地方の生活コストは本当に安いのか? - FPが地方に移り住んで感じたこと 第142回 新生活でのざっくり家計管理術【固定費編】
マイナビニュース2024年4月17日(水)11時0分
「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
3月から4月にかけては、入学や入社、転勤、異動などの理由で引っ越しをする方も多いでしょう。新しい地域での生活は、見るものすべて新鮮で、毎日の生活に新しい風が吹くかもしれません。4月中旬以降になると、水道光熱費(水道代、電気代、ガス代)の検針票等が通知されて新生活1ヵ月目の「固定費」がわかったのではないでしょうか。
「固定費」とは、毎月発生し、支払い額がほぼ一定の費用のことをいいます。例えば、家賃などの住居費、水道光熱費、通信費などが該当します。そこで、今回は、私自身、東京から地方へ、地方から東京へと引っ越しを繰り返し経験したことをもとに、ざっくりした「家計管理術の固定費編」をお伝えしたいと思います。
○水道光熱費を以前暮らしたときの費用と比べる必要なし
東京から地方暮らしになった人は、東京で暮らしていたときより水道光熱費が高く感じた人も多いのではないでしょうか。反対に、地方から東京で暮らし始めた人は、水道光熱費が思っていたより抑えられていると感じているのではないでしょう。
水道代は、地域ごとに基本料金や従量料金が異なり、電気代やガス代は、契約しているエネルギー供給会社によって設定料金が異なるため、以前住んでいた地域での水道光熱費と比較することは、適切ではないと思います。
また、引っ越し前は電気とガスを使用する住宅に住んでいたけれども、引っ越し後はオール電化の住宅に住んでいるというケースですと、「旧住宅での電気代+ガス代」と、「新居でのオール電化の電気代」を比較することも適切ではないと思います。
引っ越し前も引っ越し後も暮らし方に変化はないとしても、住宅の広さが異なればエアコンの消費電力量も異なりますし、お風呂の大きさによって使用する水道量も異なるでしょう。したがって、もう少し大きく見てみましょう。
○固定費が同じくらいなら、「よし」としましょう
1つ2つの固定費の明細を引っ越し前の金額やインターネット上に掲載されている「費用の平均」等と比較するのではなく、自らの家計の「固定費の合計額」が引っ越し前の金額と引っ越し後の金額がだいたい同じくらいならば、「よし」としましょう。
例えば、引っ越し前と引っ越し後の固定費が下記のような場合を見てみましょう。
○<引っ越し前の1ヵ月あたりの固定費(都市部)>
【1】家賃 :100,000円
【2】水道代 : 2,000円
【3】電気代 : 6,000円
【4】ガス代 : 3,000円
【5】通信費 : 6,000円
合計で11万7,000円
○<引っ越し後の1ヵ月あたりの固定費(地方)>
【1】家賃 : 75,000円
【2】水道代 : 2,500円
【3】電気代 : 11,000円 (オール電化住宅の場合)
【4】ガス代 : 0円 (オール電化住宅のためガス代なし)
【5】通信費 : 6,000円
【6】自動車維持費: 24,000円 (通勤等の移動手段として自動車を購入した場合)
合計で11万8,500円(引っ越し前と1,500円差)
あくまでも上記は例ですが、水道光熱費の単体だけを見ると、引っ越し前よりも引っ越し後のほうが、費用が高い場合があります。また、地方では、移動のために自動車を購入するかもしれません。しかし、固定費全体を見たときに、引っ越し前と引っ越し後、大体同じくらいの固定費の合計であれば「よし」としましょう。
水道光熱費の費用が上がったからといって、新生活でいきなり食費や娯楽費など他の費用を削るのは、新生活を楽しめなくなると思います。
領収証やレシートは、1年間保管しておくとよいでしょう。その地域での暮らしならではのお金の使い方というものがあります。新しい土地での生活を1年間送ってみて、費用が膨らんでいるのであれば、家計を見直してみましょう。
高鷲佐織 たかわしさおり ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。 資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。一般社団法人理想の住まいと資金計画支援機構 FPスタッフ。 この著者の記事一覧はこちら
