『シン・ウルトラマン』を特撮オタクが観た感想 初代ウルトラマンのリブートだった
『シン・ウルトラマン』公式サイトより (C)2022『シン・ウルトラマン』製作委員会 (C)円谷プロ
今話題の映画『シン・ウルトラマン』を5月17日にとうとう観ることができた。当初は昨年初夏公開予定だったが、新型コロナウィルス感染症の影響で先延ばしとなっていた本作。筆者など重度の特撮オタクにとってはようやくの公開となったので、大変喜ばしい。
できれば公開初日の13日に劇場に走りたかったが、親族の入院という事態が重なり「さすがに当日は無理か」と諦めて、とにかくネタバレを食らわないように気をつけながらSNSを利用していた。
容体が落ち着いたのが昨日、返す刀で劇場にプラズマダッシュモーターを積んだミニ四駆みたいな勢いで駆け込み、とうとう本懐を果たすことができた。早速、こちらのコラムでその話をするものの、ネタバレ一切なし!
ただただ『シン・ウルトラマン』がどのような評価を受けたか。そしていちオタクとして僕がどう感じたか。これについての話に終始したい。
初速はシン・ゴジラを上回る?
報道によると、この映画、公開から3日で興行収入9.9億円を突破したそうだ。観客動員も64万人とものすごい勢いだ。ちなみに、『シン・ゴジラ』の公開3日間の興収は8.4億円だったとのことで、それをも上回っている。
ウルトラシリーズは映画も多数存在するが、僕が知る限りここまでの初動大ヒットは記憶にない。色んな意味で、好スタートを切れた形となる。
Twitterなどでは『シン・ウルトラマン』を観た人たちから賛否両論の声が出ていた。もろ手を挙げて「感動した!」っていう人もいれば、「う〜んちょっと」って人もいる。
僕は初回の観賞を終えた直後に、よく分からない部分があったのでもう一度チケットを購入して矢継ぎ早の2回目視聴を決め込んだが、たしかに手放しで100点満点とは言えないという人がいることは、なんとなく分かる。
ま、お金を払って観てんだから、色んな意見があっていいのだ。個人的にも「え〜?」って部分が一つだけあったので。ここでは書かないし、オタク特有の細かいことが気になってしまう悪い癖が出ただけだろう。
とにかく、SNSでもトレンドに挙がるようになった本作だが、これがはじめて『ウルトラマン』を観た、という人も結構巻き込んでいたようで「シンウル面白いから、もっと色々観てみたい」という投稿もチラホラ。
この結果、従来のファンがオススメ作品情報をシェアするようなムーブも起きて、2020年放映作品『ウルトラマンZ』のタイトルがTwitterのトレンドに急上昇していた。ちなみに『Z』は近年でも屈指の出来だと、子供の頃から怪獣好きな僕も太鼓判を押すので、未見の方は観たほうがいいかもしれない。時間があるときでいいから。
初代『ウルトラマン』を今風にリブートしたら、こういう感じになるよね
で、ネタバレ一切なしで、それでも感想というか、映画を観て感じたものを文字にしてみたいと思う。シンプルに1966年に放映された元祖『ウルトラマン』の基本的な設定やストーリーを大事にしつつ、2022年の世相なんかも加味した形でリブートした作品。それが『シン・ウルトラマン』なんじゃないかなぁという、そういう感想を抱いた。
とにかく世相が違うものだから、設定やシナリオをリスペクトしてオマージュしていても(この場合のオマージュとは、CMに出るようなネロンガ、ザラブなど初代に登場していた怪獣や星人が出るというような部分も含む)、それを取り巻く環境は結構異なるもので。
『シン・ゴジラ』には、災害に対するシミュレーション映画みたいな側面があった。オリジナルの『ゴジラ』を強くリスペクトしつつ、1954年公開の『ゴジラ』とは違う味付けをしているというか、初代は戦争、『シン・ゴジラ』では震災を含む天災を意識させるような作りになっていた。
話をウルトラマンに戻すと、あくまでも個人の感覚ではあるが、オリジナルをリブートしてはいるけど、現代日本をベースにしていて、牧歌的なところも多かったオリジナルとは違い、若干閉塞感のある世界観になっている。
まあ、どっちがいいとか悪いとかじゃないんだけれどもね。現代に近しい世界が舞台になってるのに、1966年の精神性まで継承してリブートしたら、違和感があったと思うし。この辺は上手い匙加減だったんじゃないかなぁ。
それと、ウルトラマンの活躍についても少しだけ。スペシウム光線の描画が原典のように手描きのようなテスクチャになっている。これは本当に再現するのは手間が掛かったんじゃないかと思うところで、劇中でも何度か発射するシーンがあるが、とりわけ中盤の〇〇〇戦での使い方がとてもいい。というかこの〇〇〇戦は全部いい。音楽から戦闘スタイルから、相手の動きから。
本作に登場する巨大不明生物「禍威獣」に関してもちょっとだけ書くと、ネロンガ、ガボラは昨年からおもちゃ屋さんにソフビが陳列されていたが、公開延期となったので活躍する様子も分からず、かなり売れ残っていた。
でもスクリーンに映し出される両雄の暴れ回る様は迫力満点。ガボラ戦でのウルトラマンの立ち回りは本編のように泥臭くなっていて、手に汗握ること必至である。これはソフビも売れに売れるに違いない。
この両怪獣は原典においては同じ着ぐるみの頭などを挿げ替えて用意された流用怪獣としてオタクにはよく知られてるが、本作でも身体のパーツは似通っている。その理由については、実に合理的なアンサーが用意されているので、この辺に関してもお楽しみに。
特撮オタクとしては「これは観るべき映画ですよ」とは言えるし、庵野さんと樋口さんというオタクカルチャーの中核にあるような人たちの作品。「配信待ちしようかな」って人、どうせ観るなら劇場で観ておいたほうがいいよ。
もっと語りたいけど、これ以上書いちゃうとネタバレに触れてしまうのでこの辺で。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。私の好きな言葉です。
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