60歳以上で働いている人はどれくらいいる?
All About2024年2月22日(木)21時20分
日本は少子高齢化の進行で、生産年齢人口が減少しています。そんな日本の労働力不足を補完しているのが高齢者です。60歳以上で働いている人はどれくらいいるのか、どんな形態で働いているのかなど、高齢者の働き方事情を内閣府「令和4年版高齢社会白書」のデータをもとに見ていきましょう。
日本は少子高齢化の進行で、生産年齢人口が減少しています。そんな日本の労働力不足を補完しているのが高齢者です。
では、60歳以上で働いている人はどれくらいいるのか、どんな形態で働いているのかなど、高齢者の働き方事情を内閣府「令和4年版高齢社会白書」のデータをもとに見ていきましょう。
しかし、総務省の「労働力調査」によると労働力人口全体はその後も大きな変化がありません(〈図表1〉棒グラフ)。
理由は、労働力人口に占める65歳以上の割合が右肩上がりで増え続けているからです(〈図表1〉折れ線グラフ)。要するに、少子化によって減少する労働人口より、高齢になっても働き続ける人のほうが多いということです。
2011年と2021年を比較すると、最も増えているのは60代前半で57.1%が71.5%、次の60代後半は36.2%が50.3%。いずれも約14%増加し、60代後半でも2人に1人は働いていることがわかります。さすがに75歳以上は8.4%が10.5%と約2%の増加ですが、10%を超えるということは75歳以上の10人に1人は働いているという現実も見えてきます〈図表2〉。
その後、2013年の改正では、すべての企業に対して「65歳までの雇用確保措置」が義務化されたことから、希望する労働者全員が65歳まで働き続けることができるようになりました。くわえて2021年の改正では、70歳までの就業機会を確保する努力義務も新設。定年制の廃止や65歳以上定年を実施している企業は2割強ですが、現在では多くの企業が65歳以上の継続雇用制度を実施しています〈図表3〉。
50代後半は89%の人が正規の職員として働いていますが、60代前半は54%に激減。それに対して、嘱託・契約社員の割合が4%から30%へ大きく増えています。
60歳で定年を迎え転職するケースもあるため一概にはいえませんが、継続雇用者の雇用形態で最も多いのは「嘱託・契約社員」とする調査(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」2020年)もあることから、60代前半の男性は働き方の大きな転機を迎える時期といえそうです。60代後半からは非正規としての働き方が主流になりますが、年金受給世代になることもあり、働くことに対する意識や目的は人それぞれということでしょう。
〈図表4〉は5歳単位の調査で、男女とも年代が上がるごとに総数はきれいな右肩下がりになっていますが、今後は50代後半と60代前半の差が縮まる可能性があります。
というのは、老齢厚生年金の支給開始年齢は、これまで20年ほどかけて段階的に引き下げられてきましたが、男性は完了、女性もまもなく完了時期を迎えるからです。男性は1961年度、女性は1966年度以降に生まれた人は、65歳にならないと老齢厚生年金を受給することができなくなります。そのため、60代前半は働かないと収入がゼロになってしまうことになります。
収入のある仕事をしている60歳以上の人への調査によると36.7%が「働けるうちはいつまでも」と回答し、これに65歳以上80歳くらいまで働きたいと答えた人をくわえると合計は87%。仕事をしていない人を含めても58.9%は、65歳以上まで働きたいと考えていたと答えています〈図表5〉。
(監修:酒井富士子/経済ジャーナリスト・オールアバウトマネーガイド)
(文:All About 編集部)
では、60歳以上で働いている人はどれくらいいるのか、どんな形態で働いているのかなど、高齢者の働き方事情を内閣府「令和4年版高齢社会白書」のデータをもとに見ていきましょう。
いまや働く高齢者は日本の重要な労働力
現在の日本が抱える問題はいろいろありますが、中でも深刻な課題のひとつが雇用問題です。少子化や人材のミスマッチなど理由はさまざまあるといわれ、生産年齢人口(15〜64歳)は1995年がピークでした。しかし、総務省の「労働力調査」によると労働力人口全体はその後も大きな変化がありません(〈図表1〉棒グラフ)。