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
3月から4月にかけては、入学や入社、転勤、異動などの理由で引っ越しをする方も多いでしょう。新しい地域での生活は、見るものすべて新鮮で、毎日の生活に新しい風が吹くかもしれません。4月中旬以降になると、水道光熱費(水道代、電気代、ガス代)の検針票等が通知されて新生活1ヵ月目の「固定費」がわかったのではないでしょうか。
「固定費」とは、毎月発生し、支払い額がほぼ一定の費用のことをいいます。例えば、家賃などの住居費、水道光熱費、通信費などが該当します。そこで、今回は、私自身、東京から地方へ、地方から東京へと引っ越しを繰り返し経験したことをもとに、ざっくりした「家計管理術の固定費編」をお伝えしたいと思います。
○水道光熱費を以前暮らしたときの費用と比べる必要なし
東京から地方暮らしになった人は、東京で暮らしていたときより水道光熱費が高く感じた人も多いのではないでしょうか。反対に、地方から東京で暮らし始めた人は、水道光熱費が思っていたより抑えられていると感じているのではないでしょう。
水道代は、地域ごとに基本料金や従量料金が異なり、電気代やガス代は、契約しているエネルギー供給会社によって設定料金が異なるため、以前住んでいた地域での水道光熱費と比較することは、適切ではないと思います。
また、引っ越し前は電気とガスを使用する住宅に住んでいたけれども、引っ越し後はオール電化の住宅に住んでいるというケースですと、「旧住宅での電気代+ガス代」と、「新居でのオール電化の電気代」を比較することも適切ではないと思います。
引っ越し前も引っ越し後も暮らし方に変化はないとしても、住宅の広さが異なればエアコンの消費電力量も異なりますし、お風呂の大きさによって使用する水道量も異なるでしょう。したがって、もう少し大きく見てみましょう。
○固定費が同じくらいなら、「よし」としましょう
1つ2つの固定費の明細を引っ越し前の金額やインターネット上に掲載されている「費用の平均」等と比較するのではなく、自らの家計の「固定費の合計額」が引っ越し前の金額と引っ越し後の金額がだいたい同じくらいならば、「よし」としましょう。
例えば、引っ越し前と引っ越し後の固定費が下記のような場合を見てみましょう。
○<引っ越し前の1ヵ月あたりの固定費(都市部)>
【1】家賃 :100,000円
【2】水道代 : 2,000円
【3】電気代 : 6,000円
【4】ガス代 : 3,000円
【5】通信費 : 6,000円
合計で11万7,000円
○<引っ越し後の1ヵ月あたりの固定費(地方)>
【1】家賃 : 75,000円
【2】水道代 : 2,500円
【3】電気代 : 11,000円 (オール電化住宅の場合)
【4】ガス代 : 0円 (オール電化住宅のためガス代なし)
【5】通信費 : 6,000円
【6】自動車維持費: 24,000円 (通勤等の移動手段として自動車を購入した場合)
合計で11万8,500円(引っ越し前と1,500円差)
あくまでも上記は例ですが、水道光熱費の単体だけを見ると、引っ越し前よりも引っ越し後のほうが、費用が高い場合があります。また、地方では、移動のために自動車を購入するかもしれません。しかし、固定費全体を見たときに、引っ越し前と引っ越し後、大体同じくらいの固定費の合計であれば「よし」としましょう。
水道光熱費の費用が上がったからといって、新生活でいきなり食費や娯楽費など他の費用を削るのは、新生活を楽しめなくなると思います。
領収証やレシートは、1年間保管しておくとよいでしょう。その地域での暮らしならではのお金の使い方というものがあります。新しい土地での生活を1年間送ってみて、費用が膨らんでいるのであれば、家計を見直してみましょう。
高鷲佐織 たかわしさおり ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。 資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。一般社団法人理想の住まいと資金計画支援機構 FPスタッフ。 この著者の記事一覧はこちら
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