今年度から徴収される「森林環境税」とは? 国民1人当たりの負担、具体的な使い道、課題を専門家が解説
TOKYO FM+2024年4月14日(日)20時0分
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜〜金曜6:00〜9:00)。4月11日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「2024年度から1人1,000円徴収される”森林環境税”」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
◆今年度から1人年額1,000円徴収される「森林環境税」
「森林環境税」が2024年度から新たに住民税に上乗せされる形で徴収されます。対象者は日本国内に住所がある個人。一律1人あたり年額1,000円となっており、税規模は約620億円が見込まれています。
ユージ:塚越さん、「森林環境税」とはどんな税ですか?
塚越:今年度から自治体の森林整備などに必要な財源を確保するため、1人につき年額1,000円が徴収されます。納税義務者は約6,200万人。税収は1年で約620億円にのぼるといわれています。
この「森林環境税」で集められた税金は、全額が国から都道府県市町村に「森林環境譲与税」として配分されます。各自治体は、その税金を使って間伐や林道の整備、林業の担い手の育成、木材利用の促進などをおこないます。簡単に言えば、森林環境税で国民から年1,000円を徴収して、それを「森林環境譲与税」として自治体に配分するということになります。
◆日本は国土面積の約7割が森林 具体的な税の使い道は?
ユージ:似た名前の”税”が2つ並びますが、その「森林環境譲与税」とは、どういうものですか?
塚越:もともとは2015年の「国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議(COP21)」で採択された「パリ協定」にあります。ここで温室効果ガスの排出削減目標などが設定され、そこから2019年に森林環境税と森林環境譲与税が創設されました。
ただし、森林整備は緊急の課題ということで2019年度からすでに国庫からの交付金として「森林環境譲与税」の配分は始まっています。つまり、前倒しで国がお金を出しています。
日本は、国土面積の約7割が森林を占める森林大国です。最近、木材価格の低迷や、所有者がわからない森林の増加、林業の働き手不足が深刻な課題になっているので、国土の保全や水源の保護などが非常に重要ということで導入されました。
吉田:森林環境譲与税の現在の使い道はどうなっているのでしょうか?
塚越:都道府県や市町村では、使い道を公表しなければなりません。実際に総務省のWebサイトに掲載されている活用例として、青森県西目屋村では木質バイオマスを利用して道路の雪を溶かす融雪の実施や、高知県仁淀川町では林業の研修制度による担い手の確保などに使われています。他にも、人材確保のため防護ズボンや安全靴、ヘルメットといった物品購入費用の支援などに使っている自治体もあります。
◆森林の少ない都市部では有効活用しきれない自治体も…
ユージ:森林が多い自治体は使い道がありそうですが、森林の少ない都市部では、どうでしょうか?
塚越:そうなんです。東京新聞が関東7都県や東京23区など、合計38ある自治体の2019〜2022年度までの使用状況を調べたところ、東京都や川崎市などは資金を100%使用する一方、さいたま市や東京の板橋区、豊島区といった10の自治体は半分も使っていませんでした。
さらに、4年間で支出が0円だった大田区や渋谷区、台東区は約3億6,000万円の全額を基金として積み上げていて、今後の事業に使うということです。
総務省の担当者は、基金への積立も自治体の判断でOKだと言っているのですが、特に森林が少ない都市部で、使い道がないまま溜め込むのはいかがなものかというのもあります。
全国でみても2019〜2022年の4年間の予算使用率は、速報値で61.4%とあまり使われていません。自治体は人材不足なので、お金を貰ったところで林業の担当者が事業に活用することができない実態もあるかと思います。
◆私たちも「税の使い道」をチェックする必要あり
ユージ:自治体ごとの使い方に大きく差が出る「森林環境税」について、どう思いますか?
