【技術特集】ホンダF1パワーユニットは、なぜあれほどに壊れ続けたのか(4):想定外の異常振動
2017年のホンダ製F1パワーユニットは、まるでガラスのように脆い存在だった。フェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーンは、PU由来のトラブルで計9回のリタイアに見舞われ、合計390ものグリッド降格ペナルティを科された。これほどの信頼性の低さを、いったいどう理解したらいいのだろうか。F1i.comで技術分野を担当するニコラ・カルペンティエが分析する。
——————————————
ターボハイブリッドのF1パワーユニットが優れた戦闘力を発揮するためには、まずはV6エンジンが強大なパワーを持ち、同時に燃料消費もできるだけ少なくする必要があった。そのためのリーンバーン(希薄燃焼)技術の確立は、ホンダがライバルたちに追い付くための絶対条件だった。
しかし、レースでの燃量は105kg以下、1時間当たりの燃料流量は100kgという厳しい制限が困難に輪を掛けた。解決の決め手は、『副燃焼室』技術の確立であり、すでにメルセデスは2014年から、フェラーリも2015年中盤、ルノーでさえ2016年から開発を開始。ホンダの立ち後れは、明らかだった。
とはいえ1970年代にCVCCを世界に先駆けて実用化したホンダにとって、この技術がまったく未知のものだったわけではない。後追いながらも2017年シーズンのRA617Hには、新燃焼システムが導入された。開発部門での単気筒のテストは、期待通りの結果が出たという。しかし6気筒で同様のテストを行うと、複雑な問題が頻出した。さらに車体に組み込んで実走テストを行うと、異常振動を始め予想外のトラブルに悩まされることになる。
「新たなコンセプトの2017年型パワーユニットは、パワーに関しては前年最終戦とほぼ同じレベルから出発していました」と、長谷川祐介ホンダF1総責任者(当時)は語る。
「最大パワーは確かに同レベルだったのですが、低回転域ではかなり非力だった。9000回転前後に大きな穴があり、トルクも非常に薄い状態でした。テストベンチではそんなことはなかったのに、サーキットでの実走で1万回転から9000回転に落とすと、トルクが急激に落ちる症状に見舞われました」
(第5回に続く)
「ホンダ」をもっと詳しく
「ホンダ」のニュース
-
バイク名車列伝 第9回 ホンダのレーサーレプリカ「VFR400」に今から乗るなら? バイク王に聞く5月2日11時30分
-
ヤマハ「大きく変更したシャシーをテスト」。ホンダ「進むべき方向性がわかった」/MotoGPヘレス公式テスト5月2日5時0分
-
【バイク天国】インドネシアで人気のバイクを調査した結果 / ヤマハXSR155、R15、ホンダCBR150R、CBR250RR、スズキGSX150、カワサキZX-25など5月1日18時0分
-
バイク名車列伝 第8回 ホンダ「NSR250R」は今でも大人気! 最終モデルが価格高騰中?5月1日11時30分
-
ホンダとの再タッグ控える42歳アロンソの魅力と2年後の懸念。中国で高まるF1機運【中野信治のF1分析/第5戦】4月30日14時50分
-
ヨハン・ザルコ、ホンダの試作マシンは「まだ一歩を踏み出したと言えない」/MotoGPへレステスト4月30日13時30分
-
バイク名車列伝 第7回 ホンダ「CB750F」はノーマルよりカスタムが高評価? 中古事情を聞く4月30日11時30分
-
上位占めるドゥカティが好調。ヤマハは空力を大幅にアップデート、ホンダは再登場のパーツで走行/ヘレス公式テスト4月30日7時40分
-
ホンダ:ミルが12位「マシンの改善が進んでいる。テストで課題解消にトライする」/第4戦スペインGP決勝4月29日6時6分
-
ホンダ:ミル、9位でポイントを獲得「マシンのフィーリングがよく、いい走りができた」/第4戦スペインGPスプリント4月28日6時56分