【GT500車両技術詳細・ニッサン編】GT-Rの弱点克服へ。Zが背負うタスク

2022年5月10日(火)11時57分 AUTOSPORT web

 GT-RからZへ、NSXはタイプSへ。新規車種の参戦にともない、空力開発の一部が解禁された。エンジン開発においても、「燃費の良いエンジンがパワー競争も制する」先進的環境のもと、日夜の進化が続く。2022年シーズン、トヨタ、ホンダ、ニッサンの勢力図は大きく動くことが予想される。


 ここでは、メーカーの開発担当者への取材から、今季の主役たる2022年型GT500車両の開発要点に迫ってみたい(取材は開幕前に実施)。トヨタ編ホンダ編に続き、最後にニッサン編をお届けする。


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■ロングノーズ・ショートキャビン、Zの優位性


 ニッサン陣営は今シーズン、GT500競技車両のベースを従来のR35型GT-Rから、昨年発表された新型のZ34型ニッサンZへ切り替えた。現在の車両規則では、エンジン、モノコック、サスペンションなど主要コンポーネントは共通部品の使用が義務づけられており、ベース車両が変わってもいわゆる「中身」は作り替えることができない。したがって今シーズン実戦デビューするZのGT500車両も、外観以外の「中身」の基本部分は昨年まで使われてきたGT-Rから引き継いだものとなる。


 こうした状況の中、あえてベース車両の転換に踏み切った理由について、ニッサン陣営の松村基宏総監督はこう語る。


「まず、新しいスポーティーなクルマが発売されるので日産本社側からの要請もあって、モータースポーツを通してプロモーションをきちんとやろうということになった点があります。次にZはロングノーズショートキャビンのスポーツカーですから(競技上における)ポテンシャルがあると考えたからです」


 現行のGT500車両規則では、ベースの異なる車両の性能を均衡させるために定められたスケーリング規定に則って車両のサイズを一定の基準に収める必要があるうえ、床面に関しては全車同一の共通コンポーネントが義務づけられている。したがって空力デザインに独自の工夫を盛り込むことができるのは、ボディ上面および側面のみということになる。


 こうした条件の中、GT-Rに比較してノーズが長く、キャビンが短く、ルーフがなだらかにテールエンドへ向けて下がっていくZの基本デザインには、パフォーマンスを向上させる可能性があるだろう。では、どのような開発が行なわれたのだろうか。当然ながら従来のGT-Rの長所を伸ばし、短所を潰すことが目標になったはずだ。


■入念な検討でGT-R以上の冷却性能に


 エンジンに関しては、2020年の新規定導入後はシリンダーブロックやクランクシャフトなど、いわゆる大物部品に関する改変は凍結されていることもあり、基本的には昨年のGT-Rからそのまま引き継ぎ、規定の範囲での開発を加えたものとなる。現在の規則では2023年までに1回だけ大物部品を作り替えられることになっているが、開発を担当した石川裕造氏(日産モータースポーツ&カスタマイズ 開発担当常務執行役員)は、今シーズンについては大物部品の改変には踏み切らなかったと言う。


「エンジンそのものは変わりません。ちょっとした不具合であっても、それでレースを失ってはいけないわけですから、大物部品は信頼性をしっかりと確認して、その準備ができたときに変えようと考えています。コンセプトを変えないでもまだできることはあるので、例年どおりにノック特性を改善しながら規定の範囲内の改良で燃焼を改善するとともに、吸気系や排気系についても新たな仕様にあわせて改良して一段と性能を上げたエンジンを準備しました」


 ただしベース車両が変わったため、冷却性能の確保には入念な検討が加えられたようだ。


「顔が小さくなったことが冷却性能に影響しますから、開発の重点は外側のエアロのほうにいきますけど、エンジンルームの冷熱性、小さいパッケージングの中で水、空気を冷やして温度を上げないという点に力を入れて開発しました。基本レイアウトは変わりませんが、GT-Rより冷えるようになってわずかな差ですけど良くなっていると思います」

2022年シーズンに向けたニッサン陣営の開発全容は、5月2日発売のauto sport臨時増刊『2022スーパーGT公式ガイドブック』内にて詳しく語られている


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 この他、「GT-Rでの苦悩とZの開発目標」など、2022年シーズンに向けたニッサン陣営の開発全容は、5月2日発売のauto sport臨時増刊『2022スーパーGT公式ガイドブック』内にて詳しく語られている。


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