【大阪の老舗】日本一の歴史を誇るおでん屋『たこ梅』の魅力とは? 鯨のおでんと熱燗を味わう
食楽web
●日本一歴史のあるおでん屋『たこ梅』を取材。その美味しさの秘訣、名物メニュー「鯨」と熱燗の奥深さとは?
お店の存在は若い頃から知っていて大人になったらいつか行ってみたい……。そんなお店が誰しも1、2軒、ありますよね。筆者にとってのその店が、大阪にある老舗のおでん屋『たこ梅』です。
日本一歴史のあるおでん屋としてハードルの高さを勝手に感じていましたが、実際に取材させていただくと「もっと早く来ておけば良かった!」と思えるお店でした。
おでんの歴史と『たこ梅』の歴史
道頓堀の喧騒からほんの少しの場所に歴史ある1軒のお店
『たこ梅』があるのは、大阪でも一番の繁華街である道頓堀。東へ歩くこと数分、人の通りが少し落ち着いた辺りにおでんと書かれた赤提灯を見つけました。
派手な電飾や看板の多い道頓堀の中にありながら、シックな佇まいの『たこ梅』。創業はなんと180年ほど前の江戸時代、弘化元年(1844年)。日本で一番古くからあるおでん屋と言われています。
関西人にとっても今ではかなり懐かしい関東煮という響き
そもそも“おでん”とは、豆腐やコンニャクを串に刺して焼き、味噌を付けて食べた田楽のこと。やがて醤油出汁で煮込んだ煮込みの田楽が食べられるようになり、それが現在のおでんに変化していきました。
ちなみに煮込み式のおでんが誕生したのは諸説ありますが、日本の関東のものが初とも、中国の広東の料理にルーツがあるとも言われています。関西では昔、おでんを「関東煮=かんとだき」と呼んでいたため、『たこ梅』では現在も「かんとだき」と呼称していますが、お客さんはもちろん“おでん”で大丈夫。
ドラマやCMの撮影などにも使われた年季の入ったカウンター [食楽web]
入り口の目の前には、コの字型のカウンターと大きなおでん鍋。道頓堀の喧騒が嘘のような純和風な内装で、ノスタルジックな世界観が広がっています。
このカウンターは『たこ梅』という店名にも深く由来しています。コの字型のカウンターのお店では、店主が真ん中に立って四方八方のお客さんに対応します。
たくさんのお客さんの対応ができるので効率的だけどその分、大忙し!
そのテキパキと働く様子が8本足のタコのようだということで、コの字カウンターのお店の名前を「たこ○○」とするのが、江戸時代の後期から明治期くらいに流行したそう。
そのような流れがあって、お店では創業者の「梅次郎」の名前から「梅」をとって『たこ梅』と名付けられました。
圧倒的時間が作り出す『たこ梅』のおでん
グラグラと煮込んでおでんを作るのがたこ梅流
カウンターに座って何を食べようかと店内を見渡してみると、懐かしい木札メニューのほかに、ポップなメニュー表もあって思ったよりグッとリーズナブル。
ちなみに、『たこ梅』の代名詞とも言えるメニューが「鯨」。鯨と言えば、鯨ベーコンや大和煮、鯨カツ(ゲイカツ)などが有名ですが、おでんで鯨といえば鯨の舌である「さえずり(R)」と皮下脂肪である「ころ」。
ということで、「鯨」を中心におでんを見繕ってもらいました。
「さえずり(R)」、「ころ」各900円、「大根」300円、「こんにゃく」200円、「たこの甘露煮」1串400円(税抜)
「さえずり(R)」は牛タンのような食感を想像していましたが、趣はかなり別。モニュモニュと噛み切れない食感で、中から旨味があふれる様子は内臓系のホルモンにやや近い感じ。
ずっと食べてみたかった「さえずり(R)」
この鯨の舌をお客さんが噛み続けていた際の音が“小鳥がさえずるよう”だという理由で「さえずり(R)」と名付けたのは、初代店主とのこと。歴史の深さと昔の人のネーミングセンスに脱帽です。
