開幕前最後のテストでP.エスパルガロが再びトップタイムを記録/2022MotoGPマンダリカ公式テスト

2022年2月14日(月)12時0分 AUTOSPORT web

 2月13日、インドネシアのマンダリカ・インターナショナル・ストリート・サーキットでMotoGPの公式テスト3日目が行われ、ポル・エスパルガロ(レプソル・ホンダ・チーム)がトップタイムを記録した。P.エスパルガロは3日間の総合結果としてもトップでマンダリカテストを終えている。


■ホンダ:トップのエスパルガロ、開幕戦に向けた準備は完了


 P.エスパルガロは1分31秒060という3日間の総合トップに立つタイムを記録した。P.エスパルガロは現地時間17時までのテストを14時には切り上げ、そのため38周という少なめの周回数でテスト最終日を終えているが、P.エスパルガロにとって上々のテストだったようだ。


「バイクは素晴らしい、1周でのポテンシャルを示している。そのポテンシャルというのは、昨年から僕たちが求めていた改善だったんだ。でも、一番大事なのはペース。僕たちのペースはいいよ。それに、カタールでは自信を持つことが大事だ。カタールはコーナーがとても近いからね。すでに準備は整っていると感じているよ」


「(開幕前に)これほど速さを感じていたことはなかった。ホンダは間違いなくいい仕事をしてくれた。でも、これはテストだ。テストではペースも1周のラップタイムもよかったけれど、テストでポイントは得られない。数週間後にはカタールにいる。今回のテストで得たアドバンテージを生かさないとね」


 マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は14番手で終えているが、タイムアタックをしなかったことがその要因にある。M.マルケスはウインターブレイク中、療養に努めていたため、フィジカル面を万全に整えた状態でテストに挑むというわけにはいかなかったのだ。この日、タイムアタックをしなかった理由もフィジカル面にあった。「今日僕は14番手だ。だから、まだ準備ができているとは言えないよ」と苦笑いをまじえて言いつつも、ホンダが苦しい2シーズンを経て大きく進化させたバイクへの手ごたえは感じている。


「今日はただ、楽しむことが今日を乗り切る方法だったんだ。最初からとても疲れていたから。今日は肩に痛みを感じていたので、タイムアタックをしなかった。タイムアタックではかなり力を使うからね。だからラップを刻むことにして、セットアップの作業をしていたんだ。バイクを感じ、スライドを感じていたので楽しかったよ。(開幕戦の)カタールでまたこの感覚が得られるのかどうか確認するよ。ただ、ここ(マンダリカ)とマレーシアテストでは全く違っていた」


「今日は確かに速さがあったし、ペースもよかったし、うまく走っていた。いろいろなセットアップを試してラップタイムが上がり、いろいろな空力デバイスを使用してラップタイムが上がった。そしてミディアム、ソフトといろいろなタイヤを試してラップタイムが上がった。このフィーリングがあるときは、(バイクの)ポテンシャルがあるってことなんだ」


「ハッピーだよ。仕事が終わった状態でこのマンダリカから帰ることができるんだからね。もちろん僕としては特別なフィーリングを、バイクにはまだ持っていない。それでもラップタイムは上がっている」


■ヤマハ:クアルタラロが感じた限界


「僕としては100パーセント、準備ができている」と自分自身をしっかりと仕上げたファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が2番手だった。この日、クアルタラロは20周近くのロングランを行った。クアルタラロはレースペースには満足しているものの、予選でのアタックラップの速さについては満足できていない。


「今朝はとても速かったよ。ただ、フィーリングはそこまでいいというわけではなかったから、あまり満足はしていなかった。午後は同じようなコンディションで、ラップタイムが上がったというのもあるけど、フィーリングがとてもよくなったから満足だった。でも、残念なことに限界に到達してしまった。どこもかしこも限界だと感じていた。確かにラップタイムは上がったんだけど、もっとよくなると思っていたんだ」


