電動車両『FC1-X』は「世界最速、最強のEVラリークロス車両」として2022年ナイトロRXデビューへ

2022年3月14日(月)10時27分 AUTOSPORT web

 2021年9月より北米大陸待望の新選手権としてスタートを切った『Nitro Rallycross(ナイトロ・ラリークロス/NRX)』が、来るべき2年目のシーズンに向け「ファンの概念を変える」新たな電動クラスの導入を発表。兼ねてより開発が公にされてきた『FC1-X』と呼ばれるフルエレクトリック“SUV”による『グループEクラス』を立ち上げ「これまでに全世界で製造されたなかで最も速く、最も強力なラリークロスカー」による勝負が繰り広げられるという。


 大会史上初めて雪上と氷上での戦いとなった2022年のレース・オブ・チャンピオンズ(RoC)で、すでにパブリック・デビューを果たしたFC1-Xに関して、NRXのゼネラルマネージャーを務めるチップ・パンコウは「世界で最も速く、最も有能なラリークロス車両を作るための2年半の研究成果であり、それが実際に具現化されたんだ」と、その性能に自信を見せた。


「本当にふたつの点で集大成になった。まず第1のテーマに据えられたのが、このスポーツの魅力を再考し、より大きなジャンプとアクシデント満載のトラックレイアウトを具現化したいというシリーズ側の願望だった。とくにサスペンショントラベルの観点で、このクルマは既存の内燃機関スーパーカーを上回る性能を備えている」と、その開発プロセスを語ったパンコウ。


「加えて、世界は電気自動車に向かって突き進んでいる。でも、我々はただ電気を使うためだけに電動化したくはなかった。恐ろしい“E(エレクトリック)”ワードの後には“グリーン”による体(てい)の良い搾取や『グリーン・ウォッシング(環境配慮をしているように装い、欺瞞的、詐欺的な訴求で消費行動を促すこと)』の告発が続くことがよくあるしね。しかし、ラリークロスと電動化の相性が良いことは確かなんだ。だから独自の個性を持つNRXとして、可能な限り最も強力で、最も効率的なクルマを目指した」


 シリーズ発起人であり、初年度のタイトルも獲得したトラビス・パストラーナは、ラリーやラリークロス界のトップドライバーとして活動するかたわら、スタント・ドライブやエクストリームスポーツの第一人者としても知られる。そんな男が創設したシリーズでは、数十メートルの“飛距離”を要するジャンプが必須のトラックレイアウトや、NASCARチャンピオンなど豪華ゲストを招聘したドライバーラインアップなど、既存の概念を覆す演出がなされてきた。

ピークパワーは800kW(約1070PS)と、現行の内燃機関スーパーカーに対して『倍』の出力を誇る『FC1-X』
ラリークロス界の名門ビルダーとして活動する北欧のオルスバーグMSEと、スペインの電動モビリティ企業であるQEVテクノロジーズが共同開発する


■オルスバーグMSE代表「既存のEVレースカーとは異なる点が多い」


「だから、この電動化プロジェクトも最初から最後までトラビスの信念が貫かれている。このシリーズを“グリーンウォッシュ”にしたくはないからね」と続けたパンコウ。


「もちろん同じ週末に既存のスーパーカーもバトルを繰り広げる。そのうち5%でも良いから、ファンが『クールだ!』と思えるようなエレクトリック・カテゴリーを創出したいんだ」


 このFC1-X自体は、ラリークロス界の名門ビルダーとして活動する北欧のオルスバーグMSEと、スペインの電動モビリティ企業であるQEVテクノロジーズが共同開発しており、ピークパワーは800kW(約1070PS)と、現行の内燃機関スーパーカーに対して“倍”の出力を誇る。


 その出力をフロント1速、リヤ3速のサデフ製トランスミッションを介して伝達し、電動レースカーとして初めて、プロペラシャフトに接続されたハンドブレーキを搭載。リヤの駆動をロックさせる方法として、後輪へのモーター出力を単にカットする従来型EVでの既存の方法より、多くの感触をドライバーにもたらすという。


 最高速は180マイル(約290km/h)をマークし、1100Nmという途方もない最大トルクと、350mmの最大ホイールトラベル量により抜群のトラクション性能も発揮し、0-100km/h加速はわずか1.4秒。さらに適切な路面条件下では1秒切りも達成可能だという。


「実際には非常に機敏で(現在のフォード・)フィエスタよりは大きいが、ホンダ(・シビック・クーペ・タイプR)よりは小さい」と、製造を担当したオルスバーグMSEのアンドレアス・エリクソン代表。


「どこから説明を始めれば良いか分からないぐらい、既存のEVレースカーとは異なる点がたくさんある。従来のコンバーターではなく炭化ケイ素(SiC)コンバーターを採用するのもそのひとつだ。実際に目の前で披露すること以外に、すべてを説明するのは難しいね」


 コスト面でも既存のICE(内燃機関)搭載スーパーカーを価格面で下回る「持続可能性」が狙われており、すでに14台のFC1-Xが販売され、16台の車両が製造を終えている。初期のカスタマーにはドレイヤー&レインボールド・レーシング、グロンホルムRX、エキサイト・エナジー・レーシングなどのチーム名が明かされており、この3月上旬からさらなるデリバリーが進められる。

350mmの最大ホイールトラベル量により抜群のトラクション性能も発揮し、0-100km/h加速はわずか1.4秒。さらに適切な路面条件下では1秒切りも達成可能だという
すでに14台の『FC1-X』が販売され、16台の車両が製造を終えているという

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