湘南、新潟の修正を上回れず。このままでは今季も残留争い【J1リーグ2023】

2023年6月5日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE

町野修斗(左)新井直人(右)写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第16節の計8試合が6月3日と4日に行われ、湘南ベルマーレは3日、本拠地レモンガススタジアム平塚でアルビレックス新潟と対戦。最終スコア2-2で引き分けた。


リーグ戦での連敗を5で止めたものの、第16節終了時点で最下位と同じ勝ち点12の16位と、不振に喘いでいる湘南。今季の同リーグ全試合で失点を喫しており、守備の改善は急務だ。ここでは新潟戦を振り返るとともに、湘南の守備の問題点についても言及する。




湘南ベルマーレvsアルビレックス新潟、先発メンバー

湘南vs新潟:試合展開


山下良美主審によるキックオフの笛からわずか51秒後、湘南のDF杉岡大暉のクロスが新潟のDF千葉和彦の腕に当たる。これが自陣ペナルティエリア内にいた千葉のハンドの反則と判定され、湘南にPKが与えられると、このチャンスをFW町野修斗が物にした。


湘南は先制したものの、時間の経過とともに最前線、中盤、最終ラインの3列が間延び。基本布陣[4-2-3-1]の新潟の2ボランチ(高宇洋と秋山裕紀の両MF)と、トップ下のMF伊藤涼太郎を起点とするパスワークに手を焼いた。


前半30分には、伊藤のスルーパスに反応したFW谷口海斗に不揃いな最終ラインの背後を突かれ、湘南は失点。後半17分にも伊藤のコーナーキックから谷口にゴールを決められ、ホームチームが劣勢に陥った。


連敗阻止に向け怒涛の攻撃を見せた湘南は、後半38分にチャンスを迎える。途中出場のMF阿部浩之が敵陣ペナルティエリア内の密集からスルーパスを放つと、これにMF小野瀬康介が反応。小野瀬が新潟の最終ラインの背後を突き、同点ゴールを挙げた。


湘南は6連敗こそ免れたものの、直近のリーグ戦9試合勝ちなし。厳しい状況が続いている。




湘南は[5-2-3]に隊形変化

曖昧だった湘南の守備のコンセプト


この日も[3-1-4-2]の基本布陣で臨んだ湘南は、新潟がGK小島亨介や最終ラインからパスを繋ごうとするやいなや、[5-2-3]に隊形変化。町野、FW若月大和、小野瀬の3人で中央のレーンを埋め続け、ハイプレスからの速攻でゴールを狙う意図こそ窺えたが、ボールの奪いどころやプレッシングを強めるタイミングがはっきりせず。ゆえにショートカウンターの場面をそれほど多く作れなかった。


湘南がこの試合で徹底すべきだったのは、新潟の両サイドバック(新井直人と田上大地の両DF)にプレスをかけること。特に新井に関しては前半、自陣後方のタッチライン際や味方のセンターバックとほぼ同列の位置でパスを受ける場面が散見されたため、湘南はここにプレスをかけ続けるべきだった。


PK獲得に繋がった湘南のキックオフ直後の攻撃は、自陣後方のタッチライン際でパスを受けた新井に、湘南のFWタリクがプレスをかけたことで生まれたもの。タリクのプレスにセンターバックの杉岡とDF畑大雅(左ウイングバック)も連動し、湘南はボール奪取に成功。ここからの速攻で新潟DF千葉のハンドの反則を誘発している。成功事例はあっただけに、湘南が新潟のパスワークを新井と田上の方へ追いやり、ここへのプレスを強めることを徹底していれば、試合の趨勢は序盤で決していたかもしれない。


アルビレックス新潟 DF新井直人 写真:Getty Images

巧みだった新潟の修正


新潟の同点ゴールの場面では、右サイドバックの新井のポジショニングに改善が見られた。


前半29分に新井がハーフウェイライン付近まで上がり、タッチライン際から内側にポジションを移す。この位置で千葉からのパスを受け取ったことで、タッチライン際にいたMF三戸舜介(右サイドハーフ)と、センターサークル付近に立っていた高のどちらにもパスを出せる状態になった。


パスコースを限定しきれなかった湘南のプレッシングは後手に回り、その後の新潟のパスワークを止められず。伊藤からスルーパスが繰り出される際に、田上と谷口が湘南のDF石原広教(右ウイングバック)の両隣を突いたことも功を奏し、新潟がホームチームの守備を崩してみせた。新潟の修正力の高さに湘南が屈した場面と言えるだろう。




湘南ベルマーレ 山口智監督 写真:Getty Images

高評価に値しない湘南の守備


湘南の山口智監督は新潟戦後の会見で、自軍の守備について言及。狙い通りの守備ができていた時間帯があったことを明かしたうえで、反省点も挙げている。


「いいインテンシティの中、試合に入ってくれたと思います。実際に得点も取れましたし、前半に関しては相手の陣地でサッカーをするという目的の中で、十分にやってくれたところがあったんじゃないかと思います。ただ、失点シーンはいつも言ってるところのやられ方、準備不足、思い切りのなさのところでやられてしまったので、残念の一言に尽きます。最後セットプレーのところもそうですけど甘さが出ているので、もう一度失点のところは向き合いたい。最後まで攻める姿勢、勝ちに繋げたいというプレーは見られたと思いますし、この勝ち点1をポジティブなものに変えていきたい、そういうゲームになりました」


「(新潟が)ボールを持てるチームなので、そこへの守備を考えて、どう奪いにいくかというところは準備をしていました。前半はやってくれたのかなと。実際にチャンスもありましたし、立ち上がりPKを取ったシーンなどはそういう形が本当に出たシーンだったと思います。そこはひとつポジティブなところなのかなと思います。理想を言うとあれで前半を終えて、後半はコントロールしながらというのもありましたが、隙であったり逆転されるところ、しかもセットプレーというところの甘さ、ゲームプランには入ってなかったので難しさを感じました。ただ最後、選手の配置もそうですけど攻撃的にいって奪い切れたところは選手の勝ちたい、追いつきたいというところが出たと思いますし、ひとつそこにヒントがあるのかなとも思いました」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部加筆・補正・省略)


山口監督は前半の出来に手応えを口にしたものの、守備面は高評価に値する水準だったとは言い難い。この試合で湘南の選手とコーチングスタッフは相手の修正を凌駕するための策を持ち合わせておらず、前述の通り新潟の同点ゴールの場面で新井の立ち位置の変化に対応できなかった。


時間の経過とともに間延びした守備隊形も修正できず、湘南の最前線と中盤、及び中盤と最終ラインの間でパスを捌いた伊藤、高、秋山(新潟MF陣)を誰が捕捉するのかも曖昧に。守備の緻密さに欠けた湘南が、勝利を逃した試合と言って差し支えないだろう。漫然としたプレッシングを改善できなければ、近年巻き込まれているJ1残留争いは今季も不可避だ。

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