 一方、この日4番手だったフランコ・モルビデリ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は昨年に手術を受けた左ひざの状態により、フィジカルが万全ではない。今後、開幕戦までにフィジカル面の向上に取り組んでいくという。


「特に家から離れているときは、ひざのトレーニングを少し控えめにする必要があった。セパンとここでは、みんなが走りに行くのを見ていた。ファビオは朝に1回、午後に1回、夜に1回走っていた。でも僕は歩くだけだった。家に帰ったら、その部分(体の面)でも回復させていかないとね。ひざを痛めなかったのはよかったと思う。テストではひざを曲げられたし、感じもよかった。でも、身体的にはベストではないね。だから家に帰ったら、全体的によくしていこうと思うんだ」


■アプリリア:バイクに大きな変更はなく、全てのパーツを改良


 この日3番手につけたのはアレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング)で、マーベリック・ビニャーレス(アプリリア・レーシング)とともに、アプリリアとしては2日間のセパン公式テスト、3日間のマンダリカ公式テストの計5日間で必ずトップ5以内に入っている。


 A.エスパルガロは2022年型バイクの改善点を尋ねられ、「ほぼすべてのパーツが改良された。大変革ではないが、全てのパーツが2021年型よりも進化しているのははっきりしている」と回答した。
 
「コーナリングスピードの軽快さ、旋回性、これは僕たちが最も改善した部分だ。また、エンジンは少し力強くなった。エアロダイナミクスもそうだ。バイクはよくなり、速くなったし、2021年よりウイリーが軽減された。全体的にバイクは改良されているんだ」


 A.エスパルガロとしてはまだ完全に満足できる状態ではないものの、それでも自分たちが行った仕事については満足のいくものだった、としている。


 ビニャーレスも「今のやり方は正しいと思う。だんだんバイクのフィーリングはよくなっている。まだバイクを理解する必要はあるし、走る必要はあると思うけどね」と、バイクが持つ可能性は感じているようだ。さらに「レースウイークでも取り組み方、特に45分のセッションでバイクがどう走るのかを確認するよ。ただ、僕は楽観視している。フィーリングが完ぺきではなくても、トップ5に入っているんだからね。特にレースペースがいいんだ。だから、楽観しているし、もっとバイクが良くなるだろうって自信があるんだ」とも語った。アプリリアは現在、コンセッション(優遇措置)を受ける唯一のマニュファクチャラーであり、シーズンが開幕したあとも、テストやエンジン開発などに関する規制が緩和されているのである。コンセッションは今季のアプリリアにとってさらなる追い風となることだろう。


■ドゥカティ:レースシミュレーションでコンスタントなタイムを刻む


 マンダリカでのテスト3日目はフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)が4番手、ジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)が15番手だったドゥカティのファクトリーチーム。バニャイア、ミラーともにロングランを実施し、1分33秒台のタイムをコンスタントに刻んでいた。


 ミラーは開幕戦に向けた準備ができているのか、という質問に「できてないよ、いつできるんだ?」と彼らしい答え。「つまり、レースはレースってことだよ。全く違う。開幕戦に行く準備はできていると思うけど」と続けた。


「僕の顔を見ればわかるように(※このとき、ミラーのほおは紅潮していた)、本当に暑くて長い1日だった。でも、とにかく今日は必要なことをやり遂げた。残念ながら最初のロングランで、フルタンク状態のときにちょっとした転倒があったんだ。ちょっと腹が立ったけど、幸い、、また別のバイクを用意して、またコースインできた。ただ、僕としてはレースシミュレーションをすることが大事だったんだ」


 テストを総括して「(テストを通してバイクの状態を把握するのには)決して十分だったとは言えないよ。こういう立場だと、常に心に疑問を持っているものなんだ。でも1日の終わりには、自分の信念を貫く必要がある。理解したこと、エンジニア、みんなを信用することが必要なんだ。テストの総括としては、たくさんの仕事をしたし、とても楽しかった。楽しい仕事量だった」と、充実したテストだったことをうかがわせた。
 


