札幌といわきが出場した「パシフィック・リムカップ」…大会の仕掛け人が明かすハワイを開催地に選んだ理由

2018年3月9日(金)21時5分 サッカーキング

「日本サッカーが海外へ出ていくために、この大会がきっかけになることを願っています」

 そう語るのは、かつてバルセロナやメジャーリーグサッカー(MLS)の勤務経験を持ち、現在はブルー・ユナイテッド・コーポレーションでJリーグのクラブやMLSの海外事業をサポートする中村武彦氏だ。Jリーグ開幕を2週間後に控えた2月初旬、米国のハワイでとあるサッカー大会が産声を上げた。日本からはJリーグからコンサドーレ札幌と、東北リーグ2部に所属するいわきFCが参加し、MLS(メジャーリーグサッカー)のコロンバス・クルーSCとバンクーバー・ホワイトキャップスFCと対戦した。2月10日に行われた決勝戦では、コンサドーレ札幌がバンクーバー・ホワイトキャップスFCを1-0で下し、初代チャンピオンに輝いた。

 大会の名前は『パシフィック・リムカップ』。長く海外サッカーに携わり、いまは日本と海外の懸け橋として日本のサッカー界を見つめてきた中村氏は、サッカーの国際大会を実施するために必要なFIFAマッチエージェントの資格を持ち、この大会を企画した張本人だ。彼はなぜ、ハワイの地でこの大会を開催したのだろうか? 大会を終えたばかりの同氏に話を聞いた。

1年目の目標はハワイの人たちにこの大会を受け入れてもらうことだった

 大会を終えて、まだ落ち着いて振り返れていないですが、「スタッフ皆よくやったなあ」というのが正直な感想です。大会の開催が決まった昨年9月から立ち上げた急造チームでしたが、今回のスタッフは本当にハマりました。短い準備期間の中、厳しく接する私に皆がよくついてきてくれたと思います。観客動員は目標の1万人を突破し、ハワイ州はすごく喜んでくれて、観光局の方から複数年契約したいというお話もいただきました。

 今大会のスポンサーであり、大会に参加したいわきFCのオーナーでもある株式会社ドーム様は、一年目なのでやれることは一緒にやっていこうという話をしていただき、見守ってくれたことに感謝しています。やってみないと分からない、一年目に何もないゼロからイチを生み出すのは大変だということを安田秀一社長が理解して下さっていたので、2年目に向けて色々な改善点をどうやってもっとよりよくできるかという話をしています。

 コンサドーレ札幌の選手からも、プロレスラーのようなストッパー選手とガチガチにやり合うなど、アジアにはいない対戦相手との真剣勝負は、こういう大会じゃないと味わえない、強化の意味ですごく意義があったと言っていただきました。ただ、ハワイは観光には適していますが、サッカーのようなチームスポーツをする環境、練習環境がまだ整っていないので、札幌の野々村芳和社長もそこについては「ギリギリだね」という話をされていました。

 僕が事前にいくら「この芝生じゃダメだよ」と言っても、現地の人は実感がわかない。でも、プロのチームが4つも来て、もうちょっと芝生良くしてよとか、練習環境良くしてよと言うと、気づくんですね。毎年継続することは、ハワイがプロスポーツを受け入れるためのレベルアップに繋がるから意義があると思っています。一年目はとにかく地元の人たちに受け入れてもらう、知ってもらうことが最重要任務でしたが、そこは達成できたと思っています。

アジアと北米はサッカー界にとってのラストマーケット、その中心にハワイがある

 2年目のフェーズは、日米サッカーの間で目に見える活動をこのプラットフォーム上で立ち上げることを目指します。日米のサッカーは似たような時期にプロリーグできたり、似たような歴史を辿っていって、目指すところも同じなので、協力すれば面白いことができると思っています。いま、ハワイにはプロスポーツがありません。諸問題で、NFLのプロボウルが毎年開催されていたのもなくなり、これが唯一のメジャースポーツの大会になります。ただし、毎年2月だけやっても他の期間はガランとしちゃうので、このブランドで例えば、ユースの大会を夏にやってもいいし、大学生や女子の大会をやってもいい。あるいはサッカー選手がハワイでクリニックを単発でやったりもしているので、もう少しそういうのを体系立てて、年間をとおしてサッカーができたら可能性が広がると思います。ハワイは元々、観光にみんなが行く場所ですし、インフラは整っている。あとはスポーツのインフラが整うようになってくれれば、そういうことも可能だと思います。

 サッカーは南米とヨーロッパの2つを中心に回っていて、ワールドカップもカレンダーも移籍マーケットも全部ヨーロッパ中心です。それらに対して太平洋地域は、新興リーグたちが台頭している地域で、サッカー界にとっては新興市場なんです。この地域が新しい市場だっていうのはみんな分かっているからこそ、ヨーロッパのクラブも北米ツアーとアジアツアーを交互にやるじゃないですか。みんなこの市場を開拓しようとしている。ここって僕は勝手に「サッカー界のラストマーケット」って言っているのですが、世界中どこに行ってもサッカーがある中で、この地域だけ新興リーグが密集しています。どういう形であれ、この大会がみんなの交流のきっかけになればと思います。日本はアジア進出を積極的にやっていますが、それ以外の海外に出て行くことに自分の経験とかネットワークがきっかけになればうれしいです。



 僕はキャリアを通して海外のサッカーを日本に持ってくる仕事をしてきましたが、MLSでも、バルセロナでも、それぞれに関わった時、彼らが自分の国のサッカーに誇りを持っていて羨ましかったのを覚えています。MLSは世界でも注目される急成長のリーグですし、バルサはカタルーニャのシンボルです。個人的な想いとしては、やっぱり日本のサッカーは世界でも凄いんだよってことを見せられるようにしたいです。Jリーグにこだわっているわけではないですが、そもそも日本のサッカーを発信する方法がないと思って自分の会社を立ち上げたので、この大会を作ったことで、日本がアジアだけではなく西洋に進んでいける道筋になったのかなと思っています。

 JリーグとMLSは、両リーグともすごい勢いで伸びているし、もうちょっと手を組んでもいいと思います。ただ、ヨーロッパも日々進化しているので、日本とアメリカが単体で追っかけてもなかなか差は縮まらないと思うんですよ。世界レベル、100年以上歴史のあるヨーロッパに一長一石には追いつけないので、横の展開、繋がりを使うと面白い化学反応があると思います。どちらもアジア連盟と北中米カリブ海連盟という大陸連盟のリーダー的な存在ですし。そのど真ん中にハワイという面白い島があるので、日本もアメリカもスポーツビジネスってエンターテイメントだよねと、ハワイで面白いことを仕掛けてもいい、新しい地域なんだから新しい考え方をしてもいいんじゃないかなと思います。古く凝り固まる必要はなく、新しいことにどんどんチャレンジして、世界のサッカーに旋風を起こしうる2つのリーグだと思うので、時間はかかりますが、今回は一歩目を踏み出せたかなと思っています。

サッカーキング

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