【中嶋一貴&小林可夢偉】悩みは重量と大きなデグラ。ハイパーカーの現状と「打倒LMP2」に挑む心境を語る/WECスパ

2021年4月29日(木)20時54分 AUTOSPORT web

 WEC世界耐久選手権の2021シーズン開幕戦、スパ・フランコルシャン6時間レースは、現地時間の4月29日午後に行なわれるFP1のセッションで幕を開ける。新規定、ル・マン・ハイパーカー(LMH)が導入される最初のシーズンがいよいよスタートする形だ。


 その数時間前、トヨタGAZOO Racingで7号車GR010ハイブリッドをドライブする小林可夢偉と、同8号車から参戦する中嶋一貴が、現地からのリモート会見で記者の質問に答えた。4月26〜27日に開催された公式テスト“プロローグ”ではLMP2陣営の後塵を拝す形となった彼らだが、気になるテストの裏側と現在の心境などについて、率直な思いを聞かせてくれた。


■テストは“軽タン”では走行せず。予選一発はもう少し出る?


 可夢偉は冒頭で、「開幕戦で優勝という結果を残せればベストですが、レースなのでそう甘くない。GR010ハイブリッドは生まれたてのクルマ。まずはしっかりと完走して、自分たちのクルマをしっかりと理解することが大事です」と、落ち着いたトーンで切り出した。


 プロローグで見られたLMP2クラスとの混戦具合については、「正直、僕らは軽タン(燃料搭載量が少ない状態)では走っていない、ずっとフルタンク。なので、もちろん(燃料を減らして)軽くすれば、予選一発は速くなるかもしれない」とレースウイークに向けた希望を語る。


 ただ、実際のところ大きな課題となっているのは、ロングランのペースだという。規則によりLMP1時代よりも重くなった車重が、タイヤに対する攻撃性を高めているというのだ。


「一番の問題は、車重がかなり重くなっていること。もう、タイヤのデグ(ラデーション)が大きすぎて、本来のパフォーマンスを維持できる時間が短すぎる。僕らに比べれば、LMP2は(タイム推移を)見た感じデグも少なさそうな気がしますね」


 GR010ハイブリッドのロングランでのタイムの落ち幅は「2スティント目に入ったら、ベストタイムから5〜6秒はロスしちゃうんじゃないかっていうレベル」と可夢偉。現在、そこへの対策を講じており、プラクティスでの走行もロングランでのタイヤの確認が主なメニューとなりそうだという。


 また、コーナー区間でLMP2に対して遅れをとっている現状に関し、コーナーでのGR010ハイブリッドの挙動について聞かれた可夢偉は「簡単に言うと、乗っている感じはGTですよ。いままでのスポーツカーの走り方ではなく、クルマの動かし方はGTカーに近い。走り方のラインとか、スパ24時間に出たときの(FIA)GT3の走り方に近いです」と説明する。


 さらに可夢偉は「いままで(TS050ハイブリッドまで)は、フォーミュラカーにカバー(カウル)を付けた感じ。GR010ハイブリッドの場合は、GTカーにカバーを付けたような感じ、というのが分かりやすかな」とシンプルに昨年までとの違いを説明した。

WEC公式テスト“プロローグ”でのトヨタGAZOO Racing7号車・小林可夢偉


■トラフィック処理の回数は減る


 可夢偉の駆る7号車がテスト初日にトラブルに見舞われマイレージを稼げなかったのに対し、比較的順調にメニューをこなした8号車の方は、ロングランに対する理解はやや深まっているようだ。


 一貴は「テスト初日はタイヤとラップタイムの落ちが大きすぎてちょっと心配だったんですけど、2日目になるとそこら辺が少しマイルドになったかなと思います」とセットアップの進捗を語る。


 ただしエンジンの駆動を受け止めるリヤだけなく、フロントのデグラデーションも「ある程度、大きい」といい、「ニュータイヤでの走り始めから、ダブルスティントを終えるまでのバランス変化を見極めてうまくセットアップしないと、(スティント)後半はつらいことになりそうな感じ」と、可夢偉と同じくスティント後半に向けた不安は拭いきれない様子だ。


 プロローグでのロングラン時には、あまりLMP2クラスのマシンを抜くシチュエーションはなかったという一貴だが、「速いLMP2と一緒に走ったら、オーバーテイクはなかなか難しそう」と予想する。さらにLMP2だけでなく、今季はLMGTEとのタイムギャップも縮まっている。


「テストでも実際にGTが絡むクラッシュもありましたし、(トラフィック処理は)かなりトリッキーになると思います。ただスピード差が小さい分、トラフィックを処理する回数は減ると思うので、そのあたりは良し悪しですかね」

WEC公式テスト“プロローグ”でのトヨタGAZOO Racing8号車・中嶋一貴


 来る開幕戦のレースに向けては、「LMP2もかなり速いし、(同じクラスの)アルピーヌ含めて油断できない、激しいレースになると思う。見ている人には面白いレースになるんじゃないですかね」と一貴が語れば、可夢偉も「この状態がいいと思うか、悪いと思うかは人それぞれだと思う。ただ、このタイム差がどうこうというのは、僕らが決めることではなくてACOが決める(判断する)こと。僕らはこの状況のなかで、戦うしかないのが現状だと思います」と置かれた現状を比較的クールに捉えているようだ。


 可夢偉はまた、こうも語っている。


「もちろんレースなので勝てればいいですけど、こうやって新しいルールのなかで開発するということは、いろいろと複雑な面もある。それが今後どう変化するかということを含め、“変化の年”ということ。まずは自分たちができることを、やらなければいけないと思ってます」


 レースは混戦になりそうだが、と向けられた可夢偉は、こう言って会見を締めた。


「はい。“打倒LMP2”ということで」

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