■スズキ:ミルが体調不良によりテストをキャンセル


 スズキはアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)が6番手タイムを記録した。
 
「今日はよかったし、5日間のセパン、マンダリカでのテストもよかったと思う。バイクのフィーリングはとてもいい。かなりバイクを改善できた。とても満足だよ。(開幕戦の)カタールに向けて準備は整っていると思う。どの位置にいるのかは言えないけどね。でも、ここと同じ気持ちでカタールに挑めば、いい仕事はできると思うんだ」と、テストに満足した様子だった。


 一方、スズキが課題とし続ける予選順位の改善については「予選について改善できたのかどうかはわからない」とするも、エンジンのアップデートについては満足しているという。


「午前中はシミュレーションをして、トップから0.4秒差の5番手だった。まだ遠いね。でも全体としてはハッピーだよ。バイクは少し速くなった。それに、今回のテストにおいて、より印象的だったのはエンジンだ。エンジンの馬力を上げるのは簡単じゃない。スロットルのファーストタッチのよさ、そういうものを得るのには時間がかかるんだ。でも(昨年バレンシアGP後にテストが行われた)ヘレス、マレーシア、ここでは、エンジンがとてもよかったんだ」


 本来、マンダリカでの3日目のテストも走行する予定だったジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)は、体調不良により走行をキャンセルした。軽い食中毒の疑いがあるとされ、ただし医師の診断により新型コロナウイルス感染症が陽性である可能性はないという。ミルは走行することなくホテルで過ごすことになった。


 思わぬ体調不良により1日分のテストに参加できず終わったミルだが、チームによるミルのコメントによれば、「マンダリカではいろいろあったけど、開幕戦のカタールではいい状態で臨めると思う」と語られている。
 


■KTM:ミディアムタイヤでの走りに注力


 KTMはブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)が9番手、ミゲール・オリベイラ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)が11番手。ビンダー、オリベイラともに、この日、ロングランに集中したという。
 
 ビンダーは「今日はタイムアタックにはあまりフォーカスしていなかったんだ。午前中に1回しただけ。あとはミディアムタイヤで走っていた。ミディアムタイヤは、僕たちのバイクでは特に、または僕が自信を感じるのに苦労するタイヤだと気がついたんだ。たくさん走って、ミディアムタイヤでのセッティングを改善していった」とミディアムタイヤで取り組んだことを明かした。
 
 オリベイラも「暑いときに、ミディアムタイヤでたくさん仕事をしたんだ。レースシミュレーションをした。それはうまくいったよ。ペースもよかったし、ファステストラップも出た」とレースシミュレーションの取り組みを実施。最後にはタイムアタックを行ったという。昨年の特にシーズン後半で予選に苦しんでいたKTMだが、オリベイラは「予選で何をすべきか、グリッド順位を上げのるにどうしたらいいのか、ちょっとはわかったと思う」と述べている。


 ビンダーは「この5日間のテストで、より多くのことを成し遂げ、去年シーズンを終えたときよりもハッピーな状態でマシンを走らせることができたと思う。バイクは走るようになったし、フィーリングもよくなった。カタールではもう少し、差を埋めてセッティングを工夫して上位に食い込めるようにしたい。でも、チームには感謝だ。彼らはとても頑張ってくれたし、バイクをよくしてくれた。セパンを後にしたときより、ずっとずっと満足してマンダリカを離れるよ」と、明るいコメントでテストを振り返っていた。
 
 2022年シーズンMotoGPの開幕前の公式テストは全日程を終えた。シーズンは3月6日決勝レースの開幕戦、カタールGPでついにその口火を切る。

AUTOSPORT web

「テスト」をもっと詳しく

「テスト」のニュース

「テスト」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