「恩返しとは言いたくなかった」元巨人のレジェンド左腕・内海哲也氏が衝撃の「プロテクト漏れ」を振り返る
(C)Getty Images
今季も惜しまれながら多くの選手が引退した。巨人の左腕エースとして一時代を築き、その後、人的補償のプロテクト漏れという異例な形で西武へ移籍することになった内海哲也投手(40)もその一人だ。
巨人在籍時代は「内海組」といわれ、多くの後輩から慕われた。その実直な人柄も知られていた生え抜き左腕が、まさかの「放出」を告げられたのは2018年のオフのことだった。
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巨人時代に師弟関係を結んでいた巨人OB高橋尚成氏の28日までに更新された公式YouTubeチャンネル「高橋尚成のHISAちゃん」に出演した同氏は当時の激動の日々を振り返った。
18年のオフはFAで西武から炭谷、広島から丸が巨人に移籍。内海氏は、移籍話が進む内に内心、自身がプロテクト枠から外れることを危惧、親交の深い新聞記者に水面下の情報を確認するほどだったという。しかし記者からは「巨人ではかつて実績を残してきた選手が(プロテクトから)外されて出されることはない。安心してください」と説明を受け、安堵していたという。
しかし数日後に球団フロントから携帯電話に着信があり、「来たと思って…」と移籍を覚悟したという。
そして移籍した西武では巨人とのチームカラーの違いを感じることになる。常勝軍団で知られる巨人は常に優勝、勝つことを求められるが、西武では「育てよう、経験させよう」という気質を強く感じたという。
また移籍後、古巣との初対戦となった試合のことも振り返った。
21年の交流戦、6月3日の巨人戦(東京ドーム)に先発。かつて長く時間を過ごした東京ドームの三塁側ベンチから登場することに不思議な感覚を覚えたが巨人には「絶対、負けたくなかった」という。
登板前は勝利を想定し、ヒーローインタビューのシュミレーションまで行っていた。「7回無失点ぐらいで勝って—。(古巣に)恩返しとか言うじゃないですか。絶対言わん!」と心に決めていたという。「(勝ったら)ライオンズのために頑張りましたとだけ、言おうと思っていた」と笑い交じりながら、古巣への複雑な感情をのぞかせる場面もあった。
しかし結果は非情にも2回3失点KO。それでも東京ドームの巨人ファンからは温かい拍手を送られ「ありがたかった」という。
さらに人的補償での移籍を振り返って内海氏は「めちゃめちゃいい経験だった」と語る。36歳であらたな人間関係を築く難しさがありながら、違う景色を見られたことが自身の財産につながったと語る。
本音を言えば「ジャイアンツでユニホームを脱ぎたい気持ちもあった」という内海氏。引退後は古巣巨人からコーチ就任の誘いもあったとされるが、第二の仕事として選んだのは西武の二軍投手コーチだった。
巨人時代には最多勝のタイトルを含め、常勝軍団のエースとして一時代を築いた内海氏のプロテクト漏れには当時、様々な意見が飛び交った。そして巨人は今季、リーグワーストのチーム防御率(3.69)に沈み、投手陣再建が大きなテーマとなっている。
「内海があのまま巨人に残っていればどうなっていたかという意見は未だに根強い。いい指導者になると見られていただけに、幹部候補生をプロテクトできなかった判断が悔やまれます」(球界関係者)
指導者として第二の道を歩み始めた内海氏の成功も祈りたい。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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