理由は、労働力人口に占める65歳以上の割合が右肩上がりで増え続けているからです(〈図表1〉折れ線グラフ)。要するに、少子化によって減少する労働人口より、高齢になっても働き続ける人のほうが多いということです。
直近10年の働く高齢者の割合
もう少し詳しい年齢データから、直近10年の働く高齢者の割合を見てみましょう。2011年と2021年を比較すると、最も増えているのは60代前半で57.1%が71.5%、次の60代後半は36.2%が50.3%。いずれも約14%増加し、60代後半でも2人に1人は働いていることがわかります。さすがに75歳以上は8.4%が10.5%と約2%の増加ですが、10%を超えるということは75歳以上の10人に1人は働いているという現実も見えてきます〈図表2〉。
高齢者が働き続けられる環境は整ってきた
会社員の定年は60歳だと認識している人も多いと思いますが、それが変わってきています。そもそも、昭和の時代は多くの企業の定年年齢は55歳でした。1986年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が施行され、60歳に引き上げる努力義務が設置されました。さらに、1994年の改正で60歳未満の定年を原則禁止して60歳への延長を行ったため、定年年齢は60歳という認識が定着しました。その後、2013年の改正では、すべての企業に対して「65歳までの雇用確保措置」が義務化されたことから、希望する労働者全員が65歳まで働き続けることができるようになりました。くわえて2021年の改正では、70歳までの就業機会を確保する努力義務も新設。定年制の廃止や65歳以上定年を実施している企業は2割強ですが、現在では多くの企業が65歳以上の継続雇用制度を実施しています〈図表3〉。
どのような雇用形態で働いている?
高齢者も働ける環境は整ってきていますが、60歳以上の人たちは実際どのような雇用形態で働いているのでしょうか。現役時代は正規雇用で働く人が多い男性の調査結果を見ていきます(〈図表4〉左)。50代後半は89%の人が正規の職員として働いていますが、60代前半は54%に激減。それに対して、嘱託・契約社員の割合が4%から30%へ大きく増えています。
60歳で定年を迎え転職するケースもあるため一概にはいえませんが、継続雇用者の雇用形態で最も多いのは「嘱託・契約社員」とする調査(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」2020年)もあることから、60代前半の男性は働き方の大きな転機を迎える時期といえそうです。60代後半からは非正規としての働き方が主流になりますが、年金受給世代になることもあり、働くことに対する意識や目的は人それぞれということでしょう。
〈図表4〉は5歳単位の調査で、男女とも年代が上がるごとに総数はきれいな右肩下がりになっていますが、今後は50代後半と60代前半の差が縮まる可能性があります。
というのは、老齢厚生年金の支給開始年齢は、これまで20年ほどかけて段階的に引き下げられてきましたが、男性は完了、女性もまもなく完了時期を迎えるからです。男性は1961年度、女性は1966年度以降に生まれた人は、65歳にならないと老齢厚生年金を受給することができなくなります。そのため、60代前半は働かないと収入がゼロになってしまうことになります。
働く意欲を持つ高齢者は多い
平均寿命は男性が81.47歳、女性は87.57歳。男性の28.1%、女性の52.6%は90歳を迎える時代です(厚生労働省「令和3年簡易生命表」)。リタイア後の時間を短くしたいと考えるからか、働くことを希望する高齢者は多いです。収入のある仕事をしている60歳以上の人への調査によると36.7%が「働けるうちはいつまでも」と回答し、これに65歳以上80歳くらいまで働きたいと答えた人をくわえると合計は87%。仕事をしていない人を含めても58.9%は、65歳以上まで働きたいと考えていたと答えています〈図表5〉。
まとめ
定年を迎える年齢になっても、心身ともに元気な人は多いです。人生100年といわれる時代だけに、日本経済を支えるためにも長く働き続けることが社会の要請といえそうですね。(監修:酒井富士子/経済ジャーナリスト・オールアバウトマネーガイド)
(文:All About 編集部)
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