塚越:まずは配分の仕方に課題があるかなと思います。今年度からは自治体への配分基準も見直すということで、人口に応じた割合よりも森林面積の比重をより重視し、山間地により多く配分されるようにするとしています。今は、森林面積の50%の比率を55%引き上げて、人口を5%下げるだけなので、根本的な解決にはなりません。
先ほども申し上げましたが、森林が多いところは自治体としても人材不足なので、お金だけ渡しても、なかなかそれで何をするかは難しい……という話もあります。実際に2022年のNHKの報道でも、担当者は「人材が足りない」と言っています。
私たちも年額1,000円払う税金なので、使い道はこれでいいの? とも思います。だったら、もっと良い使い道があると思いますよね。税金を取るだけではなくて、実際どういう使い方をするのかを我々もチェックして、発信していかないといけない。そうすることで、より良い使い方をしてくれるよう(政府に)圧力をかけていく方法もあると思います。
----------------------------------------------------
4月11日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月19日(金) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
◆今年度から1人年額1,000円徴収される「森林環境税」
「森林環境税」が2024年度から新たに住民税に上乗せされる形で徴収されます。対象者は日本国内に住所がある個人。一律1人あたり年額1,000円となっており、税規模は約620億円が見込まれています。
ユージ:塚越さん、「森林環境税」とはどんな税ですか?
塚越:今年度から自治体の森林整備などに必要な財源を確保するため、1人につき年額1,000円が徴収されます。納税義務者は約6,200万人。税収は1年で約620億円にのぼるといわれています。
この「森林環境税」で集められた税金は、全額が国から都道府県市町村に「森林環境譲与税」として配分されます。各自治体は、その税金を使って間伐や林道の整備、林業の担い手の育成、木材利用の促進などをおこないます。簡単に言えば、森林環境税で国民から年1,000円を徴収して、それを「森林環境譲与税」として自治体に配分するということになります。
◆日本は国土面積の約7割が森林 具体的な税の使い道は?
ユージ:似た名前の”税”が2つ並びますが、その「森林環境譲与税」とは、どういうものですか?
塚越:もともとは2015年の「国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議(COP21)」で採択された「パリ協定」にあります。ここで温室効果ガスの排出削減目標などが設定され、そこから2019年に森林環境税と森林環境譲与税が創設されました。
ただし、森林整備は緊急の課題ということで2019年度からすでに国庫からの交付金として「森林環境譲与税」の配分は始まっています。つまり、前倒しで国がお金を出しています。
日本は、国土面積の約7割が森林を占める森林大国です。最近、木材価格の低迷や、所有者がわからない森林の増加、林業の働き手不足が深刻な課題になっているので、国土の保全や水源の保護などが非常に重要ということで導入されました。
吉田:森林環境譲与税の現在の使い道はどうなっているのでしょうか?
塚越:都道府県や市町村では、使い道を公表しなければなりません。実際に総務省のWebサイトに掲載されている活用例として、青森県西目屋村では木質バイオマスを利用して道路の雪を溶かす融雪の実施や、高知県仁淀川町では林業の研修制度による担い手の確保などに使われています。他にも、人材確保のため防護ズボンや安全靴、ヘルメットといった物品購入費用の支援などに使っている自治体もあります。
◆森林の少ない都市部では有効活用しきれない自治体も…
ユージ:森林が多い自治体は使い道がありそうですが、森林の少ない都市部では、どうでしょうか?
塚越:そうなんです。東京新聞が関東7都県や東京23区など、合計38ある自治体の2019〜2022年度までの使用状況を調べたところ、東京都や川崎市などは資金を100%使用する一方、さいたま市や東京の板橋区、豊島区といった10の自治体は半分も使っていませんでした。
さらに、4年間で支出が0円だった大田区や渋谷区、台東区は約3億6,000万円の全額を基金として積み上げていて、今後の事業に使うということです。
総務省の担当者は、基金への積立も自治体の判断でOKだと言っているのですが、特に森林が少ない都市部で、使い道がないまま溜め込むのはいかがなものかというのもあります。
全国でみても2019〜2022年の4年間の予算使用率は、速報値で61.4%とあまり使われていません。自治体は人材不足なので、お金を貰ったところで林業の担当者が事業に活用することができない実態もあるかと思います。
◆私たちも「税の使い道」をチェックする必要あり
ユージ:自治体ごとの使い方に大きく差が出る「森林環境税」について、どう思いますか?
