【J1リーグ2023】湘南、山口監督の守備戦術が奏功。ドローの横浜FM戦を検証

2023年4月17日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE

町野修斗(左)山口智監督(中)平岡大陽(右)写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第8節の全9試合が4月15日に行われ、湘南ベルマーレは本拠地レモンガススタジアム平塚で横浜F・マリノスと対戦。最終スコア1-1で引き分けた。


昨2022シーズンのJ1リーグを制した横浜FMを苦しめ、勝ち点1をもぎ取った湘南。同クラブを率いる山口智監督がどのような守備を自軍に落とし込み、これが如何ほど機能したのか。ここでは横浜FM戦を振り返るとともに、この点について検証する。




湘南ベルマーレ FW鈴木章斗 写真:Getty Images

湘南vs横浜FM:試合展開


一進一退の攻防が続くなか、均衡を破ったのは横浜FMだった。


後半20分、湘南のMF阿部浩之のバックパスをカットした横浜FMのMF水沼宏太が、すかさず縦パスを送る。このボールに反応したFWアンデルソン・ロペスがペナルティエリア内で右足を振り抜き、先制ゴールを挙げた。


湘南は横浜FMに度々チャンスを作られたものの、GKソン・ボムグンが好セーブを連発。前半38分にA・ロペス、同41分にFWエウベルとの1対1を制すると、後半6分にも相手MF渡辺皓太の強烈なミドルシュートをストップ。数々のファインプレーで湘南を救った。


複数失点を免れた湘南は、試合終盤に横浜FMの一瞬の隙を突く。


後半36分、横浜FM陣内での浮き球パスに途中出場の湘南DF畑大雅が詰め、ボール奪取。ここから湘南の遅攻が始まると、DF杉岡大暉が左サイドからクロスを放つ。このボールに途中出場のFW鈴木章斗が右足で合わせ、ホームチームが試合を振り出しに戻した。前節のFC東京戦(2-2)の試合終盤に、勝ち越しゴールのチャンスを物にできなかった鈴木の活躍により、湘南が貴重な勝ち点1を手にしている。




湘南ベルマーレvs横浜F・マリノス、先発メンバー

緻密だった湘南の守備


お馴染みの[4-2-1-3]の布陣で臨んだ横浜FMに対し、湘南がハイプレスを仕掛ける。基本布陣[3-1-4-2]のFW町野修斗とMF阿部浩之の2トップ、及びMF平岡大陽とFWタリクの2インサイドハーフが中央のレーンを封鎖。この4人のうち3人がポジションを入れ替えながら最前線に立ちはだかり、横浜FMの2センターバック(DF畠中槙之輔と角田涼太朗)から2ボランチ(MF喜田拓也と渡辺皓太)へのパスコースを塞いだ。


湘南の守備隊形(1)タリクが最前線に上がるパターン

湘南の守備隊形(2)平岡が最前線に上がるパターン

左のハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、左右の内側のレーン)を駆け上がる横浜FMのDF永戸勝也には、湘南のFWタリクがマンツーマン守備で対応。自陣に降りてパスを捌こうとしたアウェイチームのFWマルコス・ジュニオールには、大岩一貴と舘幸希の両DFが最終ラインから飛び出して守備を行った。


これらの連動性溢れる守備に加え、ハイプレスを掻い潜られた際の[5-3-2]の隊形への移行も素早かった湘南。メリハリのあるディフェンスで、昨年のJ1リーグ覇者と互角に渡り合った。


横浜F・マリノス MF山根陸 写真:Getty Images

横浜FMに足りなかったもの


横浜FMはGK一森純や最終ラインからのパス回しの際、MF山根陸と永戸の両サイドバックが自陣後方に張り付く。これにより、特にキックオフ直後は湘南のハイプレスの餌食となった。


喜田と渡辺の2ボランチが、自軍のセンターバックとサイドバックの間へ降り、湘南陣営のハイプレスを回避するなどの工夫もあまり見られず。自陣での隊形変化をより多く織り交ぜること。これが横浜FMの今後の課題と言えそうだ。




湘南ベルマーレ MF永木亮太 写真:Getty Images

後半は湘南の運動量が低下


一方の湘南は、前半と後半開始直後はハイプレスが機能していたものの、後半13分あたりからチーム全体の運動量が低下。横浜FMが自陣後方でパスを回した同13分では、左サイド(湘南の右サイド)でボールを受けたDF永戸や途中出場のFW西村拓真への寄せが緩く、アウェイチームの前進を許してしまった。


横浜FMが自陣からのロングパスを織り交ぜるようになり、特に後半は湘南が守備隊形を間延びさせられる展開に。基本布陣[3-1-4-2]の中盤の底、MF永木亮太の両脇を横浜FMのFWアンデルソン・ロペスやマルコス・ジュニオール、西村に使われ続けたことも劣勢の原因となった。




湘南ベルマーレ 山口智監督 写真:Getty Images

「落とし込みが足りなかった」と山口監督


湘南の山口監督は試合後コメントで自軍の選手を労うとともに、自身の反省点を挙げている。


「去年は(横浜FMに)全く歯が立たなかったんですけど、なんとか積み上げてきたものを出して勝とうという話をして臨んだ試合でした。前半のところで言うとチャンスもありましたし、ピンチもありました。選手の表現の仕方や試合に取り組む姿勢というのは、すごく前向きなところがあったので、ポジティブな要素がある反面、自分自身はまだまだ(選手への)落とし込みが足りないなと感じました。試合ではミスから失点して、よく1点取り返したなと。失点をして崩れることもあるので、そういうことを考えるともうちょっとのところだと思いますし、そのもうちょっとのところが難しさでもあるので、終わってから選手には向き合っていこうという話をしました。試合としては、勝ちたかったですけど、素晴らしいチームに対してよく追いついたなと。そういうゲームになりました」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部補正)


チーム全体の運動量が低下し、ハイプレスがままならない時間帯があったとはいえ、前線での良い守備から速攻を繰り出せたのも確か。神出鬼没なポジショニングで相手の守備隊形を乱してくる横浜FMの左サイドバック永戸を、タリクによるマンマークで抑えたのも流石だった。


湘南の今後の課題は、チーム全体の運動量が低下する後半をいかに凌ぐかだろう。今節の後半13分以降のようにハイプレスがままならず、MF永木(中盤の底)の周囲を相手に使われ続ける展開では、一旦[3-4-2-1]や[5-4-1]の布陣による撤退守備に切り替える。そのうえで選手交代を行い、チーム全体の運動量を回復させてから再度ハイプレスのギアを上げるのが得策だろう。山口監督の試合中の修正力の向上が、湘南の上位進出には欠かせない。

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