東京で死ぬまでに一度は食べたいこの一皿! トロ発祥の店『吉野鮨本店』で堪能したい至極の「中トロ」の魅力とは?
トロの歴史はこの店から始まった | 食楽web
●トロ発祥の店『吉野鮨本店』のトロは何がどう美味しいのか? 実食調査してきた。
今回ご紹介するのは、東京・日本橋にある老舗のお寿司屋さん『吉野鮨本店』。ニッポン人が愛してやまないトロ発祥の店として知られています。創業は1879(明治12)年。その頃の日本橋には、17世紀の初めごろに始まった魚河岸がありました(築地に移転する1935年まで続いた)。
吉野鮨本店は、その魚河岸のそばに出していた屋台がルーツ。だから、というわけじゃありませんが、近寄りがたい雰囲気は一切ナシ。ついふらりと立ち寄りたくなるような気軽さが漂っています。
日本橋に魚河岸があった明治時代に屋台として誕生。今のお店は日本橋高島屋のすぐ裏の通りにあります。気軽に入っても大丈夫です!
公式ホームページには「吉野鮨には食べ方や順番などの決まりはありません。お客様が一番美味しいと思う食べ方で味わってください」とあります。“老舗の寿司屋”というと、まるで試されているような緊張感を感じたりするお店もありますが、こうした一文が掲載されていると気がラクですよね。ということでさっそく入店してみました。
7000円近くする充実のセットがランチなら半額ほどで味わえる!
席数は30席(カウンター12席)。テーブル席や小上がりの掘りごたつ席、個室もあります
訪れたのはランチタイム。近くにお勤めのビジネスマン、買い物客、海外からの観光客…と実に幅広い層のお客さんで店内はにぎわっていました。
ランチはとてもおトク! にぎりのセットは税込1980円(7貫)、2530円(8貫)、3080円(10貫)、3630円(11貫)というラインナップ。中トロが入っているのは2530円のセットから。お好みだと7000円近くになるようなセットがこの価格で味わえるなんてうれしいですよね。
今回は、10貫のセットを注文。待つこと数分でやってきました! 江戸前なので煮切り醤油が薄くひと塗りされているので、そのままいただくことができます。
10貫のセットがこちら。トロを存分に味わいたいならトロづくし6貫の税込6050円の「とろにぎり」がおすすめ
さて、噂の中トロをいざパクリ。ほどよく乗った脂、マグロの旨味、歯ごたえ。いやー、旨い! すべてのネタを毎朝仕入れているとのことで、ものすごく新鮮、かつバランスの取れた美味しさです。赤身もコクと旨味が凝縮されていて、筆者の好みにドンピシャでした。
こちらは中トロです。宝石のように輝いています
五代目の吉野正敏さんに仕入れのこだわりを聞いてみたところ、「ただ味を追求するだけじゃなく、美味しいものをたくさんの方に味わってもらうために良心的な価格で納得のいくネタを厳選しています」とのこと。いわく「倍の値段になっても倍美味しいってわけじゃないからね」と。確かにその通り!
粕酢と塩だけ、スッキリしたシャリがネタの旨さを際立たせる
ふわふわの玉子がシャリを包み込んでいます
玉子も特徴的です。薄い玉子が、シャリを包むように巻かれています。ちょっと甘めでふわっとした食感。口中でシャリと一体化して、何ともいえない美味しさ。最高です。
ちなみに、吉野鮨のシャリは粕酢(赤酢)と塩のみ。創業以来ずっと変わっていない伝統のつくり方です。甘味を加えない分、スッキリしていてネタの邪魔をしません。「これぞ江戸前寿司!」という感じの一体感があります。
近年、流行ということもあり粕酢を使うお寿司屋さんが増えてきていますが、吉野鮨は創業時からずっとこの味を守り続けています。
「粕酢は、江戸時代後半、造り酒屋さんだったミツカンさんが酒粕を利用してつくったのがはじまりで、『安くてコクがある』と、当時の屋台のお寿司屋さんが一斉に飛びついたんです。ただ、黒っぽい澱(おり)みたいなものが出るので嫌う高級なお寿司屋さんやお料理屋さんもあったみたいですね。でも、うちは創業時から変わらず粕酢と塩だけです」と五代目。
生まれも育ちも日本橋の五代目・吉野正敏さん
だからといって「これがホンモノの江戸前寿司だ!」なんて言うつもりはない、と吉野さん。「甘味が入っているシャリもアリです。みんな同じじゃ面白くない。いろんなお寿司屋さんがあっていいと思いますよ」とのこと。江戸っ子らしい気風の良さを感じます。
「流行りに乗らない」、自然の流れで変化していく
「寿司の食べ方や順番なんて気にしなくていい、好きなように自由に食べてください」と吉野さん
シャリ以外に、創業時から今まで変わってないものは何でしょうか。
「流行りに乗ることはしないので、酢飯も含めて味付けや調理法など創業時のままのものがたくさんありますが、変えていないつもりでも、誰も気づかないようなわずかな違いが長年かけて蓄積して変化しているところはあるかもしれない。何でもそういうものだと思います」
箸袋には吉野さんのおじいさんである三代目が詠んだ歌
箸袋には、吉野さんのおじいさんである三代目が詠んだ歌が書かれています。「江戸に生まれて 東京で育ち いまじゃ日本をにぎりすし」。江戸で生まれ育った寿司が今は日本中どこでも食べられるという意味です。
「晩年、三代目は『今は日本じゃなくて、もう世界だよな』と言っていましたが」と笑う吉野さん。五代にわたり、長年愛されて続けてきた老舗ならではの言葉です。今はなき日本橋魚河岸や当時にぎわっていた屋台に思いを馳せながら味わってみたいお寿司です。
(取材・文◎松みのり)
●SHOP INFO
店名:吉野鮨本店(本記事中の「吉野」の吉は正しくは土+口です)
住:東京都中央区日本橋3-8-11
TEL:03-3274-3001
営:11:00〜14:00(LO)、16:30〜21:30(21:00LO)
※土曜は昼営業のみ・早仕舞いあり
休:日・祝
(c)TOKUMA SHOTEN@All Rights Reserved
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