塚越:まずは配分の仕方に課題があるかなと思います。今年度からは自治体への配分基準も見直すということで、人口に応じた割合よりも森林面積の比重をより重視し、山間地により多く配分されるようにするとしています。今は、森林面積の50%の比率を55%引き上げて、人口を5%下げるだけなので、根本的な解決にはなりません。
先ほども申し上げましたが、森林が多いところは自治体としても人材不足なので、お金だけ渡しても、なかなかそれで何をするかは難しい……という話もあります。実際に2022年のNHKの報道でも、担当者は「人材が足りない」と言っています。
私たちも年額1,000円払う税金なので、使い道はこれでいいの? とも思います。だったら、もっと良い使い道があると思いますよね。税金を取るだけではなくて、実際どういう使い方をするのかを我々もチェックして、発信していかないといけない。そうすることで、より良い使い方をしてくれるよう(政府に)圧力をかけていく方法もあると思います。
----------------------------------------------------
4月11日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月19日(金) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
「環境」をもっと詳しく
BIGLOBE旅行 都道府県民限定プランのご紹介♪
「環境」のニュース
-
【New環境展にJCVと支援企業4社が合同出展】「プラスチック再製品化で創る”脱炭素社会”!!」をPRしてペットボトルキャップのリサイクルと子どもワクチン支援を推進5月20日17時46分
-
日報ビジネス株式会社主催 「2024NEW環境展/2024地球温暖化防止展」 に環境・省エネソリューションサービスを出展5月20日17時16分
-
裁判員制度、12万人超が経験 辞退63%、環境づくり課題5月20日16時59分
-
建築物省エネ性能表示制度に伴い全棟「省エネ性能ラベル」表示を順次開始5月20日16時16分
-
補助金採択実績2,000社以上の株式会社東京経営サポーターは、「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」の相談受付を開始しました5月20日16時15分
-
仁志敏久氏 米・独立リーグの劣悪な環境への思い込みであわや...「しょうがねえかなと思った」5月20日15時34分
-
こどもDX推進協会理事にキッズコネクト株式会社 代表取締役 高石 尚和が就任5月20日14時16分
-
【6/8は世界海洋デー】漁師にとっての厄介者「オオズワイガニ」を半身丸ごと使ったパエリアの素が新登場!(5/20〜)5月20日13時46分
-
《グリーナークリーン プロジェクト 〜キッチンから考える環境対策〜》3Mが、キッチン環境や食にまつわる企業7社、都内レストラン4店舗と共同してSDGs取組みのメッセージを発信5月20日13時46分
-
イーディーコントライブ、環境復元ソフトの最新版「HD革命/WinProtector Ver.10 Standard」を5月27日(月)より販売開始5月20日13時46分
トレンドニュースランキング
-
1なぜか600万円安くなっていた家を購入してみた結果 入居後、隣人からのクレームで駐車場が......【前編】 キャリコネニュース
-
2600万円安くなっていた家を購入 駐車場問題の次は、隣人から「エアコン室外機」についてクレームを受けて......【後編】 キャリコネニュース
-
3岩手にも「富士ローソン」撮影できる場所があった 地元YouTuberが「遊びに来て」と呼びかけた理由 Jタウンネット
-
4ドクダミを除草剤を使わず防ぐ方法3選 生態と対策がよく分かる解説に「待ってましたよ!」 「これは嬉しい!」と大反響 ねとらぼ
-
5お肉を自分の陣地でジューッ! 見た目が〝超!エキサイティン!〟な焼肉用鍋が話題に Jタウンネット