老朽化するインフラ、放置すると災害リスクも…修繕補修の遅れが目立つ理由、今後の課題は? 専門家が解説
TOKYO FM+2024年1月24日(水)11時58分
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜〜金曜6:00〜9:00)。1月17日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「老朽化するインフラ どんな対策が必要か?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
道路や橋などのインフラの老朽化が進んでいます。能登半島地震、そして、阪神淡路大震災から29年となったことを受け、今回はこの問題について塚越さんにお話を伺いました。
◆インフラの寿命は建設後50年…老朽化の現状は?
塚越:インフラについては、基本的に建設後50年が寿命とされています。専門家は、適切な時期に修繕補修などをしなければ災害リスクが高まる恐れがあると指摘しています。
国土交通省の調べでも、2040年で建設後50年以上となる施設がたくさんあります。川や鉄道、道路などの上に作って通りを良くする橋梁で75%、港湾で66%、トンネルで53%となります。
全国の道路や橋は5年に一度点検が義務化されています。国土交通省が去年末にまとめた調査によると、国が管理する施設でも橋梁のうち37.7%、トンネルで31.5%が未修繕の状態になっています。さらに政令指定都市を除いた市区町村の管理下では、橋梁の60.8%、トンネルの47.4%が未着手で、特に地方に修繕の遅れが見られています。
◆インフラ対策の遅れが目立つ地方 資金人材不足が原因
吉田:怖いと感じるのですが、地方のインフラ対策の遅れが目立っているのは、どうしてなのでしょうか?
塚越:基本的には資金・人材の不足です。特に地方自治体はインフラ維持に関する予算と職員の確保が難しく、募集しても応募者がいないケースもあります。お金だけの問題ではありません。
総務省によれば、市町村が整備する道路や橋に充てる土木費は2021年度で6兆5,000億円程度あるのですが、これはピークだった1993年度から43%も減っています。つまり30年前は10兆円規模だったということです。
高齢化で社会保障費が膨らんで公共事業までお金が回らないことに加え、インフラ整備のための技術系職員も不足。さらに市町村全体の25%にあたる437の市町村では、技術系職員は1人も確保できていない状況にあります。
◆ITの活用、民間への委託がカギ?
ユージ:深刻な問題だと思うのですが、インフラの老朽化の現状を踏まえて今、どのような対策が必要だとお考えですか?
塚越:資金でも人材面でも厳しいので、少ないリソースをどう効率的に使うかが重要です。例えば、不具合が起きてから修繕するより、傷む前にこまめに手入れする「予防保全」に力を入れると、維持費を抑えることができます。
そして、この分野にはITが使えると私は思います。昨今は衛星から得られるデータ、例えば寒暖差が強くてガタがきやすい区域のデータなどを他のデータと組みあわせて分析し、そろそろ修繕が必要になる箇所を割り出すといったサービスも出ています。これらを使うことによって「予防保全」の効率は上がっていくと思います。
他にも、ドローンをうまく使うことが必要です。ドローンは人が入りづらいところでも入って外壁調査などをしたり、写真を撮ったりできるので、人間の作業を大幅に省略できると思います。他には、修繕作業を民間に一括委託することです。新潟県三条市では2017年度から民間に委託することで、公務員の負担軽減になったといいます。
人材不足が問題となっている奈良県では、2010年度から複数の市町村からまとめて工事などを受託して費用を削減することで、全国平均よりも橋梁の修繕着手率が高くなっています。要するに、複数の市町村のインフラ維持を、県が代行するということです。
さらに専門家は、インフラの数を見直すことで必要のないインフラを廃止したり、修繕して長く使うものを見極めたり、絶対に必要なインフラは新しく作ったりすることを指摘しています。
例えば、公民館を学校に集約して、音楽室を時間ごとに(市民が)区切って使うといった方法も考えられます。人口減少傾向にある日本では、残念ながらインフラも「省エネ」しなければなりません。
ただ、このままだとジリ貧になってしまうので、経費削減する一方で、(例えば子育て支援など)費用をかけるところにはかけるなど、自治体独自の取り組みも必要だと思います。それも含めて「ここがなくなったら嫌」など、住民の皆さんで考える必要があると思います。
ユージ:話し合いが必要ですよね。
塚越:話し合うことによって、ある種の民主主義的な住民自治になります。(全国的に取り上げられるような)ニュースになるのはどうしても難しいし、お金がないのは全国どこでもそうですが、そのなかでできることをみんなで探していく必要があります。
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1月17日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年1月25日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
道路や橋などのインフラの老朽化が進んでいます。能登半島地震、そして、阪神淡路大震災から29年となったことを受け、今回はこの問題について塚越さんにお話を伺いました。
◆インフラの寿命は建設後50年…老朽化の現状は?
