると沖吉はキッカーに名乗りを挙げてキックを成功させた。選手権予選の準々決勝・三田学園戦でもFW吉田翔貴(3年)が倒され、PKを得るときっちり決めて2-1での勝利に貢献。県立西宮との決勝では、自身が獲得したPKを決めると、このゴールが決勝点となり、4年ぶりの選手権を手繰り寄せた。沖吉は「ダサいままじゃ嫌だ。かっこよくなりたいと覚悟を持てるようになったのは、大きな成長だと思う」と胸を張る。覚悟を決めた人間ほど強い者はいない。選手権の舞台でも、神戸弘陵と沖吉は自らが決めた“日本一”という目標に向かって、突き進んでいく。
取材・文=森田将義
夏のインターハイも予選のベスト8で敗退。主将のMF沖吉大夢(3年)は、当時の心境についてこう語る。「負けが続いていたのは僕のリーダーシップやチームを引っ張っていく力がなかったから。無力さ不甲斐なさを感じ、自分が嫌いだった。選手権予選が始まるまでずっと負けていたので、ずっと苦しかった」。
夏休みにチーム状態が改善し、浮上を誓った9月からのプリンスリーグでも結果は伴わない。連敗が続く中でも、谷監督は「これだけ負けていれば、周りから色々言われるけど俺は気にしていない。絶対にお前らなら選手権で優勝できる。今、成績が残せていないのは俺がお前らの力を発揮させてあげられていないからだ」と言い続けてきたという。
そうした指揮官の言葉に感化されたのが沖吉だ。
「どんな時でも、谷先生の“負けたら自分のせい、勝ったら選手のおかげ”という考えはずっと変わらなかった。僕はキャプテンで、谷先生は監督という立場。同じチームを引っ張る立場なのに、僕は負けたら人のせいにするし、失点したら下を向く。僕はホンマにしょぼいリーダーなのに、『選手権で優勝する』と前だけを見続けている谷先生は男としてめちゃくちゃかっこよかった」
「俺も谷先生みたいにかっこよくなりたい」と誓った沖吉は、選手権予選の直前から考えを改め、うまくいかない責任の矛先を自らに向けるようになった。責任を背負うことで、プレーに挑む意気込みも変わっていく。大きな変化はPKに対する向き合い方だ。9月に行われたプリンスリーグの試合で1年生のMF田中祉同が倒され、PKを得たが、「祉同が倒されて得たPKだからアイツに任せた」。無事にキックは成功したが、直後のミーティングで「もし3年生に覚悟があったなら、あのPKは1年生に蹴らしていない。もし、選手権予選の決勝で1年生がPKを蹴って、負けても後悔しないのか?」と指摘されたという。
今年の沖吉は、PKを外し続けてきたため、成功させる自信が持てずキッカーから逃げていた。谷監督の言葉に背中を押された沖吉は、「下級生がPKを獲得したら絶対に自分が蹴ろう。それで外して負けたら俺のせい。1人で責任をとれば良いって思えた」。
直後の試合で早速、PKの機会が訪れると沖吉はキッカーに名乗りを挙げてキックを成功させた。選手権予選の準々決勝・三田学園戦でもFW吉田翔貴(3年)が倒され、PKを得るときっちり決めて2-1での勝利に貢献。県立西宮との決勝では、自身が獲得したPKを決めると、このゴールが決勝点となり、4年ぶりの選手権を手繰り寄せた。沖吉は「ダサいままじゃ嫌だ。かっこよくなりたいと覚悟を持てるようになったのは、大きな成長だと思う」と胸を張る。覚悟を決めた人間ほど強い者はいない。選手権の舞台でも、神戸弘陵と沖吉は自らが決めた“日本一”という目標に向かって、突き進んでいく。
取材・文=森田将義
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