やつらは白飯を盗んでいきました! 全国の「飯泥棒グルメ」を追跡した
「飯泥棒」と言っても、別に食い逃げとかご飯時に家に上がり込んでご飯を食べて帰っていく面倒な客人のことではなく、ご飯のおかずの話である。
記者にとって最高の飯泥棒は、亡き祖母が漬かりすぎて酸っぱくなった大根の糠漬けを鷹の爪などと煮ものにしたもので、とんでもなくご飯が進んだ覚えがある。もはや同じ味を賞味することはかなわないので、幻の泥棒だ。
個人のレシピはさておき、おいしいおかずは全国に存在する以上、飯泥棒系商品も全国各地にあるのではないだろうか。
味噌系の強さが目立つ
一口に飯泥棒と言っても、実は意味が大きく2つあると思われる。
まず、なんらかのおかずがご飯のお供としてポテンシャルが高すぎるので、「(自分の)ご飯が泥棒されていくように食べ過ぎてしまう」という意味。ご飯を盗んでいる犯人は自分もしくはおかず、つまり「犯人は語り部タイプ」だ。昨今ネットでもよく見かける言い回しで、褒め言葉として商品やレシピを称賛する際に使用される場合が多い。
一方、そのおかずで自分のご飯を食べつくしてしまい、「余所からご飯を盗んででも食べたい」という意味の飯泥棒もある。これは酒の肴の定番「酒盗」などにも通じる、ある意味で正統派だ。ご飯の量を見誤った「もっと炊いておけばよかったタイプ」としよう。
ニシンの一種である「サッパ」を岡山などでは「まま(ご飯)を借りるほどうまい」ということで「ママカリ」と呼ぶのは、「もっと炊いておけばよかったタイプ」の亜種と言えなくもない。
いずれにせよ、すごくご飯に合うおいしいおかずという意味だ。それを自称する飯泥棒系商品事情を見てみよう。ちなみにすべてを実食してはおらず、どちらかというと飯泥棒としての印象論であることをあらかじめお断りしておきたい。
まず、飯泥棒系商品界でもトップクラスによく知られているのが、うら田(岐阜県高山市)から販売されている赤カブの漬物「めしどろぼ漬」だろう。テレビなどでもしばしば取り上げられており、都内のスーパーでもよく見かける。
商品のパッケージには手ぬぐいをほおかぶりして飯桶を抱えて走る男の姿が描かれており、明らかに「もっと炊いておけばよかったタイプ」だ。
同様のイラストで見るからに「もっと炊いておけばよかったタイプ」なのが、大平食品(長崎県南島原市)の「長崎名産めし泥棒」。麦と大豆ベースの金山寺味噌に生姜や昆布を漬け込んだご飯用の味噌だが、甘辛い味付けが好きなら酒のつまみにも利用できる。
味噌つながりでいくと、たつご味噌(茨城県高萩市)の「めしどろぼうさん」も外せない。泥棒に敬称がつけているところを見ると「犯人は語り部タイプ」のようにも思えるのだが、某3代目映画のように「泥棒さん?」と呼ぶ例もあるので、何とも言えない。
ちなみに食べたことがある同僚によると、「唐辛子が入ってピリッと辛いので、きゅうりとかにつけてもおいしい」とのことで、やはり味噌系の汎用性の高さがうかがえる。都内では、茨城のアンテナショップの人気商品になっているようだ。
他にもわた惣(福岡県飯塚市)の「からし金山寺めしどろぼう」など、味噌は多数の泥棒を輩出している。恐らく今回拾いきれていない相当数の味噌飯泥棒系商品があるだろう。
味噌から離れて漬物に戻ろう。敬称つきほどではないが、風格を感じさせるのが京都の名店・打田漬物(京都市)の「京のめしどろぼう」だ。
キュウリ、ナス、ミョウガに唐辛子を少し効かせた手堅い作りの飯泥棒となっているが、「京の」とついたことで単なる泥棒ではない、上方の義賊感が漂う(なおご飯はなくなる模様)。シンプルさも自信の表れなのかもしれない。
「めし」を盗む泥棒が多い中、丁寧に「ごはんどろぼう」となっているのは、北海道夢眠村(北海道旭川市)の鮭フレーク。「ご飯窃盗犯」とかでは剣呑だが、ごはんのどろぼうだとなんだか朴訥とした印象というか、是枝監督の作品名のような安心感がある。「あ、どうぞどうぞ」とご飯を差し出してしまう。
商品のほうも塩分控えめとのことで、塩気でご飯を進ませるのとは違うぞ、という意気込みも感じられる。記者は北海道のアンテナショップで変わり種の鮭フレーク(カレー味とか昆布入りとかホタテ入り)を買うのが趣味なのだが、これは普通に食べてみたい。
今回挙げたもの以外にも何点か飯泥棒系商品は確認しているのだが、全国で数点というわけがなく、広くは知られていない、隠れた(潜伏している?)泥棒たちが今も皆さんのご飯をせっせと盗んでいるはずだ。
「この泥棒も取り上げてくれ」という読者の方々からのタレコミをお待ちしたい。
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