塚越:インフラについては、基本的に建設後50年が寿命とされています。専門家は、適切な時期に修繕補修などをしなければ災害リスクが高まる恐れがあると指摘しています。
国土交通省の調べでも、2040年で建設後50年以上となる施設がたくさんあります。川や鉄道、道路などの上に作って通りを良くする橋梁で75%、港湾で66%、トンネルで53%となります。
全国の道路や橋は5年に一度点検が義務化されています。国土交通省が去年末にまとめた調査によると、国が管理する施設でも橋梁のうち37.7%、トンネルで31.5%が未修繕の状態になっています。さらに政令指定都市を除いた市区町村の管理下では、橋梁の60.8%、トンネルの47.4%が未着手で、特に地方に修繕の遅れが見られています。
◆インフラ対策の遅れが目立つ地方 資金人材不足が原因
吉田:怖いと感じるのですが、地方のインフラ対策の遅れが目立っているのは、どうしてなのでしょうか?
塚越:基本的には資金・人材の不足です。特に地方自治体はインフラ維持に関する予算と職員の確保が難しく、募集しても応募者がいないケースもあります。お金だけの問題ではありません。
総務省によれば、市町村が整備する道路や橋に充てる土木費は2021年度で6兆5,000億円程度あるのですが、これはピークだった1993年度から43%も減っています。つまり30年前は10兆円規模だったということです。
高齢化で社会保障費が膨らんで公共事業までお金が回らないことに加え、インフラ整備のための技術系職員も不足。さらに市町村全体の25%にあたる437の市町村では、技術系職員は1人も確保できていない状況にあります。
◆ITの活用、民間への委託がカギ?
ユージ:深刻な問題だと思うのですが、インフラの老朽化の現状を踏まえて今、どのような対策が必要だとお考えですか?
塚越:資金でも人材面でも厳しいので、少ないリソースをどう効率的に使うかが重要です。例えば、不具合が起きてから修繕するより、傷む前にこまめに手入れする「予防保全」に力を入れると、維持費を抑えることができます。
そして、この分野にはITが使えると私は思います。昨今は衛星から得られるデータ、例えば寒暖差が強くてガタがきやすい区域のデータなどを他のデータと組みあわせて分析し、そろそろ修繕が必要になる箇所を割り出すといったサービスも出ています。これらを使うことによって「予防保全」の効率は上がっていくと思います。
他にも、ドローンをうまく使うことが必要です。ドローンは人が入りづらいところでも入って外壁調査などをしたり、写真を撮ったりできるので、人間の作業を大幅に省略できると思います。他には、修繕作業を民間に一括委託することです。新潟県三条市では2017年度から民間に委託することで、公務員の負担軽減になったといいます。
人材不足が問題となっている奈良県では、2010年度から複数の市町村からまとめて工事などを受託して費用を削減することで、全国平均よりも橋梁の修繕着手率が高くなっています。要するに、複数の市町村のインフラ維持を、県が代行するということです。
さらに専門家は、インフラの数を見直すことで必要のないインフラを廃止したり、修繕して長く使うものを見極めたり、絶対に必要なインフラは新しく作ったりすることを指摘しています。
例えば、公民館を学校に集約して、音楽室を時間ごとに(市民が)区切って使うといった方法も考えられます。人口減少傾向にある日本では、残念ながらインフラも「省エネ」しなければなりません。
ただ、このままだとジリ貧になってしまうので、経費削減する一方で、(例えば子育て支援など)費用をかけるところにはかけるなど、自治体独自の取り組みも必要だと思います。それも含めて「ここがなくなったら嫌」など、住民の皆さんで考える必要があると思います。
ユージ:話し合いが必要ですよね。
塚越:話し合うことによって、ある種の民主主義的な住民自治になります。(全国的に取り上げられるような)ニュースになるのはどうしても難しいし、お金がないのは全国どこでもそうですが、そのなかでできることをみんなで探していく必要があります。
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1月17日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年1月25日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
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