中須賀克行に聞く、チャンピオン獲得に必要な意識と考え方。メンタルやモチベーション維持の方法

　いよいよ2023年シーズンの全日本ロードレース選手権が開幕となる。最高峰JSB1000クラスで、2021年から全戦全勝の23連勝を達成して、11度目のタイトルを獲得した中須賀克行（YAMAHA FACTORY RACING TEAM）に『チャンピオン』についての意識や考え方を聞いた。

　2005年よりJSB1000に参戦する中須賀が、初めてチャンピオンを獲得したのは2008年。2022年に11度目のチャンピオンに輝き、2023年もJSB1000で戦う。

　まず中須賀にレースでの目標を聞くと、「レースに出ている以上チャンピオンを目指すのは当たり前だけど、“一戦一戦をどう勝つか”が先に見えているのがチャンピオンだと思うので、常にレースでどういう風にすると勝てるかだけを考えています」と語った。

　優勝し続けながら、チャンピオンを獲得できる理由聞くと「理由はないですよ。みんなと一緒のことをしているだけですからね」という。

　しかし、その後に「みんな強いと思うけど、人より“勝ちたい”ということに対して何を準備して普段どう過ごすか。それをしっかり捉えてやることで何をするべきかが見えてくるし、それを確実にやっているだけです。特別なことをしているわけではないですよ」と続けた。

「しっかり準備してウイークには入ってきているつもりなので、それが結果に繋がっていると思っています。それが結局、一番難しいですけどね」

　そう語る中須賀は、チームが第一とも語っていた。レースではライダーの実力も求められるが、チーム全員が一致団結して戦うことも求められる。中須賀いわく「みんなどうすれば勝てるか熟知しているし、チームは常に完璧な状態で送り出してくれる」と説明した。

「みんなが勝つために同じ方向を向いているのはすごく大事だと思います。『絶対ミスがあってはいけない。勝つためには自分がしっかりしていなければならない』という各々のモチベーションが同じ方向に向いていることが結果に繋がっていると思っています」

　ライダー、チーム、マシンまでもが隙がないように感じるが、そんな中須賀でも時には落ち込むことがあるという。

「負けた時は一日落ち込みます。自分の想定していたタイムを超えられなかったり、2022年最終戦で言うと鈴鹿のコースレコードをなかなか超えられなかったりしたのは悔しいし、どうすれば改善できるかを常に考えています」

「何が悪かったのかをしっかり受け止めて、もう次はすぐ、明日になったら次に向かって、どうすればいいかを考えるようにはしていますね。基本落ち込むけど、できるようになるには何をすればいいかを噛み砕いていきます」

　そう語った後、「とにかく基本負けず嫌いなんじゃないかな、すごく。負けるの大嫌いだもんね」と続けた中須賀。2年連続の負けなしで“絶対王者”と呼ばれるが、長年戦ってきたJSB1000クラスでは敗者の気持ちも経験してきた。

「いずれ負けはくるはず。でも負けたとしてもしっかりとそのレースをやりきれるように準備しておきたいですね。『準備できてなかったから負けました』ではなくて、『準備していても今回はライバルが速かった』という風にしたいです」

　また、どのレースも「楽勝と思ったことは全くない」といい、「手を抜くことが1番の失礼。常にどんなレースも100％を出してレースをしてるつもりだから、楽なレースと思ったことは1度もなく、その時の自分が出せるベストを出せて勝てています」と語った。

　近年はMotoGPのワイルドカード参戦や鈴鹿8耐への参戦はないが、その状況でも中須賀は悔しさを感じることはなく、勉強になったと述べた。

「（MotoGPは）開発ライダーをしているので、彼らが言ってるコメントに対してバイクがどう動いてるのかを見る良い機会になったし、勉強させられました。同じバイクなのにどう走らせているかを見て感じることができたので、テストライダーとしては非常にポジティブな経験だったかなと思います。（鈴鹿8耐は）家で見たけど、やっぱ出たいと思いました。もし出ていたらどう走ってたを想像しながら見てました」

　そんな中須賀にチャンピオンを獲る秘訣について最後に聞くと「やっぱり前もっての準備ですね」と切り出した。

「レースウイークにあたふたしても良くなるわけではないし、その時に課題が見つかったのなら、次のレースまでに自分を追い込んで、これだけ準備してきたから絶対に負けないぐらいのことをやると、どんどん変わってくると思います」

「僕はそうしてきているし、勝ち続けていても勝ちたいから準備しています。だからもっともっと追い込むべきではないかなと思います」