また鯨の皮下脂肪である「ころ」はトロ〜ッとした脂の旨味と、鯨の皮のゴワッとした食感が組み合わさった食べたことのない味わいです。
下茹で3〜4時間、おでん鍋で2時間煮込んだ「大根」は一切の雑味なし。4日も仕込みに時間をかけた「こんにゃく」も絶品で、じっくりと時間をかけて丁寧に作られているのがよくわかります。
ちなみにおでんの出汁は創業以来、毎日濾しながら継ぎ足し続けているそうです。
おでんとはまた違う魅力のある「たこの甘露煮」
サイドメニューの「たこ甘露煮」も有名。おでんとは別の鍋で煮込み、柔らか過ぎずムッチリとした歯ごたえと旨味を感じます。『たこ梅』に来たら、鯨とたこの甘露煮はマストですね。
しみじみとおでんを食べていると、欲しくなるのはやっぱりお酒。『たこ梅』では、お酒の塩梅も最高です。
錫のタンポを湯煎して付ける燗は手間暇も美味しさの秘訣
錫の容器(タンポ)でゆっくりとお燗を付けてくれます。お酒もおでんと相性のいいオリジナル。今ではなかなか見かけない錫の容器で飲むお酒は角がなく、まろやかで甘い飲み口。普段はビールという人でもぜひ味わってもらいたい日本酒です。
日本一歴史のあるおでん屋は、日本一入りづらいお店ではない
日本一の歴史あるおでん屋の鍋番に頑固オヤジは居なかった
『たこ梅』の現在の鍋番を務める和田さんは、飲食で働いていた経験からおでん屋に就職したものの、まさかそこが日本で最も歴史のあるおでん屋とは知らなかったそうです。
最初は常連さんを納得させるのに苦労したものの、試行錯誤を重ねた末に老舗店を受け継ぎ、美味しさを守り続けています。その経歴のためか、和田さんに老舗特有の保守的な空気感はなく、一見さんお断りというムードは皆無。
最近ではセットメニューを展開したり、のれんの隙間から店内を覗きやすいようにして、少しでも入りやすい工夫をしているそう。「現状はどうしても海外の人が多いので、日本の人に来てもらうと嬉しいですね」(和田さん)
シメの汁かけごはんを食べながら
「汁かけご飯」450円(税抜)。オプションとして鯨の大和煮か豆腐が選べる
おでんと熱燗と来たら、やっぱり食べたいのが〆のご飯。創業以来、おでん出汁をかけて食べる「汁かけご飯」も名物の一つなのでいただきましょう。
ズズーっと甘辛い〆飯を食べて、お会計は4000円ほど。一般的なおでん屋よりも少々高めですが、2〜3人でシェアすればリーズナブルですよね。以前は時価だった「ころ」や「さえずり(R)」も、今ではオープン価格。常連さんからすると「たこ梅は安くなった」と言います。
「若い人でもあまり気負わず、フラっと立ち寄って欲しいですね」(和田さん)。筆者のように「たこ梅、ちょっとハードルが高そう」といつか行こうリストに書いてある人は、気軽に美味しい関東煮を味わいに出かけてみてください。
(撮影・文◎けいたろう)
●SHOP INFO
店名:たこ梅 本店(たこうめ)
住:大阪府大阪市中央区道頓堀1-1-8
TEL:06-6211-6201
営:16:00〜21:50(L.O. 21:30)
休:無休(12/31〜1/3の年末年始は休業日)
https://takoume.jp/
●著者プロフィール
けいたろう
旅するグルメライター。大阪と京都をむすぶ京阪電車の沿線在住で、複数の旅行情報サイトにて旅とグルメのガイド記事を執筆。気になるグルメ情報があるとB級グルメも高級店も穴場のお店も有名行列店でも、とにかく幅広く取材!食楽webでは関西グルメ情報を中心に紹介しています。
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